<弱小の強み>

pressココロ上




 先週はプレミアムフライデーでマスコミは盛り上がっていましたが、実際のところは会社勤めをしている人たちの大半には無関係だったのではないでしょうか。なにしろプレミアムフライデーを実施する企業の割合がわずか2.5%という数字でした。普通に考えて勤務時間を短縮できるのは大企業の一部に限られているはずです。日本の大企業の占める割合は約10%ですから、ほとんどの会社員はプレミアム金曜の恩恵を受けていないことになります。
 情報番組などの伝え方を見ていても「時間の使い方を無理矢理に作っている感じ」が映像から伝わってきます。テレビ用に人を集めてきて事前にコメントの打ち合わせをして、その場面を撮っている様子が目に浮かびます。それにしても今のテレビ界を象徴しているように感じたのは映像を撮る場所でした。せっかく仕事が早く終わったのに、「やることがお酒を飲むだけ」というのはあまりに情けないことです。今回の騒動は図らずも番組を制作する人たちが画一的な発想しか持ち合わせていないことを証明していました。
 1ヵ月に1回とはいえ勤務時間を減らすなどという悠長なことができるのは日本にある企業の中ではほんのわずかな数です。ほとんどの企業では人手不足が慢性化しており、そして企業は残業代を支払うことにさえ汲々としておりサービス残業が常態化しているのが実態です。
 人手不足が特に顕著なのは人間がサービスを提供する業界です。例えば、飲食業や小売業、配送業などですが、これらの業界は働く人がいなくなると成り立たない業界です。しかも退職などで従業員が足りなくなりますと、残っている従業員にさらにしわ寄せがいく構造になっています。飲食業や小売業で働いている人たちはこの負のサイクルから抜け出せずに苦しんでいます。
 先週、宅配業界の最大手であるヤマト運輸の労働組合が「荷物受付の制限を要請した」というニュースがありました。このニュースは一見なにげない内容のようですが、僕には画期的な印象がありました。理由は、労働組合が本来の役目を果たしたように感じたからです。今の時代に、労働組合が経営側に業務内容について「意見をする」などという話を聞いたことがありません。今の労働組合は経営側の御用組合に成り下がっているからです。因みに、御用組合とは「経営者の言いなりになる労働組合」のことです。
 そのような状況の中で労働組合が経営側に荷受け制限を要望するのは簡単ではないはずです。荷受け制限は売上げを落とす行為ですから経営側にとっては容易に受け入れられる内容ではありません。それを敢えて行ったのですから今の労働現場がいかに過酷であるかを示しています。
 荷受け制限をしなければいけないほど荷物が増えたのは昨年amazonと契約をしたからだそうです。amazonはそれまで佐川急便と契約していたそうですが、佐川急便が金額的に合わずに辞退したことによりヤマト運輸と契約したわけです。
 素人目にみましても、佐川急便の配達システムでは無理があるように思います。ヤマト運輸のようなきめ細かな配達網を確立していなければ消費者の要望に応えるのは無理です。そう考えますと、宅配便を考えた小倉昌男氏の先見の明の素晴らしさをより強く感じます。
 先週のテレビ東京「ガイアの夜明け」ではそのヤマト運輸の違法な労働実態を訴える元社員を取り上げていました。内容は、サービス残業を労働者に押し付けている様子を示すものでしたが、業界最大手のヤマト運輸が対象になっているところが重要です。
 「ガイアの夜明け」はこれまでにもなんどか「労働者が不利益を被っている状況」を告発する内容を放映しています。数年前には大手コーヒーチェーンの「シャノアール」のアルバイトへに対する違法な労働実態を告発していましたし、最近では「ドン・キホーテ」や「アリさんマークの引っ越し」などの違法な労働実態を放映していました。
 一般に、大手マスメディアはスポンサーに配慮する傾向があります。大手であればあるほどその傾向が強いといわれています。その点、テレビ東京は業界では弱小であるがゆえに反対に「スポンサーに配慮することなく番組を作ることができる」という利点があるように思います。
 僕は現在、読売新聞を購入していますが、新興宗教の広告が堂々と大きな紙面を占めていることに違和感を持っています。いくら営業的に苦しいとはいえ新興宗教に加担するようなことは慎むのが大手新聞の矜持ではないでしょうか。
 話は少し逸れますが、「ガイアの夜明け」のMCを務めているのは江口洋介さんですが、場合によっては自分の芸能活動に影響を与えることもあるかもしれません。自社の営業活動を批判している番組に出演しているタレントを企業が使うはずがないからです。芸能人はそういうリスクも負っていると考えますと、芸能人も大変です。
 ヤマト運輸では労働組合が本来の役割を果たしたわけですが、それはあくまで組合員の立場を守ることが目的でした。それに対して、さらにもう一歩進んで組合員ではなく労働者全体の立場を守る提言をした労働組合のニュースがありました。
 auを展開するKDDIの労働組合は契約社員の一時金の算定方法を正社員と同じようにすることを要求するそうです。つまり正社員の労働組合が非正社員である契約社員の収入が増えるように要請することです。正社員と契約社員の格差を解消するのが目的とのことですが、労働組合というからには正社員だけではなく契約社員など非正社員の待遇改善も目指すのが本来の役割です。この流れが全体に広がることを期待しています。
 現在、労働組合の組織率は20%を割り込んでいますが、組合離れが始まったきっかけは経済が安定したことだと思います。しかし、現在の労働環境は決して褒められたものではありません。昨年あたりから「ブラック企業」だとか「ブラックバイト」という言葉を見聞きする機会が増えましたが、労働者にばかり不利益が押し付けられる労働状況が増えています。
 ブラックな企業をなくすのはある意味簡単です。情報公開です。離職率の発表を義務付ければよいのです。離職率は求職者が判断する目安になります。普通の感覚の持ち主なら離職率の高い企業の面接を受けようなどと考えるはずがありません。このようにして自然とブラック企業は淘汰されていくでしょう。
 先週はまたしてもコンビニで「急に休んだことを理由に罰金をとっていた」事件が報じられました。おそらくこのような違法な誓約書を強制しているコンビニはほかにもあるのではないでしょうか。僕も飲食店を経営していた経験がありますので突然休まれることの大変さはわかります。ですが、それも含めてお店を運営するのが経営者の務めです。それができない経営者は淘汰されるべきです。
 このように決して高い賃金を支払っているとはいえないアルバイトに重い責任を押し付けようとする発想に憤りを覚えます。ですが、僕がもっと憤りを感じるのはコンビニ本部が加盟店に対して不公平な関係で契約していることです。なにしろ経営者でありながら、「お店を休業したときに本部に違約金を支払う」なんて経営者に対する侮辱です。名ばかり経営者と言われてもおかしくはありません。
 テレビ東京で取り上げないかなぁ…。
 じゃ、また。




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