<成功者>

pressココロ上




たまに書いていますように、僕は「note」という投稿サイトに投稿したり、記事を読んだりしています。「note」は誰でも無料で利用できますので、僕のような素人・一般人でも自分の文章を世の中に公開できるのが長所です。昔でしたら、メディアに選ばれる必要がありました。しかし、そうした選抜過程を踏むことなく、誰でも自由に公開できるのは素人にとってはうれしいことです。

こうしたサイトは出版業界にも影響を与えているようで、「note」で好評を博した記事が編集者の目に留まり、出版される例も多くあります。反対に言うなら、この出版不況の中で、出版社はすでに読者から篩(ふるい)にかけられた記事を見つけやすくなっていることになります。しかし、僕からしますと、そうした出版の手法は編集者のさぼり、もしくは能力のなさの裏返しのように見えてしまいます。

その「note」で先日、とても面白い記事を読みました。ある著名な経営者の自伝風の記事なのですが、学生時代から大成功するまでの過程、そして大成功してからの挫折など、そのときどきの心情を綴っていて、とても読み応えのある内容でした。その経営者とは、音楽会社・エイベックス(avex)の創業者である松浦勝人さんです。僕が読んだのは6回までですが、まだ続きがあるようです。リンクを貼っておきます。
https://note.com/maxmatsuura

詳しい内容については松浦さんの記事で読んでいただくとして、大成功に至るまでの過程が面白いのは当然ですが、僕が最も面白かったのは、第6回で「この記事は生成AIで書いた」と告白していることです。今では「生成AIで書いた」ことがさらに注目を集め、賛否両論の意見が飛び交っています。

普通の人の感覚としては、自分で書いたのではなく「生成AIが書いた」と聞かされると、白ける気持ちになります。ですので、否定する人もいるのでしょうが、僕はこの記事は「生成AIが書いた」とは言えないような気がしています。松浦さんの告白によりますと、これらの記事(自伝)を書く際、自分がこれまで受けてきたインタビューや対談、または執筆した記事など、ありとあらゆる膨大な情報を事前に生成AIに読み込ませたそうです。それをもとに「生成AI」に記事を書くように指示したのですから、これはれっきとした「松浦さんの記事」です。

もちろん、松浦さんは「生成AIが書いた記事」を自ら最終チェックまでしています。こうしてできた記事です。「松浦さんの記事」でなくて、いったい誰の記事なのでしょう。そもそもこの記事の内容は、松浦さんの人生があったからこそ書けた記事です。「生成AI」が想像や空想で書いた記事ではありません。

ゴーストライターという職業があります。忙しい芸能人・著名人などが文章を書く時間がない、もしくは文章を書くことを得意としていないために、芸能人・著名人に代わって文章を書くことを生業としている人です。今でこそゴーストライターの存在は知られるようになっていますが、昔はゴーストライターの存在は隠されて、「まるで芸能人自身が書いた」ようにして世に出ていました。今は堂々と「聞き書き」として出版している、と公表されることもあります。

「聞き書き」というシステムについて僕が最初に知ったのは、解剖学者・養老孟司さんの「バカの壁」という本です。この本がベストセラーになったのは2003年ですが、僕はずっと「本人が書いたもの」と思い込んでいました。ですが、何かのきっかけで「聞き書き」だということを知り、東大の教授たる人が自ら執筆しないで本を出していることに驚いた記憶があります。しかし、僕が知らなかっただけで、出版の世界ではそうしたことはごく普通にあるようでした。本を出すペースが早い人は「聞き書き」の可能性が高いかもしれません。

松浦さんの「生成AIに書かせた」はそれと同じです。ある意味、「聞き書き」よりも「自分が書いた」ことに近いように思います。なにしろ、書いてある内容から「書き方」まで、すべて自分でチェックし、判断しているのです。繰り返しますが、その記事は松浦さんという人間の人生があったからこそ書けた記事なのです。それを「松浦さんが書いた記事ではない」と誰が言えるでしょう。

