<google map>

pressココロ上




僕は車で移動しながらアパートやマンションといった集合住宅の清掃を請け負う仕事をしているのですが、ある日いつも行く物件で作業をしていますと、中型トラックから降りてきた50代半ばくらいの男性が道を尋ねてきました。

住宅建設の工事現場に資材を運んでいる途中のようで、申し訳なさそうに僕に地図を見せながら目的の場所を指差しました。しかし、A4用紙に印刷された地図はとてもわかりにくく、今自分がいる場所さえわからないような代物でした。なにしろ目的場所近辺の道路が一切書かれておらず、白紙状態のところにただ星印だけが書かれている地図でした。

さらにわかりにくいのは、最寄りの駅が目的場所からかなり離れていることです。場所を確認するのに最もわかりやすいは、やはり駅を起点にして道順を考えることです。ですが、その印刷された地図の目的場所は地図の右端下の隅のほうになっており、しかも先ほど書きましたように、そのあたりはほぼ白紙状態となっていました。

それでも線路の位置を目安にして推測しますと、地図上での自分たちの位置がおおよそわかりました。その地図には記載されていないのですが、その地図のさらに右側あたり付近のように推測できました。僕は男性に、「今いる場所はこのあたりですよ」と地図の右端のさらに右側あたりの空間を指し示しました。

男性は「本当に、この地図わかりにくんですよねぇ」と困ったような表情をしました。そこで僕は「googlemapで調べましたか?」と尋ねました。男性はちょっと驚いた感じで「いいえ」と返してきましたので「それじゃ、調べてみましょう」と僕はスマホを取り出しました。

男性が教えてくれた住所をスマホに向かって読み上げて「googlemap」さんに調べてもらいました。10秒くらい待ちますと、スマホの画面に地図とともにいろいろなマークが表示されたのですが、いつも僕が利用しているときとは少し趣が異なっていました。僕が住所を探すときは、自分の居場所を中心にその近辺の地図が表示されます。ですが、そのときは広範囲の地図とそこにいろいろなマークが表示されていました。

そのとき僕は都心からかなり離れたところにいましたので、東京のようにきれいに区画整理された住所とは異なる住居地名となっていました。なにしろ住所に「字」という文字が入っていましたので、妻の東北の実家と同じような感覚です。そうした先入観もあり、またその男性がしきりに「この住所だけだと、わからないですよねぇ」という言葉を連呼していましたので、勝手に「googlemapでは見つからない地域」と決め込んでしまいました。

ですので、僕は「goolemap」の地図から探すのをすぐにあきらめ、男性が持ってきた地図から目的の場所へ行く方法を伝えました。地図から察しますとかなり遠回りには思えますが、記載されている駅を起点にして考える一番わかりやすい道順です。

男性はお礼を言って車に戻りましたが、運転席に座ってからもなにかを見ているようでしばらくそこに停車していました。印刷された地図上での現在地を教えていますので、やはり遠回りが気になるのかもしれません。しかし、いつの間にかいなくなっていました。

僕は自サイトで「googlemapを使う前に」という記事を書いています。これは僕自身が当初「googlemap」を使いづらいと感じていたことが理由です。なにしろ、信号などでしばらく停まっていると勝手にそれまでと違う道順を教えはじめてしまいます。しかも、新しいルートがそれまでとは正反対の方向だったりしますと、さすがに不安感が高まります。

例えば、最初のルートでは「次は右方向へ」と案内していたものを、突然「次は左方向へ」とか、「まっすぐ」が「Uターン」などと変更されますと、困惑以外のなにものでもありません。

さらに、教えるルートが「細い道」だったり、ひどいときは「この道、だれかんちの敷地内じゃねぇ?」って思えるような道も「googlemap」さんは示してきます。そうした困難を経験するうちにどうにかコツを体得していきました。コツがわかるようになるに従い、段々と「googlemap」さんは十分にカーナビとして使える、と思うようになりました。そうした実体験を綴ったのが「googlemapを使う前に」という記事です。

詳細はその記事を読んでいただくとして、とにかく「googlemap」さんは使い勝手があります。使い方さえ、というか「コツ」さえ掴んだなら無料で使える「googlemap」ほど便利なアプリはありません。さらに言いますと、新しい機種ですと、それほど「コツ」など習得することもなく、普通に使うことができるようになっています。

僕はスマホを2台持ちしているのですが、たまたま新しいほうのスマホで「googlemap」を使う機会がありました。そのスマホでは「信号などで停まっても、それまでと違う道順を案内する」ことは一度もありませんでした。まるでただジーっと待っているポチのように大人しい「google map」さんでした。「コツ」が必要なのは古い機種で「googlemap」を使うときだけのようです。

話は逸れますが…。

冒頭のほうで、「スマホに向かって、住所を読み上げた」と書きましたが、実は僕がスマホを「本気で使いこなせるようになりたい」と思ったきっかけは、この「スマホが僕の口からの言葉に正確に反応することを知った」ことです。

もう7~8年ほど前のことでしょうか。妻はスーパーで働いているのですが、そのスーパーの店長が住所を検索する際に「スマホに向かって話していた」と妻が教えてくれました。当時、そこまでスマホを使いこなせていなかった僕は、そのことに凄く驚きました。試しに、自分でもやってみますと、完璧に僕の言葉を文章に変換しました。

自分で言うのもなんですが、僕は活舌が悪いので有名です。自分でもなにを言ってるのかわからないときがあるくらいですが、「googlemap」さんは見事に僕の言葉を完璧に拾ってくれます。僕の勘では、あの長州力さんの言葉さえ、ほぼ間違わずに文章に変換するのではないでしょうか。(笑

話を戻します。

作業をしながらそんなことを考えていましたところ、先ほどの住所検索がうまくいかなかったことが気になってきました。そこで試しにと思い、スマホで「googlemap」を開きますと、なんと先ほど検索した住所の地図がわかりやすく表示されているではありませんか。車で行きますと、わずか5~6分ほどの場所でした。

僕は先ほどの男性がいないかと道路に出て左右を見渡しましたが、残念ながら男性のトラックは見当たりませんでした。あのときは少しの焦りもあり、つい早めにスマホを閉じてしまったので気がつかなかったのですが、「googlemap」さんは正しい仕事をしていたことになります。

正確に表示された「googlemap」を見ますと、あの男性が探していた場所は僕のいた場所から目と鼻の先だったのです。あともうちょっと、辛抱強くスマホを開いていたならあの男性に貢献できたのに…。残念で残念でなりませぬ。

気持ちがおさまらないまま帰宅したのですが、妻に「人に優しさを分け与えることができたのに、タイミングを逃したのが悔しくて悔しくてたまらない」と言ったところ、「じゃぁ、その分、わたしに優しくして」と言われました。

じゃ、また。




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