TBSラジオ

pressココロ上




理由は自分でも定かではないのですが、気づいたときには「TBSラジオ」しか聴かない慣習といいますか体質になっていました。当時、若者の間では「セイヤング」とか「オールナイトニッポン」といった深夜放送が若者に大人気だったのですが、僕はそこまで深夜放送にはまってはいたわけではありません。しかし、昼間の大沢悠里さんの番組や毒蝮三太夫さんの「ババぁ」の悪口はよく聞いていたように思います。

学生の間は昼間のラジオを聴くことができますが、社会人になりますとさすがにそうはいきません。自然にラジオから離れることになりました。その後僕がラジオに触れる機会が増えるのはコロッケ店をはじめてからです。それ以前にラーメン店時代も環境的には聴くことが可能でしたが、店内には有線放送を流していましたのでラジオとは無縁でした。

コロッケ店の場合も営業中に聴くことは憚れましたので休憩時間に聴いていました。今から15年くらい前のことです。お昼休憩のときに聴いていたのですが、当時は「小島慶子のキラキラ」という番組をやっていました。この頃の小島さんは生活者の感覚に寄り添った楽しい番組として話していたように思います。

僕は浜田省吾さんのファンなのですが、以前は数曲くらいしか知りませんでした。そんな僕が浜田さんの素晴らしい歌の数々に出会うきっかけを作ってくれたのはこの番組でした。この番組は曜日ごとにパートナーが変わるのですが、月曜日は“ビビる大木”さんでした。番組には“ビビる”さんが好きな歌を紹介するコーナーがあり、ある日紹介したのが浜田省吾さんの「MONEY」という歌でした。

僕がそれまで浜田さんの歌で知っていたのは「もうひとつの土曜日」とそのほか数曲だけだったのですが、「MONEY」をきっかけにさらにいろいろな歌に出会うことになります。そんな僕が真っ先にはまったのが「丘の上の愛」という歌です。そこから出発して「あれから二人」「ロマンス・ブルー」「君が歩いた道」…、どうしよう…止まりそうもないので無理やりここで止めておきます。

先ほども書きましたように、この番組は毎日パートナーが変わるのですが、聴いている最初のうちは、パートナーとのやり取りも楽しく思っていました。ところが、小島さんは少しずつ自分と社会の乖離について話すようになっていった感があります。僕には、小島さんは“こだわり”が強くなっていったように思っていました。そうした状態が続きますと、自ずと制作側と小島さんの間に志向の違いが生じることになります。その結果、とうとう降板することとなりました。記憶に残っているのは、最後の日のパートナーであるピエール滝さんとのやり取りです。ちなみに、まだ麻薬で逮捕される前のピエール滝さんです。

端的に言ってしまいますと、小島さんはもっと硬派な番組にしたかったように推測しますが、自らの思いの丈を述べたあとピエールさんに「どう思います?」と話を振りました。するとピエールさんはしばし間をおいて、小島さんに反論するでもなく、かと言って制作側を批判するでもなく、ちょうといい塩梅に答えていたように記憶しています。ですが、僕にはピエールさんが「間をおいた」ことが、本音の部分では「小島さんに同調していない」ことの意志の表れと感じられました。

その後にはじまったのが赤江珠緒さんがメインパーソナリティーを務める「たまむすび」という番組でした。ご記憶の方も多いでしょうが、一昨年の博多大吉さんとの「芝生事件」は世間を騒がせました。博多大吉さんは水曜日に出演しているのですが、実は僕が博多大吉さんの魅力を知ったのはこの番組です。僕はお笑いにそれほど詳しくありませんので、博多大吉華丸さんの名前は知っていましたが、吉本に所属の「中堅どころの漫才師」程度の認識でした。それが、番組を聴いているうちに、その返しの素晴らしさと人柄の優しさにどんどん引き込まれていきました。

