<支援>

pressココロ上




 今回の震災が阪神淡路大震災と大きく違う点は、被害地が広範なことです。そのことが原因で一般生活に影響を及ぼすことがありました。それは生活に必要な様々な品物が売り場から消えたことでした。
 ニュース番組でもスーパーやコンビニなどで棚に商品が陳列されていない映像が流れていました。実際、僕もパン売り場に全く商品が並んでいない光景を見て驚いた記憶があります。大きな被害をもたらした阪神淡路大震災でも商品が並ばなかったことはありましたが、それはあくまでも被害地に限られた現象でした。そして、その原因は震災により物流機能が停止したことです。ですから、物流機能の工夫や回復により商品の品薄状況は改善されました。
 しかし、今回は被害地以外の、例えば東京などでもスーパーやコンビニの売り場から食料品が消えました。僕もその現場を目にしたわけですが、その理由は実に単純なことで、そしてとても悲しいことで「みんなが買占め」をしたからです。都会人の買占めは被害に遭った方々をさらに悪い状況にさせました。仙台に居住する作家の伊集院静氏はメディアで「都会人の横暴さ」をしきりに批判していましたが、尤もな憤りだと思います。あれだけ公共広告で連帯や思いやりを訴えていたにも関わらず、そしてその主張に賛同していたにも関わらず、実際にはそれと正反対の行動をとっていた都会人に「支援する資格はない」とさえいえるかもしれません。
 売り場から商品が消えたのは「買占め」が主な原因ですが、生産がストップし供給量が細ったのも事実です。被害地が広範でそこにはいろいろな業種の様々な商品の工場がありましたから供給力が落ちて当然でした。ですが、先ほども書きましたように生産拠点の変更など工夫次第では対処できる範囲の供給量の減少だったはずです。
 このようにメーカーの供給量が逼迫している状況で、メーカーに納品をお願いする小売業の側としては、その力量が表面化します。経済誌ではその力量を伝えていました。
 既に経済誌で報道されていますので実名でも構わないと思いますが、売り場に商品が平常どおりに並ぶのが最も遅かったのは西友だったそうです。それ以外のスーパーなどでは幹部が直接メーカーに足を運び、納品をお願いしていたそうで、そうした対応の差が商品の陳列状態に影響を与えたようです。記事の締めくくりには、「結局は、普段からの付き合い方がいざというときに効力を発揮する」と書いてありました。
 僕の個人的なイメージとしては、西友は「価格で勝負」を標榜していますから、メーカーには常に厳しい態度で接していて、それゆえに「いざというときに対応してもらえなかったのでは」と思っています。実際のところはどうなのでしょう…。先週は西友が新聞に大きな広告を出しましたが、僕のような偏屈おじさんからしますと、震災時でのマイナスイメージを払拭したい意図が感じられてよい印象は感じませんでした。
 震災のような大きな負の作用が社会に働きますと、普段はあまり表に出てこないことが表面化し、報道されるものです。小売業に関していうなら、先ほどのメーカーとの接し方もそうですが、そのほかに興味深く読んだのがコンビニ本部の加盟店への対応の記事でした。
 コンビニ本部で僕が一番好きな経営者はローソンの新浪 剛史さんですが、そのローソンは加盟店オーナーに手厚い支援をしていました。記事によりますと、オーナーさんに100万円前後の一時金も支払っているようですし、住まいをなくされたオーナーさんには住居まで提供していました。
 実は、ローソンの新浪さんが一番好きなのですが、それほど差がなくファミマの上田準二社長も好きです。上田さんも加盟店の立場で会社の方針を考えているように見えますし、それを具体的に行動しているからです。新浪さんと上田さんの順位の差は若さと風貌と言っては上田さんに失礼でしょうか…。そのファミマもやはり、ローソン同様に被災した加盟店オーナーさんたちに様々な支援策を提供していました。
