失敗と成功のあと

pressココロ上




 東京都板橋区の管理人殺人事件は15歳の少年が犯人でした。両親を殺害するというのですから普通の感覚では理解できません。この両親は管理人をする前は電気店を営んでいたようです。私はこのような過去に独立して仕事をしていた方が関係する事件を見聞きするたびにその方の心について考えてしまいます。
 独立をして仕事をすることは大変です。業績が低迷し廃業に追い込まれるケースも少なくありません。そうしたとき自分だけでなく家族に与える影響も大きなものがあります。本人が心に痛手を受けないでいられることは全くありません。そのような心の状態である父が妻や子供たちに与えるマイナスの影響もあります。板橋での事件はそうしたことが背景にあるのではないか、と私は勝手に想像しています。
 私は基本的には独立を目指すことに賛成です。そういう方を尊敬します。しかしうまくいかないときのことも頭の中で考えていてほしいと思います。「起業バカ」によりますと成功する確率はわずか1500人に1人だそうですから失敗したあとのことを考えておくことは無駄なことではありません。
 ここでいう「失敗したあとのこと」とは具体的な職業のことではありません。心の持ちようのことです。成功するにしても失敗するにしても自分が想像したり予定していた通りに進むことは99%ありません。想像していた通り進まなくとも成功しているのであれば問題はありませんが、失敗した場合は悪循環に陥ることになります。最悪の場合、自ら命を絶つという結果になることもあります。ここ数年、中高年の自殺が増えています。その中には事業が立ち行かなくなった経営者も数多く含まれています。そうしたことを防ぐためにも「失敗したあと」の心の持ちようを考えておくことは必要です。
 私は20代の頃タクシーの運転手をしていたわけですが、そこにはかつて独立していた方々がたくさんいました。それこそ小売業から製造業まで職種も様々でした。当時は単純に「独立することの難しさ」を感じただけでしたが、今思い返してみますとそこには「たくましさ」がありました。私は「たくましさ」を尊敬します。事業を失敗し心に傷を負っていたはずなのにタクシー運転手として生活の糧を稼ぎ野球などで楽しんでいたのですから。これから挑戦しようと考えている方も、例え失敗したとしてもふて腐れず明るく生きていくという心持でいられる自分を想像してほしいと思います。
 先週、大企業の工場で働いていた従業員が身体に害を与える物質を扱っていたことが原因で死亡していたという報道が2件ありました。どちらも優良企業と言われていた企業です。最初に報道された企業の有名な元経営者は財界でも人格者として通っていた方でしたのでとてもショックでした。従業員の命を粗末にするような企業ではないと思っていたからです。
 経営者は株主の期待に応え、消費者に満足を与え、従業員を雇用しなければなりません。この三つの中で一番弱い立場にいるのは従業員です。その従業員の命を軽く考えていたような今回の事件は許されるものではありません。ん? ちょっと表現がキツイかな? でも私はそれほど憤っているのです。経営者として成功したあとには一番弱い者に対して気配りをするのが義務ではないでしょうか。
 古い話になりますが、今から40年前、ある大手の化粧品会社の工場に勤めていた女性従業員は男性国家公務員より高い給料を得ていました。当時の公務員の給料が今ほど高くなかったことを割り引いてもすごいことです。私はその話を聞いたときこの化粧品会社と経営者を尊敬しました。また、この企業はメセナに力を入れており、産業界で一時期ブームになったときだけメセナを叫んでいた企業群と違いこの企業は今でも先頭になって実行しています。この企業は現在も立派な業績をあげていますから従業員を大切にする企業は長い間生き残るという証拠ともなります。
 成功することは大変ですが、成功したあとに行う行為がその人の本当の姿と言えます。成功しそうな方は忘れないでほしいと思います。
 「あと」から考えると「なんであのときあんなことしたのかなぁ?」と後悔することはしばしばあります。しかし「まえ」から「あと」のことを考えて後悔することはありません。皆さん、安心して思う存分「あと」のことを考えましょう。でも99%その通りにはいかないんですけど…。
                                 じゃ、また。







シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする