<ローマにならないための休日>

pressココロ上




 いよいよ投票日です。このコラムを書いていますのは10日(土)ですので結果はまだわかりませんが、世論調査では小泉自民党が勝つ確率が高いようです。それにしても今回ほど画期的な選挙はありません。先週も書きましたが、今までは密室で決められていた政策が選挙というオープンな場で決められようとしているのですからこれほどの民主的な決め方はありません。郵政民営化に賛成か反対かは人それぞれでしょうが、政治にあまり興味のなかった人たちにも関心を持たせた意義は大きいと思います。勝敗はともかく投票率が60%を超えたならこの選挙は大成功と言えます。
 いろいろな意見の中に「郵政民営化では小泉さん支持だが年金や靖国問題などそれ以外では支持しない」というものがあります。このような意見の人は「どの政党に」「誰に」投票するか迷っているようですが、全てが自分と同じ考えで100%満足できる政党や政治家がいるはずはありません。これはどんな政治システムでも同じなのですから総合的に判断すればよいのではないでしょうか。皆が「同じだけ平等に譲り合って」納得できる社会を目標にして投票しましょう。
 しかし皆が「同じだけ平等に譲り合う」社会を実現することの難しさは過去の歴史が物語っています。そのことが選挙の投票率の低さにも結びついています。「どうせ自分ひとりが投票しても政治は変わらない」という意見はよく聞く話です。では何故「同じだけ平等に譲り合う」社会を実現することが難しいのでしょう。それはどのような場面でも既得権益者がいるからです。この壁を壊さない限り「同じだけ平等に譲り合う」社会を実現することは望むべくもありません。
 私は選挙のたびに低い投票率に落胆させられていました。政治に無関心な人が多いということはそれだけ既得権益者の意見が政治に反映されるからです。既得権益者は必ずと言っていいほど組織として団結しています。そしてそうした組織は選挙のときに力を発揮します。これでは既得権益者の意見だけが政治に反映されてしまいます。「同じだけ平等に譲り合う」社会とはかけ離れた社会になってしまいます。
 私が今回の選挙が画期的であると思っている理由はこの点にもあります。特定郵便局の後援組織である「大樹会」は今までは自民党の大票田でした。当然郵政民営化には反対ですが小泉さんはその大票田を失うことを覚悟で選挙に臨んでいます。これまでの自民党は業界団体などの組織を票田としその組織に推された族議員が力を持っていました。今回の小泉さんのやり方はその自民党のあり方さえも問うものです。覚えている方もいると思いますが、与党は今年7月に中小酒販店の保護を目的とした、過当競争地域での新規参入凍結を来年8月まで延長することで合意しています。現在いろいろな業界で規制が緩和され競争にしのぎを削っている中で酒販業界だけは競争を免れようとすることは平等とは言えません。このようなことが行われるのも酒販組合という自民党にとっての大票田としての力です。組織とした大票田をバックに族議員はそれほど大きな力を持っています。今回の選挙はそうした自民党のあり方、否自民党に限らず政治のあり方を問おうとしています。もし無党派層と言われる人たちが投票に行き投票率が60%を越え70%に迫るなら日本の政党は、政治は変わる……かなぁ…。
 ところで…。
 今回の選挙についてアフガニスタンで活動しています医師・ペシャワール会現地代表の中村哲氏がインタビューに答えていました。記事を読んでいましたら「今の日本はいろいろな問題がありながらも平和で繁栄している社会である」と感じました。結局投票率が低いのもそうしたぬるま湯的な社会が関係しているのかもしれません。でもこういう現状って「ローマと同じ運命をたどる」ことにつながるんじゃないかなぁ…。
 11日の休日は選挙に行きましょう。
 じゃ、また。




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