<民主主義と組織票>

pressココロ上




安倍元首相の襲撃事件が起こってから早くも2週間以上が過ぎましたが、ここにきてマスコミが集中的に報じているのは「統一教会」と「政治家」の関係です。30年以上前から「統一教会」を取材している参院議員の有田芳生氏がマスコミの対応について暴露していました。有田氏によりますと、氏が「統一教会」の問題点についてインタビューで答えたあと、数日間マスコミが「統一教会」について報じなくなったそうです。

報じなくなった理由が、政治家からの圧力なのか、報復を恐れたからなのかわかりませんが、現在では各局で霊感商法など旧統一教会のさまざまな問題点を報じるようになってきます。これまでの報道によりますと、襲撃犯の母親は旧統一教会に1億円もの献金をしているそうですが、こうした行為は普通の人の感覚ではだれが考えても異常です。

それにもかかわらず先日のニュースでは、母親が「旧統一教会に申しわけない、と謝罪をしている」と報じていました。これを洗脳といわずなんといいましょう。襲撃犯は襲撃の理由を「旧統一教会」への恨みと供述しているようですが、母親がほとんどの財産を献金し、それによって自己破産にまで追い込まれ、そのことが原因で襲撃犯の人生が狂わされたのです。恨みを持つのも当然です。

統一教会の洗脳で僕が思い出すのは、1990年代に起きたタレントの飯干景子さんの騒動です。この騒動は統一教会に洗脳された飯干さんをお父様である飯干晃一さんが脱会させるために戦い、最後は脱会に成功させた騒動でした。お父様が娘を助けるためになりふり構わず行動したことに感動した記憶があります。

洗脳で思い出すあと一つの事例は「XJAPAN」のToshiさんの事件です。この事件を起こした宗教団体は「統一教会」ではありませんでしたが、Toshiさんは見事に洗脳の罠にはまっていました。「はまらされていた」という表現のほうが正しいと思いますが、「XJAPAN」の成功で築き上げてきた財産・資産をすべて巻き上げられてしまいました。

「金スマ」という中居君がMCを務める番組に、当人が出演して再現ドラマを放映していたのですが、恐怖以外のなにものでもありませんでした。繰り返しになりますが、その時点ですでに「XJAPAN」は大成功を収めており、Toshiさんもかなりの資産があったはずです。そのような社会的に高い立場にいる人が宗教にのめり込まされていく様子が具体的に描かれていた再現ドラマでした。

基本的に、僕は宗教に否定的なのですが、その一番の理由は「困ったり悩んだりしている人に、その弱っている心の中につけ入ろうとする」からです。前に書いたことがあると思いますが、僕自身もそうした経験があります。僕の人生は失敗が多いので、危ない宗教に狙われる機会がどうしても多くなるのですが、10年前にコロッケ店を廃業するときに魔の手が近づいてきました。

飲食店は不特定多数のお客様と接することになりますので、長年営んでいますと、それとなく「危険な臭い」がするお客様を感じ取ることができるようになります。そのお客様は開業当初から買いにきてくれていた方ですが、振る舞いに違和感がありました。あまりに笑顔で感じがよすぎるのです。定期的に買いに来てくれていたのですが、廃業のお知らせを貼りだしたときに、化けの皮をはがしてきました。

「事業に失敗しても、立ち直るための集まりがあるので行きませんか?」

当初から警戒していましたのですぐに突っぱねました。「突っぱねる」ときは中途半端ではなく、毅然と対するのが基本です。僕の場合は、妻がそういうことをする人を毛嫌いしていますので、僕よりも強く激しく断っていました。

実は、ラーメン店のときも似たようなお客様が来ていました。ラーメン店はテイクアウト方式のコロッケ店と違い、店内で食べることになります。ですので、接する時間がどうしても長くなるのですが、対応を少しでも間違えますと心の中に入りこもうとしてきます。油断大敵なのです。

そのお客様は60才くらいのご主人と50才くらいの奥様の夫婦づれだったのですが、ある日、「ずっと食べに来ている」ことをアピールするような言葉遣いをしましたので、「ずっと食べにきていること」を知らなかったふりを装いました。すると、少しばかりこわばった表情になり、それ以来来店しなくなりました。

宗教にしろお客様にしろ、こちらの心の中に入りこもうとする一番の目的はこちらを「コントロールすること」です。最初は甘い言葉で近づいてきて、最終的には「自分のいうとおりに動かそう」とするのですが、襲撃犯の母親の献金や「XJAPAN」のToshiさんの財産巻き上げなどがそれを証明しています。

一般の人とかかわりを持ち、洗脳するのは献金や無料奉仕をさせるのが目的ですが、政治家とかかわるのは違う目的があります。社会的認知を高めるためです。政治家のお墨付きがありますと、やはり勧誘がしやすくなります。先日読んだ記事で興味深かったのは「旧統一教会」が名称を変更するときの出来事です。

これは文部科学省の事務次官を務めていた前川喜平さんがネット記事のインタビューで答えていたのですが、前川さんが宗教関連を担当するの業務に就いていたときに、「旧統一教会」が名称の変更を申請してきたそうです。当時、すでに「旧統一教会」は霊感商法などでいろいろなトラブルを起こしていましたので、そうした印象を払拭するために名称変更を考えたようでした。

それをわかっていた前川さんは「名称変更」を認めていなかったのですが、下村博文氏が文部科学省の大臣に就任したときに「名称変更」が認められることになったそうです。下村氏は選挙の際に「旧統一教会」からの支持を受けていたそうです。

もっと生々しい話が自民党の参議院議員・青山繁晴氏から発せられました。選挙の際に票が足りない立候補者に「旧統一教会」の信者の票を割り振るという証言です。安倍元首相の側近だった人物は「旧統一教会」の集会で挨拶をし、堂々と票を当てにする発言をしていました。その結果かどうかはわかりませんが、先の参院選では当選しています。

また、「旧統一教会」から支持を受けた議員が国会議員だけではなく知事や市長、市議会議員などにもいる、との報道がありました。これはかなり由々しき情報です。地方選挙は国政選挙と違い、ある程度のまとまった票が獲得できるなら容易に当選できるようになっています。そうしたことから考えますと、地方選挙ではある団体や組織から支持を取り付けるだけで当選できることになります。

このことを裏返して見ますと、ある団体・組織に従順な議員が誕生することを意味します。なにしろ「ある団体・組織」の票に支えられて当選できたのですから。しかし、これで民主主義といえるのでしょうか。

組織票は宗教団体に限りません。労働組合もありますし、企業もあります。そうした組織票で当選した議員たちは、組織の利権だけを守るために議員活動をすることになります。果たして、これで民主主義といえるのでしょうか。

議員はある特定の団体・組織のために活動するのではなく、国全体が正しい方向へ向かうための活動をすべき存在であるはず。間違ってもパパ活をするために議員になっているのではありません。

政界が特定の団体・組織を優遇するための場にならないためには、浮動票の割合を高めることが絶対に必要です。これから3年間は主だった選挙がありませんが、浮動票の方々は常日頃から政治に関心を持ち続けることが大切です。

じゃ、また。




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