僕は1ヶ月に1度の頻度で歯医者さんに通っています。今の歯医者さんに通い出したのは12~13年前くらいからでしょうか。それ以前は定期的に通院することもなく、虫歯になったとか、かぶせ物が取れたとか、歯が抜けたときなど、歯に異常が発生したときだけ歯医者さんに通っていました。
僕は30年くらい前に引っ越しをしたのですが、歯医者さんは引っ越す前と同じ歯医者さんに通っていました。歯医者さんに限らないのですが、病院は知っているお医者さんのほうが安心感があります。なので、少し遠くはなったのですが、通えない距離ではないので、それまでの歯医者さんにずっと通院していました。
ところが、やはりわざわざ車で15分かけて通院するのを面倒に感じるようになり、近くでいい歯医者さんが見つかったら変えようと思いはじめていました。そんなとき、息子が虫歯になり、駅近くの歯医者さんに診てもらうことになりました。息子に聞いたところ、そのお医者さんが「感じのいい先生だった」ということで、僕もそこに通院することにしました。
大分前のコラムにも書きましたが、その歯医者さんのある場所こそ、僕がラーメン店を営んでいた場所だったのです。もちろん息子もそれを知っていましたが、そうした縁もあって、その歯医者さんを選んだのかもしれません。息子はともかく、僕がその歯医者さんを選んだのは、「自分がかつて営んでいた店舗」という理由が大きいです。
初めてその歯医者さんに行ったときは、懐かしさを感じました。入り口のドアを開けて、待合室、診察室などを見渡しながら、「あそこにはコンロがあったよな」とか「あそこは洗い場だったよな」などと、一人で勝手に感慨に耽っていました。
その歯医者さんの初診のときに問診票を書いたのですが、その質問項目に「悪いところだけ治療してほしい」と「治療終了後のメインテナンス希望」というような項目がありました。この文言は正確ではないかもしれませんが、内容的にはそのようなことが書かれていたと思います。それまでの僕ですと、「悪いところだけ治療してほしい」を選択していたのでしょうが、そのときはたまたま「徹底的に治したい」と思っていたときでしたので、つい後者に「○」をつけてしまいました。
そういう経緯で、定期的に歯を診てもらうことになったのですが、具体的には毎回「歯石を取りに行っていた」ような感じです。結果的には、それが正解だったように思います。なぜなら、今、僕の歯は上が全部総入れ歯で、下も6~7本を除いて入れ歯になっています。ずっと通っている歯医者さんですので、僕の歯の状態もわかっていますし、入れ歯にする際も無理に高価な「自由診療の歯」を勧められることもなく、良心的な歯医者さんで満足しています。
その歯医者さんで、今年の1月から受付の女性が変わりました。それまでの受付の方は20代半ばから30歳くらいの女性で、いつも笑顔で接してくれて、対応もとても感じのよい方でした。僕の勝手な推測では、「結婚を機に退職したのだろう」と思っています。
新しく入った女性は前の方よりも少しだけ年長そうで、対応も「それほど悪い」ということではないのですが、前の女性のような好印象を与えない方でした。僕が通院するのは1ヶ月に1度ですので、それほど会っているわけではないのですが、観察をしていますと、まず笑顔がないことが一番のマイナス要因のように思いました。次は、手の動きです。受付の方と患者の関係で、「手の動き」を見ることがあるのは、「お金」と「診察券」、それぞれの「受け渡しのとき」です。
このタイミングでしか、この女性と接することはないのですが、そのときの「手の動き」が、この女性の印象をマイナスにさせています。繰り返しますが、この女性は決して感じが悪い人ではありません。ごくごく普通に接する受付の方です。
その女性がマイナスイメージを患者に与えるのは、「受け渡し」のときに、「手を引っ込めるのが早い」からです。例えば、診察券を患者に返すとき、診察券を受付台の上に置くのですが、その手の動きが早すぎるのです。もう少し詳しく書きますと、診察券から「手を離すタイミング」が早すぎるのです。この「早い手の動き」は、一つ間違えると、「投げている」ように見えます。お釣りを返すときも同様です。お金を置いた手を早く引っ込めると、「投げている」ように感じるのです。
