<総裁選>

pressココロ上




先週一番驚いたことは、なんと言っても「菅総理の総裁選不出馬」報道です。ヤフトピで見た瞬間、思わず「えっ、ホントかよ…」と声を発したくらいです。なにしろ前日に「出馬表明」をしたばかりでしたから、驚かない方がおかしいというものです。

しかし、よくよく考えてみますと、支持率が30%を切っていたのですから当然といえば当然といえなくもありません。かつての自民党でしたら間違いなく「菅おろし」が起きていたはずです。「かつて」とは安倍二次政権における「一強体制」になる以前のことですが、派閥が群雄割拠している党内状況は手間暇はかかりますが、あまりに偏向した党運営に対しては、修正される力が自然に働くシステムになっていました。これはある意味、民主主義を行ううえにおいては意義のある状況ともいえます。

かつての自民党には主流派と反主流派が存在し、それらのバランスに則って政治が行われていました。仮に主流派の偏り過ぎた政策を行ったり、国民からの反発の声が強かったりすると、必ず反主流派が巻き返しをはかっていました。いわゆる「振り子の揺り戻し」ですが、そうやって修正を行うことで大きな過ちをせずに済んていたように思います。

思い出すのは庶民派宰相とうたわれていた田中角栄氏が政権をとっていた時代です。田中政権は「金権政治」と揶揄され、お金にものをいわせて田中軍団をつくり、権力を掌握したと言われていました。ですが、ロッキード事件で失脚してしまいます。そうしたことが可能だったのも党内に反主流派が存在していたからです。もし、当時の自民党が安倍氏が首相を務めていたときのような「一強体制」であったなら、田中氏が逮捕されることもなかったかもしれません。

僕は自民党支持でも反自民党支持でも、野党支持者でもありませんが、嘘がまかり通る政治が行われることに対しては強い憤りを感じています。今回新たな総裁が選ばれますが、だれがなろうとも公明正大な政治を行う人が選ばれることを願っています。間違っても、政治家の嘘を隠すために官僚が公文書を書き換えるような事態が起きないようにしてほしいと思います。

「官僚が忖度した」などといわれ、官僚にすべての責任があるかのような声がありますが、真に悪いのは「悪事を働く政治家」です。官僚が政治家の思いを忖度するのは、行政を担う立場としてある意味仕方のないことです。政策を決めるのは政治家でそれを執行するのが官僚なのですから、仮に政治家の考えと反対のことを行ったのなら、そのほうが問題です。政治家は選挙によって選ばれているのですが、官僚はあくまで公務員です。官僚が自らの考えや信念で行政を動かすことがあってはならないのはいうまでもありません。

菅総理は結局わずか1年という短命で終わることになりますが、政権発足当初は長期政権を考えていました。それを不可能にしたのは菅総理を取り巻く環境になにかしらの変化があったからであろうことは容易に想像がつきます。なにしろ前日に「立候補を表明した」ばかりです。

そこで専門家ではない僕がいろいろな情報に接して想像した背景を書きたいと思います。

まず菅政権の成り立ちから思い起こしてみます。菅氏は安倍政権の官房長官でしたが、これは安倍氏の信頼が厚かったからです。以前、NHKの番組で「安倍氏を首相にすることに尽力した理由」などについて菅氏が滔々と語っていたのを見たことがあります。そのインタビューでは、並々ならぬ「安倍心棒者」ぶりを発揮していました。

そうしたことがあっての官房長官の抜擢だったと思いますが、菅氏は自分の派閥を持っていないどころかどこの派閥にも所属していません。昨年の総裁選挙では岸田氏や石破氏と争ったわけですが、岸田氏も石破氏も少数とはいえ派閥の領袖という立場でした。それに対して菅氏が無派閥という不安定な立場でありながら当選したのは、その他の派閥が菅氏を支持したからです。

当時の報道によりますと、二階幹事長が真っ先に支持したことで3大派閥(細田派、麻生派、竹下派)が反主流派になることを恐れ追随した、と報じられていました。また、当時強い影響力を持っていた二階幹事長への対抗意識も働いていたようです。つまり菅氏は派閥の対抗意識を利用してうまく立ち回ったということになります。

しかし、今回は思うような展開にはならなかったようです。前日まで立候補をする気持ちでいた菅氏が不出馬に追い込まれたのは、端的にいって支持してくれる派閥がないことが明らかになったからです。これが一夜にして変心した理由で間違いないところですが、特に安倍派(細田派)、麻生派が大きく変わったように報じられています。

一説によりますと、麻生氏が菅氏に対して「二階幹事長の降板」を支持の条件としたそうですが、前回菅氏を真っ先に支持した二階氏をないがしろにできるはずがありません。とはいえ、二階幹事長は「降板を受け入れた」という報道もあり、ここらあたりは情報が錯そうしています。どちらにしても安倍派(細田派)、麻生派が菅氏支持から変わったことが大きな要因であることは間違いないようです。

そして、この両派が変心したことに大きく関係しているのが、当初から立候補を表明していた岸田文雄前政調会長の会見ではないか、と思っています。岸田氏は会見で「党役員の任期を「『1期1年、連続3期まで』にすべきだ」と提起しました。二階幹事長が5年目に入っていますので、岸田氏は「特定の個人を意識したものがはない」と説明していましたが、二階幹事長への宣戦布告と指摘する評論家もいました。

その真偽はともかく、この岸田氏の発言と菅総理の不出馬が無関係とは思えません。安倍派+麻生派が岸田氏を支持するとは表明していませんが、両派が二階派を快く思っていないのは想像に難くありません。このような状況から察しますと、今回の総裁選挙は、安倍麻生連合と二階派の争いとみることもできます。

そして、今のところの立候補の顔ぶれをみてみますと、派閥の領袖が一人もいません。つまり、両派ともに考えていることは「総理をコントロールするキングメーカー」を狙っているように見えます。本来、派閥選挙は最も人数が多い派閥が主流派になるものですが、各派閥の人数が中途半端ですので、最大派閥であろうとも2位3位の派閥が連合してしまうと一気に反主流派に転落することになります。

最近の動きをみていますと、安倍麻生連合がともに動くことが多いのですが、この両派閥が主流派を形成しようと画策しているように見えます。そうなりますと、今回の総裁選挙では安倍麻生連合が支持した候補者が当選することになるのですが、これは安倍麻生連合が「キングメーカー」になることを意味します。

つまり、誰が総裁になろうとも安倍麻生連合の思うとおりの党運営、または政権運営になることが予想されます。実は、この両者はここ数年で様々な問題を引き起こしている当事者です。安倍氏は「森友学園や家計学園への不公正な介入」や「桜を見る会」などの当事者ですし、麻生氏も財務省での「公文書書き換え」の当事者です。

菅総理が立候補断念を表明したあと、前東京都知事で国際政治学者の舛添要一氏は菅総理を「悲劇の『雇われマダム』だ」と評していましたが、今回の総裁選挙でも同じことが起こる可能性があります。安倍氏が2回目の首相に就任してから、国会においてまとなやり取りが行われなくなっており、質問に直接答えないことがまかり通っています。菅総理も質問に真正面から答えないことが当然であるかのような答弁となっています。

小学生のホールルームでも通用しないような言葉のやり取りが平然と行われています。また、記者会見もあまりにも露骨な記者選別が行われていました。こうした状況は、どうみても異常です。自民党は「一強」状態にならずに、次の総裁は是非とも国民に対して開かれたわかりやすい言葉を話す方になってほしいと思っています。

じゃ、また。




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