<手懐け(てなずけ)>

pressココロ上




先週のニュースで、フランチャイズに加盟しているパン屋さんの苦境が報じられていました。売上げ減少で経営的に苦しくなっている加盟店が本部に「ロイヤリティを下げてほしい」と要望を申し入れた、という内容でした。今年、僕は本コラムでフランチャイズシステム(以下FC)について幾度か書いていますが、このニュースを読んで「30年前と全く変わっていないなぁ」という感想を持ちました。

FCの問題点について30年以上警笛を鳴らしてきた僕としましては、正直なところ「今さら」という気持ちがないでもありません。FC加盟店にとっては「加盟金」と「ロイヤリティ」が大きな問題点ですが、最近はどちらかを「無料」にしているケースも増えてきています。

今年の7月にも本コラムにて「『FC』ではなく『業務委託』で契約したほうが得になる業種がある」と書きましたが、「加盟金」と「ロイヤリティ」のどちらかを「無料」にしても本部が儲かるようになっているのがFCです。言うまでもなく、裏返すなら加盟店が損をしていることになります。

さらに一歩踏み込むなら、最近のFC業界では下請けとして業務委託するどころか、「本来なら従業員として雇用するようなケース」でさえもFC加盟店として募集しているケースがあります。その際の募集キャッチコピーは「自由に働く!」ですが、自由の裏には、従業員として受けられるべき補償が全くない状態という劣悪環境があります。

amazonの配達員が労働組合を結成することが報じられていましたが、amazonは受け入れていないようです。理由は単純で、「雇用関係がない業務委託」だからです。裁判なども行われているようですが、ここで争われているのは位置づけが「下請け(業務委託)or 従業員」です。FCは「業務委託」よりもさらに働く側が不利な状況の立場です。なにしろ「働くにあたって、お金を支払わなくてはいけない」のですから。

僕が見ているネット画面には「求人広告」が表示されることが多いのですが、不思議なことに「求人」の内容が従業員ではなく、加盟店募集であることが多くなっています。この求人運営サイトは大手で名も知れた企業ですが、それほどの企業が「FC加盟店募集」を行っていることにざわついた気持ちになります。安易に独立を勧める広告などに惑われることなく、FCで独立を考えている方は、もっとリスクが少ない状況で独立できる方向で考えることが必要です。

企業が従業員ではなく下請け(業務委託)として契約することを選択するのはリスクが少なく利益が大きいからです。FCはその考えをさらに進めたシステムですので、加盟店は複雑で細かい契約で縛られることになります。簡単に言ってしまいますと、FC本部が「自分たちに都合のいいような人材を確保できること」に尽きます。さらに刺激的な言葉に変えるなら、「使い勝手のいい人材の確保」といえます。

「使い勝手のいい人材」から僕が連想するのは「手懐ける(てなずける)」という言葉です。「手懐ける」を辞書で引きますと「① 自分になつかせ、したしませる。② なつかせて、味方に引き入れる」とありますが、僕流に解釈するなら「手下にすること」です。そして、当然ながらそこには上下関係が伴うことになります。

僕は吉藤オリィさんという方に注目しているのですが、少しばかり変わった方です。そして、変わった方に多いのですが、この方は天才です。「orihime」というロボットを作っている方ですが、身体が不自由な方でも社会で働けるようにすることを目標にしています。僕が知ったのはnoteという投稿サイトですが、今ではかなり大きな組織になっています。

その吉藤さんが先日投稿していた内容が、まさに「手懐けようとする人」についてでした。吉藤さんは自らの活動を行うにあたって人材を募集しているのですが、そこに応募してくる人の中に純粋の意味の「応募」ではなく、「子会社にならないか」と提案してくる方がいるそうです。

吉藤さんはまだ30代前半と若いのですが、そうした人を狙って手懐けようとする輩がいます。いかにもやさしそうに手を差し伸べるかのような素振りをしながら実態は手下にすることを目論んでいます。僕からしますと、「乗っ取り」を企んでいるようにさえ見えます。

僕は起業家の方の本を数多く読んできましたが、起業家は斬新な発想をすることが普通です。ですので、そうした方々はやはり年齢的に若い方が多くなりますが、そうした方のほとんどが吉藤さんのような困惑に見舞われます。今でこそ起業家の成功者の頂点に立っているソフトバンクの孫正義さんですが、まだ起業家として活動しはじめた頃、孫さんが病気で一時期療養していたときに、年上の経営者に会社を乗っ取られそうになったことがありました。そのときは懇意にしていた銀行の経営者に助けてもらったのですが、年齢的に若い起業家には少なからず先輩経営者からの横やりが入ってきやすいものです。

と、孫さんの話を書きましたが、これはかなり前に孫さんが第一次成功時に書いた自伝を読んだときの記憶です。「第一次成功」と書きましたが、孫さんの成功ぶりには幾つかの節目が存在します。元々は孫さんはIT関連の出版業から出発しており、それから先は出版ではなくスマホの通信会社とかポータルサイト運営などで成功してきましたが、現在はファンド運営が主流で金融業といっても過言ではないように思います。現在は第4次成功段階くらいでしょうか。

話しは少し逸れますが、IT関連で起業しながらある程度成功したあとに金融業に進出し、そこでさらに規模が大きくなり本業が金融業になっている例は意外にあります。あの楽天グループも創業当時は「楽市楽座」というネット上での販売モールでしたが、現在は金融業が主流になっています。

話を戻しますと、孫さんの話は今から20年以上前に読んだ自伝の記憶なのですが、最近「記憶の適当さ」を実感することがありました。僕はずっとマイケル・ジャクソンが亡くなったのは自分が大学生のときで夏休み期間中に先輩の家で朝ぼーっと起きたときにFM放送から「マイケル・ジャクソンの死亡」を聴いたように思っていました。しかし、先日妻が見ていたテレビでマイケル・ジャクソンさんが亡くなったときのことを放映していたのですが、なんと季節が冬だったのです。

僕はすぐにネットで調べました。すると自分が記憶違いをしていたことがわかりました。僕が本当はFM放送から聴いた訃報はエルビス・プレスリーさんでした。なんと当てにならない記憶でしょう。以前養老孟子さんが「人間の記憶は書き換えられる」と本で書いていましたが、記憶ほど不確かなことなはいようです。その証拠に今の文章は、本日のタイトルから離れた内容になっています。

本題に戻りますと、「手懐けようとする」人のほとんどは相手よりも自らの利益を考えています。なにしろ手懐けると相手を思うように操れるのですから。現在国会で旧統一教会が問題になっていますが、「手懐け」もマインドコントロールの一つに入るように思います。現在の自民党が提出している旧統一教会の「被害者救済新法関連の法案」について、野党や宗教2世の方、弁護士の方々が「骨抜き」と批判していますが、政府または自民党が本気で救済を考えているようには見えません。

時間が過ぎるのを待っているようにも思えなくはありませんが、旧統一教会と関連のある議員がどんどん出てくる様を見ていますと、本気で旧統一教会問題を解決しようとしているようには思えません。

まさか、自民党って旧統一教会に手懐けられていないですよね。

じゃ、また。




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