<記事と広告>

pressココロ上




 先週、「脱サラ体験談」を読んでくださった方からメールをいただきました。「お褒め」の言葉でしたので、僕としましてもとてもうれしく早速お礼のメールを差し上げようと思い発信者のところを見ますと、驚きの日時が書いてありました。なんと発信日が「6月22日」になっていたのでした。当日が7月24日でしたので約1ヶ月も前に送られていたことになります。
 昔、パソコンの本で「メールは迷子になることもある」と読んだことはありましたが、実際に経験したのは初めてです。僕の公開しているメールアドレスはフリーメールですので、それも関係しているのでしょうか? 原因はわからないままですが、それにしても送られてきたメールはいったい1ヶ月間もどこを彷徨っていたのでしょう。まぁ、とにかく無事に届いてよかった、よかった。そのメールさんにしても、すぐに届くより遠回りをして届いたほうがいろいろな体験ができて喜んでいるかもしれません。そういえば、昔、ビールのコマーシャルにこんなのがありましたっけ…。
「遠回りは嫌いです…近道はもっと嫌いです…」
 先ほどのメールさんは迷子になり世界中をサーフィンしたのだろうと思いますが、僕がネットサーフィンをする時間はごくわずかです。平均すると一週間に1時間くらいです。たぶん、社会人として仕事を持っている方はほとんどの方が同じくらいの利用時間ではないでしょうか。そして、ネットの利用目的はやはり「調べもの」が圧倒的でしょう。
 先週半ばに「左足がしびれる」感覚があり不安にかられました。それまではそんな感覚は全くなく突然のことでしたので自分でも不思議でなりません。私の仕事は「立ち仕事」ですが、それは今までずっとそうでしたので「立ち仕事」が理由とは思えません。そこでネットで調べてみることにしました。
 GoogleやYafooで検索したのですが、いろいろ調べているうちにあることに気がつきました。「似た文章」がやたらと多いことです。どれが大元の文章かはわかりませんが、あるサイトの文章を下敷きにして書いているのは明らかです。中には全く同じ文章のものまでありました。想像しますと、検索結果の上位に表示されるための1つの方法なのでしょうが、これでは検索者にとって「本当に必要な情報は中々得られない」状況となってしまいます。広告会社にとっては「してやったり」かもしれませんが、検索者にとってはあまりよい状況とは言えません。
 このような憂いを感じていたところに、先週の朝日新聞には「ブログで宣伝、企業の影」という記事が掲載されていました。実にタイムリーな記事でした。私もアフィリエイトをやっていますが、アフィリエイト会社がAS(アフィリエイトサイト)会員に勧める宣伝法として「ブログに広告主の記事を書く」方法が紹介されています。アフィリエイト会員にとっては「サイトに広告を貼る」よりは確実に収入が得られる方法となっています。アフィリエイトプログラムに参加している会員の方のほとんどが収入を得られていない状況ではつい参加したくなる方法です。しかし、私としては「正攻法な宣伝ではない」と考えています。
 数年前ですが、原子力発電所についてそのメリットを「記事のような広告」を新聞に掲載し物議を醸したことがあります。そのときも私はこのコラムで書きましたが、「記事」と「広告」は明確にわけるべきです。専門家でもない一般の人は新聞の記事で情報を得ます。その情報とは常に中立で公平である必要があります。もしそれが守られないなら消費者が偏った情報により判断することになってしまうからです。
 同じように「ブログに広告主の記事を書く」なら<広告>であることを知らせることはブログを書くうえでの最低限守るべきマナーです。このような宣伝法は「口コミのような方法」として約2年ほど前にある自動車会社が始めたことが最初ではないか、と記憶しています。その宣伝方法は成功したようですが、その記事を経済誌で読んだとき私は違和感を持ったものです。
 ラーメン店時代に感じたことで一番大きな違和感は「口コミ」という言葉でした。現在もラーメンに関してはグルメ通の話題になりますが、当時もラーメン業界は「行列ができる」というキーワードとともに賑わっていました。その中でよく使われていた言葉が「口コミで広がった」というものです。しかし、私は「口コミ」の実態は「口コミで広がったというマスメディアでの宣伝」だと思っていました。「口コミ」とは、そのほとんどが「『口コミで広がった』とマスメディアに取り上げられた」効果、という意味です。これでは「口コミ」で有名になった、とは言えません。
 モノにしろサービスにしろ「売る」ことはとても難しいものです。そして「売る」ために最も難しいのはその「宣伝方法」と言えます。体験談テキストにも書きましたが、丸井の青井社長は宣伝の重要性を次のように言っています。
「宣伝なくして繁栄するのは造幣局のみ」
 企業は「効果のある宣伝方法」を求めて試行錯誤しています。そういうときついつい安易な方向へ流れやすくなってしまいます。しかし、そのとき自分が「買う側の立場」だったなら「どう思うか」を常に頭の中に入れていなければなりません。以前本のコーナーで、私が好きな経営者として花王の元社長・丸田氏を紹介しました。それは丸田氏が製造・開発のみならず「宣伝」についても消費者に対して真摯に向き合うことを基本理念としていたからです。
 あっ、なんか今の文章は「花王の“宣伝っぽい”」ですか…。
 いえいえ、花王の宣伝などする意図は全くなく単に丸田さんが好きなことを言いたかっただけですのでお許しください。
 このように、記事と広告はその線引きがとても難しいものです。そうであるからこそ宣伝に関係している広告会社などは「入念」にかつ「慎重」に取り組んでほしい、と思います。
 消費者を惑わさず、正確な情報を提供し、しかも売上げに貢献する宣伝方法というものはとても難しく面倒なことです。しかし「効果がある」からと言って安易な方法を選ぶことは結果的に消費者を欺くことになってしまいます。売上げ至上主義の現在ではありますが、正当な宣伝方法が行われることを願っています。
「面倒な宣伝は嫌いです。安易な宣伝はもっと嫌いです」
 となってほしいものです。
 じゃ、また。

紙.gif4コマ漫画
ジャーック!




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