<ネット3人衆若者編>

pressココロ上




僕は読書が好きですので、毎日1~2時間はなにかしらの書き物を読んでいます。昔は「読書」といいますと、「本を読む」ことでしたが、今の時代は「本」とは限りません。デジタルの今の時代の「読書」は「本」というよりもネット上にある書き物を読むことのほうが主流になっています。

僕は新聞の購読をやめてしまいましたのでニュースはネットでチェックをし、それから深堀をした解説記事などを読み、そのほかに世の中の動向などを紹介しているサイトをチェックしています。

それらを読んでいていつも思うことが、世の中には知らないことがまだまだたくさんあるなぁ、ということです。毎日そのことを実感せずにはいられないのですが、自分では想像もしなかった考え方や発想に出会いますと、「勉強になる」を越えて感動することさえあります。

そんな僕には現在注目しているライターさんが3人います。素人の僕が言うのもなんですが、皆さん文章を書くのがうまい。僕はnoteというサイトを毎日チェックしているのですが、3人ともそのサイトで知った方です。「note」は少し前に「記事にやらせがある」などとして物議を醸したサイトで、姉妹サイトに「cakes」もあり、そちらも「やらせ」で炎上したことがあります。

そうした騒動の時にこれらのサイトを離れたライターさんもいましたが、編集長を交代させるなどして最近は落ち着いてきています。僕がこの2つのサイトを見ていて感じるのは「えこひいきが激しい」ということです。おそらく編集者の方々の好みなのでしょうが、「おすすめ」が偏っている感じを受けます。

これらのサイトが炎上した時期と、著名な若手編集者がセクハラ・パワハラで炎上したのがちょうど同時期でしたので編集者という職業について注目されることになりました。以前書いたことがありますが、僕はコロッケ店を営んでいたときに少年ジャンプで賞を獲った青年と知り合ったことがあります。

その青年は新人漫画賞で佳作を受賞したのを期に上京してきたらしいのですが、当時はマクドナルドでバイトをしていました。漫画家の下積み時代としてよく聞く話ですが、その青年も売れている漫画家さんのアシスタントをしたこともあったそうです。青年との会話の中で編集者という仕事についていろいろと聞いていました。

漫画に限りませんが、編集者という業種は出版社に属しています。そして、漫画家さんや小説家を目指している方々は、その編集者さんに頭が上がりません。なぜ「頭が上がらないか」と言いますと、掲載や出版の権限を持っているからです。つまり、売れる前の方々からしますと権力者というわけです。

先ほどの若手編集者がセクハラをできたのも権力者だったからにほかなりません。そうでなければ、被害者はすぐに非難できます。それが容易にできない構造になっているのが出版業界です。そうした構造の穴を開けるべく誕生したのが「note」であり「cakes」だったはずですが、まだ完全に穴を開けてはいないように見えます。

そうした状況ではありますが、「note」は誰でもが投稿できるという点においては旧態依然とした出版業界に風穴を開けることができているように思います。「note」の一番も長所は、どんな素人であろうが、たとえ下手な文章であろうが、誰でもが自由に投稿できることです。しかし、これはどの業界にも当てはまるのですが、敷居が低ければ低いほど競争が激しくなるのが世の常です。誰でもが自由に投稿できるがゆえに、その大量の記事の中に埋もれてしまい、結局は「投稿していない」のと同じことになります。

そうした中、読者が「読み応えのある投稿」に出会える目安となるのが、支持の数です。「note」の場合は「好き」というボタンがあるのですが、その数が多ければ多いほど「魅力的な記事」ということになります。僕が3人を知ることになったきっかけもこの「好き」の数でした。

それでは3人のお名前を記しますと、岸田奈美さん、島田彩さん、塩谷舞さんという方々です。ちなみに、紹介したこの順番は人気の高さではなく僕が知った順です。岸田さんの記事を読んでみようと思ったきっかけは、ブラジャーを購入したときのエピソードの「好き」の数が膨大だったからです。読んでみてびっくり、とても面白く爆笑ものの文章になっていました。関西の方ですが、そのテンポのよさと言葉の選び方が秀逸でした。

これもどの業界にも「あるある」ですが、一度人気が出た後にそれが続かない、いわゆる「一発屋」で終わる危険性は常につきまとっています。とても面白く楽しい記事を書いたとしても、それが続かなければ結局は多数の中に埋もれ、忘れられてしまいます。しかし、岸田さんは話のテーマを次々に見つけていきました。

先に書きましたように、ブラジャーのエピソードである程度人気度が確保できたあと、次にテーマにしたのは仕事・就職関連のお話でした。社会人ともなれば誰でも仕事の悩みの一つや二つは抱えているものです。そうしたことに共感できる人たちから支持を得ていたように思います。そして、現在は「家族」をテーマにしています。

最初は父親との葛藤、ダウン症の弟さんとの関係、そしてお母様の病気と家族をテーマにした記事で人気を確たるものにしたように思います。そして、ついに本の出版までこぎつけています。ネットの世界での成功者としては「ちきりん」さんが有名ですが、「ちきりん」さんはコンサルタントという前職の延長のような活動でした。そういう意味でいいますと、岸田さんは正真正銘のネットからの成功者と呼べるのではないでしょうか。

その岸田さんの記事から知ったのが島田彩さんです。島田さんはコラムというよりもエッセイの名手といった感じです。島田さんが暮らしの中の出来事を綴りますと、なぜか心が穏やかになります。不思議な魅力のある文章を書く方で、岸田さんの「動」に対して嶋田さんの「静」でしょうか。

しかし、島田さんは昨年記事が「やらせ」との境界線の記事と指摘され、炎上してしまいました。その後、あまり投稿がなされないのが気がかりですが、もう少し時間が経てば完全復帰するのではないか、と期待しています。あれだけの筆力を埋もれさせておくのはあまりにもったいないです。

この二人に対して最後の塩谷舞さんは純粋に「note」のおすすめから入っていきました。この方はビジネス関連の記事が多いのですが、まだ若いにもかかわらずネット関連のいろいろなことに精通しています。実際、コンサルタントのような仕事をしているようですが、実は仕事の内容をあまり知りません。

ですが、対象に対する的確な指摘が見事ですし、暮らしぶりについても魅力的な言葉を使いこなし素敵なエッセイを書いています。実は、今回のコラムにこのお三方を決めたのもたまたま昨日塩谷さんのエッセイを長時間読んだからです。すべて読み応えがあったのですが、一番「凄い!」と思うのが、記事がとにかく長いことです。その内容がただただ冗長というわけではなく、中身が濃く味わいがある文章が続けられることが素晴らしいのです。これを才能と言わずなんと言いましょう。尊敬です。

今週は、ネット界での僕が好きなライターの方を書きましたが、このようなライターが世の中に出てこられたのは、一にも二にもインターネットというITの発達があったからこそです。昔は、自分が書いた文章をほかの人に伝えるには、出版というフィルターを通り抜ける必要がありました。そして、それは決して簡単なことではありませんでした。しかし、今は違います。自分が思ったこと、書いたことを自由に世の中に公開することができます。

ギリギリで間に合いましたが、いい世の中になったものです。

じゃ、また。




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