おそらく、その女性はそのことに気づいていません。全体的には悪い対応ではないので、普通の感覚の女性だと思います。そうした常識的な女性がお金や診察券を「投げる」はずはありません。なので、無意識のうちの「素早い手の引っ込め」の動作だと思います。問題は、「無意識」にあります。ですので、「気づいていない」のです。「気づいていない」のですから、「直す」という発想が起こるはずもありません。
この受付の方がマイナスイメージを発する一番の責任は、院長である先生にあります。院長にはスタッフを監督・管理する責任があります。しかし、先生自身が「気づいていない」どころか、その受付女性の「動作がマイナスイメージを与える」ということを知らない可能性があります。もし、「知らない」なら、直す以前の問題です。医師は治療の勉強はしていますが、接客・対応の勉強や研修は受けていない可能性があります。単に「感じよく接してくれればいい」と思っているのであれば、受付のやり方を指導することなど思いも寄らないはずです。
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今回、このような小言からはじめたのは、先週、僕が「古希」を迎えたからです。偏屈ジジィの真骨頂といったところでしょうか(笑)。いやぁ、こんな僕が70歳を迎えるなんて、驚きです。タイトルに「コキ」とカタカナにしたのは、それこそ偏屈だからです(笑)。でも、「古希」より「コキ」のほうが、見た印象、よくないですか。折れた感じで(笑)。
思い起こせば、僕も「知らない」ことばかりの中で生きてきました。学生時代、7~8人で飲んでいたとき、たまたま読書の話になり、みんなが本のタイトルを挙げて感想を言い合っていました。ですが、僕はその会話にまったく入っていけなかったのです。だって、僕、読書なんてしたことなかったですから。自分の無知さ加減に情けなくなりました。だからと言って、読書をしたいと思ったわけでもないのですが。
会社員生活が「ちょっと違うなぁ」と思って、紆余曲折を経て28歳で「タクシー乗務員」になったときも、知らないことばかりでした。なにしろ僕は、地図というか、道路の名前をまったく知らないままタクシードライバーになったのです。当時は「地図の試験」などもなく、二種免許に合格したら、翌日から一人で街中を走らされるのです。午前中だけ、先輩が隣の席にいましたが、午後になると一人になりました。先輩が降りるときに言った言葉が忘れられません。「道はお客さんに聞けばわかるから。…頑張って」。
ラーメン店をはじめたときも、知らないことばかりでした。僕、ラーメンの材料の名前を知らなかったのです。そんな僕が、わずか15時間程度の研修でオープンさせられました。なにもわからない店主がいるお店に「オープン景気(新規オープン時にお客さんが押し寄せること)」がやってきたのです。対応できるわけがありません。興奮のあまり、数時間お店を閉めてしまいました。知りませんでした。オープン時にあんなに人が来るなんて。
コロッケ店を営んでいた頃、ときたまリヤカーに豆腐などを積んだ青年が買いに来ていました。当時、リヤカーで販売するのが流行っていたんです。それを見ていたので、コロッケ店を廃業しても、「リヤカーでの食料品販売で生きていける」と思っていました。ですが、知りませんでした。リヤカーでの販売(移動販売)には、ざっくりとした説明をしますと、「止まって販売するには道路使用許可が必要」ということを。
清掃の仕事をしていたとき、ビルの廊下の端に鳩の巣ができていました。中を見ますと、卵が入っていました。おそらく親鳥がそこに産んだのでしょう。僕は処分しようと思ったのですが、一応会社に問い合わせますと、「許可なく撤去することはできない」と言われてしまいました。知りませんでした。鳩がそんなに大事にされているなんて。
中年を過ぎてから、年老いた親子関係、兄弟(姉妹)関係がこんなにトラブルになるなんて知りませんでした。血が通っていても、仲良くできないことがあるなんて知りませんでした。また、どう考えても「男尊女卑」の意識が強そうな女性首相が、あんなに支持を集めるなんて知りませんでした。どう考えても、自分のことしか考えていない人物を支持する熱狂的な米国民がたくさんいることを知りませんでした。
人間って、生きている間中、「知らないこと」の連続なんですね。
あ、死んだあともだ。
じゃ、また。