 このように書きますと、セブンだけが支援に消極的なイメージを与えますが、実際、記事を読む限りそのような印象を持ちます。もし、記事の内容が本当なら今後はセブンからローソンやファミマに変更する加盟店は多くなるのではないでしょうか。しかし、現段階ではセブンとローソンやファミマなどほかのチェーンとは1日の売上げに大きな差があるのも事実です。それぞれの本部の特徴を調べることが大切です。
 それにしても、コンビニ本部の加盟店への対応の変化には驚かされました。実は、今回の記事を読むまで本部が加盟店に手厚い支援をしていることを知りませんでした。僕は自サイトの「考察コーナー」でコンビニについて書いていますが、その頃と比べると隔世の感があります。
 昔は、「加盟店になることは一事業主になること」と、本部はできるだけリスクを負わずに加盟店に押しつけるのが本部の考えと言っても過言ではない時期もありました。しかし、最近の本部は違うようで、今回の震災被害においても先ほどの金銭的支援のほかに被災した在庫商品に関しても本部が全て負担するようです。本当に、昔でしたら考えられない対応です。しかも、今回の記事で僕が一番驚いたのはファミマでは最低保証制度というシステムがあることでした。あまり褒めすぎるとファミマの回し者と勘繰られるのでこのくらいでやめますが、昔と比べるなら「加盟店のリスクが減少している」のは明らかなように感じました。そうは言いましても、本部に全く問題がないことでもありません。今でも、本部の対応に納得できない加盟店のオーナーさんもいるはずです。コンビニ加盟店を考えている方は売上げや加盟店へのサポート体制などよ~く調べてから本部を決めましょう。
 今週は、ちょっとコンビニ本部の肩を持ちすぎた書き方かったかもしれません。どうもすみま支援。
 ところで…。
 パンが陳列棚から消えていたとき、僕はお店を探し回ってまでパンを買うことに抵抗を感じていました。「別にパンを食べなくとも死にはしない」と考えていましたし、基本的に、列に並んでまでモノを買うことが嫌いな性格もありますが…。
 そんな僕ですので、パンが「ない」のなら「作ればよい」と考えました。元々、我が家には親類からもらったパン焼き器があり、数年前までは毎朝パン焼き器で作った食パンを食べていました。しかし、次第に妻がパン焼き器で作ることを面倒に感じ始めたこととコスト的にパンを買ったほうが安く済むことで作らなくなっていました。しかし、作った実績もありますし、パンを作ることには全く問題はありませんでした。
 小麦粉にはいろいろな種類がありますが、パンを作るのに適しているのは強力粉です。…というわけで、スーパーに強力粉を買いに行きました。ところが、
「なんと!小麦粉までがない!」
 そうなのです。考えることは「みな同じ」のようで、みんながパンを作ることを考えた結果、肝心の強力粉が品切れになっていました。強力粉の隣に陳列してある薄力粉は並んでいました。
 仕方なく、「パン作り」もあきらめ日々をすごしていましたが、ある日、初めて入った小さなスーパーで嬉しい光景が目に飛び込んできました。
 従業員の方が強力粉を「品出し」していたのです。僕は早速近寄り従業員の方に尋ねました。
「これ、2つ買ってもいいですか?」
 従業員の方の話では、強力粉の品薄状態は少しずつ解消されてきたそうで、なんの問題もなく2つ買うことができました。
 僕は喜んで帰宅し、妻に報告すると、妻も素直に喜び翌朝の朝食はパン焼き器で作ったパンを食べることに決定しました。
 そして、翌朝。目が覚め、テーブルの前に座りますと、白いご飯が出てきました。僕は不審に思い妻に尋ねました。
「ねぇ、パン焼き器で作ったパンは?」
 妻は台所の床においてあるパン焼き器を指差しながら答えました。
「これね、中が錆びてて使えなかった…」
 あれからもうすぐ3ヶ月、我が家には使い道の定まらない、そして今後も定まりそうもない強力粉が2袋も置いてあります。
 じゃ、また。




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