<信念>

pressココロ上




 朝鮮総連の本部売却に絡み、元公安トップである緒方氏が逮捕されてしまいました。新聞報道では詐欺容疑とのことですが、今ひとつ腑に落ちません。私としては、新聞報道が「検察側発表に偏っている」のではないかと感じているのですが、真実はどうなのでしょう。
 先々週も書きましたが、私は緒方氏の行為を少数者を慮る良心的なものと思っていたいのです。しかし、現在までの報道では単なるお金に目がくらんだ悪人と伝えられています。でも、なぜ緒方氏ほどの履歴を持つ人が「容易に発覚する詐欺行為」をしたのか不思議でなりません。私はまだ緒方氏が善人であることに一縷の望みを抱いています。
 山口県光市の母子殺人事件。差し戻し控訴審後に本村氏が記者会見を行っていました。被告はこれまでの証言をくつがえし「殺意はなかった」と述べたようです。弁護側によりますと「今まで心の奥に埋もれていた記憶が蘇った」とのことですが、本村氏が憤る気持ちも理解できます。
 実は、私は最近の本村氏の発言をテレビで見ていて感じることがあります。それは本村氏の心の変化です。新聞など活字媒体からでは感じないのですが、テレビでの本村氏の発言内容から今までと違ったニュアンスを感じます。うまく言えないのですが、被告に対して遺族としての視点からだけでなく、もっと大きな高い視点から被告を見るようになっているのではないかと感じています。私の思いすごしでしょうか…。
 前にも書きましたが、元裁判官が記者会見をしていました。約40年前の袴田事件について「無罪の心証を持っていた」と涙ながらに訴えていました。元裁判官は言いました。
「彼の人生を棒に振らせてしまった」
 学生時代に読んだ本で最も印象に残っている文章があります。
「人間は全て自分が満足するために行動する」
 例えば、困っている人を助ける行為でも「相手を助けるため」でなく「助ける」ことによって「自分が満足する」からである、ということです。
 またあるとき読んだ本には
「嘘を貫き通せないのは自分が苦しさから逃れたいからだ」
と書いてありました。
 例えば、ある人を陥れようと嘘をついた人間が「ある人のために真実を話す」という行為は「ある人のため」でなく、嘘をついていることが自分自身にとって辛く苦しくそれから逃れたいがためである、ということです。
 宮沢元首相が亡くなりました。宮沢氏といえば私は社会人になりたてのころを思い出します。
 当時、スーパーに勤めていた私はレジのパートさんとよく話をしていました。パートさんは50才を過ぎた人生経験豊富な方でご主人は小さな工務店を営んでいる方でした。そのパートさんは社会についてなにも知らない私にいろいろなことを教えてくれました。
 ある日、パートさんと政治の話題になりたまたま宮沢氏について話してくれました。
「宮沢さんて、頭もいいけどすごい自信家でプライドが高くてエリート意識が強い人なのよ。頭の悪い人なんか相手にしないし、人に頭なんか下げたことないんだから」
 あれから30年が過ぎているのですが、なぜかこの台詞が頭に残っています。
 その宮沢氏が首相になるときに、自分より年下である経世会の幹部であった小沢氏のところに自分から出向き「首相になるための面接」を受けたことが私の中では画期的なことに映りました。パートさんから「エリート意識の塊」と聞いていただけに驚きで、宮沢氏の首相になる意気込みを感じたものです。
 宮沢氏は首相をやめたあと小渕内閣で大蔵大臣にもなっています。元首相が大蔵大臣になるのは引退した社長が役員に復帰するようなものですから本当にプライドが高い人なら引き受けないでしょう。本当の宮沢氏は自分の欲やプライドより、それよりもっと高い次元で政治家を務めていたのではないでしょうか。そのことは小泉首相が政治家引退を願い出たときもあっさりと了承し、そのあとの言葉にも表れています。
「一国の首相に恥をかかせちゃぁいけないよ」
 先日の経済誌に、「なぜだ!」と言って失脚した元三越百貨店社長岡田茂氏の元側近の方が記事になっていました。側近の方は騒動後、東南アジアの支店に左遷されたそうですがその地で業績を伸ばしているようです。
 その方によりますと、岡田氏失脚時にほとんどの幹部が岡田氏の下を去ったそうです。そんな中、氏は最後まで側近であり続けたために左遷されたのですが、それらを全て自分の中で受け入れていました。私は岡田社長は解任されて当然と思っていますが、側近の方が自分の信じた人に最後までついていった志は尊敬します。周りや社会がどんな評価をしようが自分の信念を貫いているように思えるからです。
 「正しさ」は時代により変化します。今日の「正しい」が明日は「正しくない」になっているかもしれません。経営評論家のドラッカー氏は「変化はコントロールできない。できるのは変化の先頭に立つだけだ」と言っていますが、変化の先頭に立つのではなく、自分の信念を貫き通す人生があってもよいのではないでしょうか。
 もうすぐ選挙です。政治家も当選したいがために選挙民におもねるのではなく、当選落選は関係なく自分の考え主張を貫き通すのが本当の意味での政治家だと思います。
 信念を貫く人は尊敬に値しますが、では、信念などなくいつも周りに合わせ頻繁に主義主張を変える人は尊敬に値しないダメな人間なのでしょうか? 
 いいえ、違います。なぜなら
「主義主張を頻繁に変える」という信念があるからです。
 じゃ、また。

紙.gif4コマ漫画
ジャーック!




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