記事の内容について少しだけ触れますと、成功したり失敗したりした経験から学んだ教訓を短い言葉で言い表しているのですが、これらの言葉が本当に心に刺さります。僕のサイトは「脱サラ体験」がきっかけで始めていますので、松浦さんの記事について感想を書きたいと思います。

松浦さんの経歴を、松浦さんに倣ってChatGPTに調べてもらったところ、

*** 貸しレコード店のアルバイト → 自分の貸しレコード店を経営 → 輸入盤で繁盛 → 他店から仕入れを頼まれる → 輸入レコード卸売業 → エイベックス ***

となっていました。成功の階段を一歩ずつ上がっていく様子がわかりますが、個人で始めた事業が少しずつ大きくなっていくときに、最初にぶち当たる壁は仲間内の「人間関係」です。学生時代からの友人だったなら、さらに難しくなります。どうしても上下関係ができることで関係性が変わってきますし、能力の違いを痛切に感じることになります。

ビジネスで成功している人の本を読みますと、友人たちと一緒に始めた事業が大きくなるに従い、次第に一人になっていく例を多く見ることができます。松浦さんの記事で印象に残ったのは、エイベックスを創業したあとの展開です。創業当初は、松浦さんは経営者というよりも職人という立場だったように思います。もちろん、職人と言ってもガテン系ではありません。音楽プロデューサーという職人です。その感性がエイベックスを成功させたのは間違いありません。

しかし、企業というのは腕のいいプロデューサーがいるだけで成功できるわけではありません。企業のトップには、財務とか人事とかマーケティングなどの経営の知識も必要です。実際、調べますと、松浦さんが成功の階段を上る過程では、経営に詳しい人が必ず横にいます。「note」の記事にも「上司」という言葉がたびたび出てきますが、松浦さんは常に企業のトップだったわけではなさそうです。

エイベックスの初代社長は鈴木一成さんという方で、松浦さんは取締役でした。そのあと、依田巽さんという方が社長に就き、松浦さんが社長に就任するのは依田さんの9年後です。報道によりますと、このとき社内で対立があったようです。僕もそのときのことはうろ覚えですが、依田社長と松浦さんの対立があり、浜崎あゆみさんなど所属アーティストが松浦さん側につき、依田社長が退任に追い込まれた、という流れだったように思います。

二人には対立があったのですが、松浦さんはいろいろなことを「教えてもらった」とも書いています。経営者になるのと、取締役であろうとも一プロデューサーでいるのとでは、まったく違います。自動車メーカーのホンダは、現在は業績があまり芳しくありませんが、戦後に本田宗一郎さんという稀代の起業家が創業し、成功を収めた企業です。ですが、ホンダがあれだけ成功できたのは本田さんだけの力ではなく、経営・財務面で支えた藤澤武夫さんという方の功績が大きかったのです。

また、ソニーも同様です。創業者の一人で社長を務めた井深大さんを、経営面で支えた盛田昭夫さんの存在があったからこその成功でした。井深さんが製品のアイデアを出し、盛田さんがその製品をどうやって(世界に)販売するかを考えていました。僕の正直な気持ちを言いますと、ホンダもソニーも、本当の意味での社長(経営者)は藤澤武夫さんであり、盛田昭夫さんだったように思います。

そういう視点で松浦さんの記事を読んでいますと、松浦さんは創業者ではあるのですが、企業の幹部として一歩ずつ階段を上っていっています。卸売業に進出するときも、レコード会社に進出するときも、藤澤さんや盛田さんのような経営面を見てくれていた人たちがいたことが、松浦さんの一番の成功の要因のように思います。

スケールは桁違いに小さいですが、40年前、僕も脱サラしたときは、若気の至りで「いつか店舗数を増やして……」などと夢見たこともありました。しかし、ほんの数年で自分の器の小ささや能力のなさを痛感することとなり、現在に至っています。

最後になりますが、これ、僕が書いています。

じゃ、また。




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