<納得力>

pressココロ上




 コンビニが変わる。フランチャイズシステム(以下 FC )が変わる。
 こんなことを考えた1週間でした。報道ではコンビニの加盟店主が集まりユニオンを結成したそうです。これはとても画期的な出来事で、コンビニまたはFCのあり方が根本から変わる可能性があります。
 たびたび書いていますが、僕はかねてよりFCにおける本部と加盟店の関係は不平等だと思っていました。加盟店主は従業員ではなく、固定給が保証されているわけでもなく、また身分が安定しているわけでもないのに本部の支持に全面的に従わなければなりませんでした。そうした加盟店を取り巻く悪環境が変わろうとしています。
 きっかけは、やはり先月ありました公正取引委員会の「排除命令」です。この公取の判断によりFC本部の「不都合な真実」が一気に表面化したように思います。こうした流れを後押しするかのように、ユニオン結成式に民主党副代表の小沢氏がかけつけました。そしてそれをマスコミが取り上げました。この「小沢氏がかけつけた」そして「マスコミが取り上げた」という2つの事実がとても大切です。このどちらも欠けては効果がありません。この両方が伴って初めてこの流れは効果を発揮します。
 「時の運」と言いますが、今回の出来事は正しく「時の運」が味方したような感じです。小沢氏がユニオン結成式に駆けつけたのは選挙が関係していますし、マスコミが取り上げたのは小沢氏の動きもさることながら先月の公取の判断も影響しているはずです。今回の動き、流れを逃したならコンビニ、FCの改善は当分の間望めないでしょう。
 最近でこそ業績が頭打ちになっていますが、コンビには長い間流通業の優等生でした。消費者の視線で売り場を改善し消費者に便利さを提供することによって業績を上げてきました。一般的には、これらの要因がコンビニの好業績の理由とされていますが、僕の考えるところでは、その業績も加盟店主の犠牲があったればこその話です。もし本当に経営のやり方が正しかったのではあればFCなどという形態でなく直営店で行ったはずです。それを未だにFCでの展開が続いているのですから、いかにFCが本部にとって都合のよい形態であるかわかろうというものです。
 きっかけはどうあろうともコンビニFCにおいて加盟店の一方的に弱い立場が改善されることは喜ばしいことですが、今回の加盟店の行動に注文もあります。それは結成したのがユニオンであることです。
 ユニオンとは労働組合のことですが、加盟店主という立場は個人事業主であり労働者ではありません。それにも関わらずユニオンとして団体を結成したのは無理があるように思います。最近流行りの言葉で言うなら「モンスター加盟店」と言ったところでしょうか…。僕は本来本部に批判的ですが、この点だけで言うなら本部の立場に与したいと思います。
 FCとはいえ加盟店になることを決断したからには独立という意志があったはずです。確かに契約に際し不明朗な点があったにしても、それに納得して契約書にサイン捺印をしたのは加盟店主です。それを加盟店に有利な風が吹いているからと言って一挙に加盟店が有利になる立場を得ようとするのはあまり賛同できません。
 本部が契約の説明の際に、都合のいいことばかりを言い加盟店希望者をたぶらかしたかもしれませんが、加盟店主はその説明に納得した責任から逃れらないと思います。ユニオン結成はその責任に頬かむりするように感じてしまいます。やはり自分の納得力についても反省する気持ちは持つべきです。
 先週の東京12チャンネルの「ルビコンの決断」という番組に青色発光ダイオードの発明者である中村氏が出演していました。中村氏については以前このコラムで書いたことがありますので詳しくはそちらを読んでいただくとして、僕が会社側を支持する理由は発明時の中村氏の身分が会社員であったからです。
 中村氏が行った実験は確かに苦難でありそれを乗り越えての発明は賞賛されて然るべきですが、その間の生活力はやはり会社員という身分に負う部分が大きかったはずです。そもそもこの実験を会社員という身分でなく自分ひとりでリスクを負う立場で行っていたならこのような紛争は起きなかったものです。
 番組に解説者として出演していた池上氏が中村氏と対立する立場の意見を紹介していました。
「リスクだけは会社に負わせておいて成功したときだけ儲けをよこせ、と言うのは理に合わない」
 この番組は全体的に中村氏を賞賛する内容でしたが、この池上氏の発言によって番組全体のバランスがとれていた感じがしました。
 中村氏が会社と対立した要点に「特許を譲渡したかどうか」があったそうです。その点については譲渡契約書に中村氏がサイン捺印をしていることで会社の全面勝利に終わったそうですが、僕の想像では当時は一社員が発明した特許が会社の所有になるのは極一般的な慣習だったと思います。それは中村氏のサインが鉛筆でなされていたことでもわかります。時代がそのような風潮だったのです。つまり当時は一社員が発明したものは会社のものとなることになんの違和感も持たなかった時代です。中村氏は当時、それで納得していたはずです。
 それから時代は流れ社会の共通認識も変わった後年に当時の出来事を蒸し返すのはやはり無理があるように思います。当時の自分の納得力に対する責任を放棄していることになります。中村氏の裁判のあと味の素や東芝などの元社員が同様な裁判を起こしていましたが、僕はそのような気持ちで報道を眺めていました。
 生活していますといろいろな場面で契約書にサイン捺印をすることがあります。サイン捺印をすることはその説明に納得したことを表します。そしてその責任は当人も負うべきものです。自分が損失を被りたくないなら納得力を磨きましょう。
 投票も納得のいく一票を…。
 ところで…。
 先日、自動車保険の満期案内が届きました。保険というものは一般の人にはとても複雑でわかりにくいものです。僕は前職で保険販売をしていましたのでそれなりに納得力があるという自負がありますが、それでもここ1~2年で保険も様変わりしており納得するのに時間がかかりました。保険に関わった経験のない人はさらにわからないのではないでしょうか。しかし、サインをし捺印をすることは納得したことを証明することです。面倒でも頑張って納得力を磨いてほしいと思います。
 先週、小さい扱いでしたが、変額年金保険のトラブルが多発しているという記事がありました。保険に限らず金融関係のトラブルはとても多いのが実状です。金融関係の契約をする際は、僕が以前に紹介した「金融広告を読め」(吉村佳生:著)を読んでからサイン捺印をしましょう。これを読んでいたならトラブルも減ることでしょう。
 そうは言いましても、やはり知らないことを勉強するのは面倒なものです。そこでお願いしたいのは売る側の人たちに対してです。売る側の人たちは是非説明力を磨いてほしいものです。説得力ではなく説明力です。そしてその前提になるのは売る側の方々の良心です。売る側にとって都合の悪い情報も提供してほしい、ということです。それなくして説明力の向上は望めません。金融関係のトラブルはこれらの欠如によるケースがほとんどではないでしょうか。是非とも改善されることを望みます。
 最後に、納得力を磨くのは根気が要りますが、粘り強くあきらめないことが大切です。この粘り強い根気を「納豆力」と言います。…たぶん。
 じゃ、また。




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