先ほど少し触れましたが、木曜日に赤江さんの相手を務めていたピエール滝さんはその後麻薬で逮捕されてしまいました。赤江さんの談によりますと、テレビ界で活躍していた赤江さんがラジオのパーソナリティーを務めるのはやはり勝手が違うようで戸惑うことも多かったそうです。そのときにいろいろと教えてくれたのが大吉さんであり、ピエールさんだったそうです。そのピエールさんが逮捕されたのですから、赤江さんのショックはかなり大きかったようです。実は、芝生事件はこの逮捕劇とも関係しているようです。

それはともかく、「たまむすび」はとても楽しい番組なのですが、赤江さんが日ごろからアピールしているのは「適当」「気楽」です。「小難しいこと」はさておいて、聴いている人が楽しくなるような番組作りを心掛けているようです。こうしたアピールを聴くたびに、僕は前のパーソナリティーさんを思い出しています。

こうした志向が制作側の意志であるのは間違いないと思いますが、赤江さん自身の人生観もそれなりに関係しているように想像します。赤江さんは番組内でよく「自分はポンコツだから」と話していますが、「そんな自分が大上段に構えて、大それたことを言うのはちょっと」という思いがあるように思います。社会で普通に暮らしている人の気持ちに寄り添うことをモットーとしているように想像します。

「たまむすび」はそうした番組を目指していると勝手に思っていますが、そうしたときに僕が感動するのが人選の妙です。制作陣は小島慶子さんの後任として、赤江さんを抜擢したのが一番の成功要因ですが、それまでラジオ出演の経験がない赤江さんに、白羽の矢を立てたその眼力には尊敬の念を抱きます。プロデューサーさんの「人を見抜く眼力」は称賛されてしかるべきです。

僕の勝手な思い込みですが、TBSラジオの土台には永六輔さんの思いが埋め込まれているように感じます。永さんのほかにも大沢悠里さん、毒蝮三太夫さん、森本毅郎など長く続いている番組がたくさんあります。終わってしまいましたが、荒川強啓さんの番組も長期間続いていました。長期間続くということは、人選が正しかったことの証明になりますが、そのTBSラジオで最近ちょっと気になる記事がありました。

大沢悠里さんが40年以上続けた番組の後任は「ラジオの帝王」の異名を持つ伊集院光さんが務めていました。その伊集院さんが3月をもって降板することが発表されました。たまたま伊集院さんのラジオを聴いているときに、降板の理由の要約を話していましたが、「番組内で話すテーマについて、上層部からなにげに指示があったから」だそうです。

この発言は聞き捨てならない内容です。大沢さんや森本さんたちに上層部から番組内での発言について意見されることなどあろうはずがありません。もしそのようなことをしたならば、激しい反発が起きることは容易に想像できます。そもそも上層部よりも大沢さんや森本さんたちのほうが、役職には関係なく、世の中に与える影響力は大きなものがあります。繰り返しますが、大沢さんや森本さんに番組内でのテーマについて意見をするようなことは絶対にありえません。しかし、伊集院さんに対して行われたようです。

思い返せば、昨年の夏頃に伊集院さんとアシスタントの女性との間の軋轢が報じられたことがありました。そして、今回の伊集院さんの降板報道から察しますと、問題の根源はTBSラジオの午前部の上層部にありそうです。ピエールさんが降板したあとの後任は土屋礼央さんでしたが、僕はこの人選も素晴らしいと思っています。それだけに、今回の伊集院さんの報道は驚きでした。

こうした一連の出来事から想像しますと、天下のTBSラジオといえどもいつもいつも完璧な人事を行えるとは限りません。ほころびがあってもしようがない部分もあります。あくまで僕個人の勝手な気持ちですが、ここ最近ちょっと違和感を持った出来事を書きますと、「たまむすび」のプロデューサーが営業職に転出したこと、作家の岩下尚史さんの降板があります。

しかしなんといっても、最近一番の違和感は伊集院さんの降板です。最近のTBSラジオからはちょっと異変が感じられて危惧している今日この頃です。

以上、TBSラジオに対する僕の勝手な思い込み話でした。でも、そういえば、ビジネス書に「組織は、いつかは腐る」って書いてあったな…。

じゃ、また。




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