<モンスターペアレンツ>

pressココロ上




 最近では学校の先生がうつ病になるケースが増えているそうです。その理由の多くが「モンスターペアレンツ」の存在です。日本語に訳すと「怪物親」です。そのような親に対処しなければならないのですから相当なプレッシャーになり精神的にまいってしまうこともあるかもしれません。その「モンスターぶり」はというと…。
 普通の感覚の人では考えられない要望やクレームを先生に言ってくるそうです。例えば、子どもが朝起きないので携帯で起こしてほしい。または、自分の子どもと仲がよい子と同じクラスにしてほしい、など常識では考えられない要望・クレームです。そうした要望・クレームを言う背景には、かつてはあった教師に対する感謝や尊敬の念といった気持ちが全くないことがあるようです。裏を返せば教師としての威厳などみじんもないことになります。
 その一方、教師による体罰で傷害を負い賠償責任を問われている事件もあります。こうした事件は教師が「うつ病」になるケースとは全く正反対の出来事で教師・学校の前に親や子が全く無力であることを示しています。
 果たして学校の実態はなにが真実なのでしょう…。
 妻がパートに働きに出ていた職場でのお話です。
 その職場は小さな会社でしたのでパートさんは全員揃っても6~7人でした。そのほとんどが小学生くらいの子どもを持つ親でしたので年令は妻より一回りほど若い年代の方たちでした。
 そのお母さんたちの一人が言いました。
「やっぱり男の子は『 野グソ 』ができるくらいがいいわよね」
 この話を妻から聞いたとき思わず笑ってしまったのですが、それと同時に感心もしました。なにに感心したかと言いますと、「野グソがいい」ことではなく「そのように考える親がいる」ことに感心したのです。現代の発達した文明社会の時代に「野生的な発想」をする親がいることがちょっとした驚きでした。
 この親御さんの例のように野生的で逞しい発想の人もいれば、反対に「野グソ」に嫌悪感を示す親もいるでしょう。親の価値観は様々であって当然です。そしてその親の元で育てられながら子どもは学校と言う集団の中で親以外の価値観を知り集団での生きる術を学んでいきます。
 モンスターと呼ばれるペアレンツたちは、本来は大人になるまでに学んでこなければいけなかった集団における生活の感覚・感性などを身につけないまま大人になってしまった人たちです。そうした親から受けるクレームは先生たちにとって確かに苦痛でしかないでしょう。しかし、そうした親は昔も存在しました。
 自分の子どもだけを「特別扱いにしてほしい」と願う親は昔も今も変わりはないのです。ただ一つの違いは「歯止め」があるかないかの差です。昔は「歯止め」がありました。その「歯止め」とは「教師に対する尊敬の念」ではなかったか、と思います。最近ではその「歯止め」がなくなってしまったのですから昔より先生たちの負担が多くなって当然です。でも…。
 「歯止め」がなくなった原因は先生たちの側にもある、と私は思っています。
 テレビで教師の方々が覆面座談会を放映していました。今、職員室では「誰も電話に出たがらない」そうです。先生方が電話恐怖症になっている、とのことです。その理由はクレームです。親からのクレーム電話に怯えて電話に出られないのです。
 ある先生が一例として「『電話の出方がなってない』から始まる」と話していましたが、一般の民間企業では「電話の出方」に注意を払うことは当然のことです。そうしたことができない先生方の存在が「歯止め」をなくした原因のように思います。
 私は「学校はサービス業でなければならない」と考えていますが、現在の学校を取り巻く環境はまさしくサービス業に近い状況になっています。サービス業ではお客さまからのクレームを受けるのは日常茶飯事のできごとです。大切なのはそのクレームにどのように対処しそして活かすかです。
 多くの経営書には「クレームには経営のヒントが隠されている」と書いてあります。クレームによって企業の問題点が明らかになります。つまりクレームは今現在の経営のやり方のチェック機能を果たしていることになります。クレームの一番のメリットは「チェック機能」と言ってもよいかもしれません。
  私はこれまでに幾度か「クレームに関する本」を紹介していますが、その多くは理不尽なクレームに対する対処法を書いた本です。クレームは企業にとってチェック機能を果たす役目もありますが、「言いがかり」としか言えないようなクレームがあることも事実です。
 リクルート出身で現在は公立中学校の校長を務めていらっしゃる藤原和博氏は「意味のない親からのクレーム」に先生たちの貴重な時間を費やすのはもったいない、と述べています。「学校はサービス業たれ」という私の主張は「言いがかりのクレーム」さえも「受け入れる」ことを含んでの考えです。「サービス業たる」には学校のシステムも作り直す必要もあるでしょう。そして先生方も親からのクレームを経験し対応することによって民間企業の感覚を身につけることができるはずです。民間企業の感覚の欠如した先生に親が「尊敬の念」を持つはずがありません。
 今、年金問題が騒がれていますが、社会保険庁の杜撰さはこのチェック機能が全く働いていなかったからです。昔の社会保険庁はお役人意識が強く、また国民もお上意識があり気安く問い合わせたり、ましてやクレームなど言える雰囲気ではありませんでした。仮にクレームを言っても全く相手にされなかったでしょう。もしクレームを言える雰囲気があったならもっと早い時期に年金の問題点が明らかになっていたのではないかと思います。個人的な感想としては意図的にそういう雰囲気を作らなかった感じもしますが…。
 新聞報道を見る限り舛添大臣は年金問題に対して精力的に取り組んでいるようですが、もし年金行政が今後も正常に機能しないなら年金を納めている国民全員がモンスターになるかもしれません。
 じゃ、また。

紙.gif4コマ漫画
ジャーック!




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