<アレルギー>

pressココロ上




 2月の終わりごろから咳に悩まされていました。僕は生まれつき喘息気味のところがあります。風邪などをひきますと決まって咳が出るようになり、熱や鼻水などが治まったあとも咳だけがいつまでも止まらないのがいつものパターンでした。その僕の咳き込むようすを「結核のような咳」と表現した人もいるくらいで、傍から見ていても苦しそうな咳でした。
 それでも、これまでは1ヶ月もすれば必ず咳も治っていました。そのような過程をこれまで幾度も経験していますから、今回も咳が長引いていましたが「そのうち治る」と考えていました。ところが、今回は様相が違いました。1ヶ月以上経っても咳が止まらないのです。「止まらない」どころか益々ひどくなっていきました。
 3月の上旬と言いますと、ちょうどお店を畳む準備に忙しくしていたときです。やることが多くて中々病院に行くことも間々ならない生活でした。そして、とうとう病院に行かなければ日常生活に支障をきたすほどの病状になってきました。
 皆さんは「咳の治療」をする場合「なに科」の医院を考えるでしょう。僕は、咳の出始めが風邪でしたので、なんの疑問もなく内科の病院に行きました。その内科の先生も、当然のごとく咳が出るようになったきっかけなどを質問し、上半身に聴診器を当て「はい、息を吸ってぇ、吐いてぇ」などと言い、薬を処方してくれました。ここまでは、ごく普通の流れです。
 しかし、1週間薬を飲み続けても咳の症状は快方に向かいませんでした。決して悪化したわけではないのですが、「快方した」とも言えない状況が続いていました。そんな状況の最中、晩御飯を食べているときに、娘が画期的なことを教えてくれました。
「私は咳が止まらないときに耳鼻咽喉科に行った」
「なるほど!」
 よく考えてみますと、確かに理に適っています。咳は喉の炎症ですから、耳鼻咽喉科を受診するのが道理でした。僕は早速、次の休みの日に耳鼻咽喉科に行くことにしました。耳鼻咽喉科に変更した理由には次のような事情もありました。
 僕が行った内科がとても混雑していたからです。ちょうど風邪が流行っていたようで待合室は子供連れの親で満杯でした。その日、僕は保険証を出してから自分の順番になるのに2時間を要したのです。この出来事が耳鼻咽喉科に行くことを決断させた理由のひとつです。
 しかし、「咳の治療」ですぐに「耳鼻咽喉科」が思い浮かばなかった僕としましては、耳鼻咽喉科に行くことに、「場違い」の気持ちがないでもありませんでした。ですから、心の底では不安な気持ちがありましたが、耳鼻咽喉科の先生は内科の先生と同様に、当然のように喉を見てから当たり前のように処方箋を書いてくれました。耳鼻咽喉科を受診したのは正しい選択のようでした。
 それから1週間、耳鼻咽喉科で処方された薬を飲みましたが、正直な感想としては「一進一退」でした。結局、その後も毎週耳鼻咽喉科に通うことになり、幾つかの種類の薬を変えたり元に戻したりとお医者さんも薬を処方しながら試しているように感じました。そのようにして1ヶ月が過ぎましたが、僕の印象では「これ以上改善できる薬はない」といった雰囲気が先生の言動から感じられました。
 昔から「薬は段々と効かなくなる」と言われています。薬を続けることによってその薬に対して身体が反応しなくなるのです。これでは薬を飲んでいる意味がなくなります。そうしますと自ずと、「薬を強くする必要」に迫られます。考えようによっては麻薬と同じです。僕は薬が効かなくなることを不安に思い始めました。そして先生から感じられる「これ以上、症状を改善できる薬はない」という雰囲気は僕を不安にさせました。
 また、それと同じくらいに僕が心配したのは「咳が慢性化」することでした。咳が慢性化してはいよいよ本当の喘息になってしまいます。
 その頃、僕の咳はピークを迎えていました。夜の3時ごろになりますと、必ず咳で目が覚めるのです。これは辛かったです。この症状は、初めのうちは週に2~3回くらいの頻度でしたが、そのうちにほぼ毎日になってしまいました。毎日、夜中の3時に目が覚め、咳が出続けるのは本当に辛いものがあります。
 喘息の経験がある人はわかると思いますが、咳が止まらなくなると呼吸が苦しくなります。呼吸が苦しいというのは、呼吸ができないことを意味します。この状態は本当に恐怖でして、呼吸ができないのですから息ができないことにつながり、このまま死んでしまうのではないか、とさえ思うようになってきます。僕は毎日、新聞配達のオートバイの音を聞き、それからガラス窓の外が明るくなっていくのを不安になりながら見ていました。
 このような苦しい症状でもなんとか持ちこたえていられたのは、咳が出るのが深夜だけだったからです。理由は分かりませんが、昼間は苦しくなるほどの咳が出ることはありませんでした。ですから、夜の9時10時くらいに転寝でもいいですから睡眠をとれていたことが救いでした。それがなかったなら睡眠不足で倒れていたでしょう。
 そんな日々を過ごしていたわけですが、ある日外を歩いているときにたまたま病院の看板が目に留まりました。そこにはこう書かれていました。
 内科 呼吸器科 放射線科…。
 「呼吸器科」。僕にはこの名称がとても新鮮で不思議に見えました。それまで見たことがなかったからです。看板のある程度古ぼけた感じからすると以前からあったのかもしれませんが、僕は「呼吸器科」という「科」があることを全く知りませんでした。もちろん、考えたこともありません。
「咳が止まらないんだから、一番相応しいのは呼吸器科だよなぁ」
 その日、僕は早速家に帰り自宅近所の呼吸器科を調べました。やはり病院数は少ないもののちゃんと家の近くにも「呼吸器科」はありました。しかも、僕が何度も通っている道にありました。それまで、自分が気がつかなかったのが不思議でなりませんでした。
 結局、呼吸器科に行ったのが功を奏して現在は目に見えて改善に向かっています。なにより一番うれしいのは夜中に目が覚めなくなったことです。人間は睡眠時間が取れないことほど辛いことはありません。
 呼吸器科ではいろいろな検査を実施し、僕の咳の原因を突き止めました。当初、先生は僕を脅すような言葉を発しました。レントゲンを撮ったあとに写真の肺の下のあたりを指差しながら「白い影が気になりますのでCTスキャンを撮りましょう」と言いました。そして、「癌」という言葉さえ使いました。結局、大事には至らなかったのですが、「癌」という言葉には驚きました。
 結論を言いますと、僕の咳の原因は「スギに対するアレルギー」ということでした。つまりは花粉症と同じです。普通の花粉症は鼻水や目から涙が出ますが、僕の場合は咳が出るのが症状でした。それも毎日薬を服用することで少しずつ改善しています。ホント、大事に至らなくてよかった、よかった…。
 皆さんも、咳が止まらなかったら呼吸器科へ…。
 ところで…。
 お医者さんのお話では、アレルギーとは「過剰に起こる免疫反応」だそうです。僕の場合はスギの花粉に身体が過剰に反応することによって起こる咳ということになります。普通、免疫は身体を守るために必要な反応のはずですが、過剰になると反対に身体に害を及ぼす結果になります。
 先週は、野党が内閣不信任案を提出しましたが、僕の感想を一言で言うなら「情けない」に尽きます。なぜ今の時期に不信任案を提出しなければならないのでしょう。まだ、震災の傷跡が癒えるどころか、原発などの問題もあり難問が山積している状況です。そのようなときに不信任案を出す政治家の方々の心理が理解できません。
 僕は、別に菅首相の支持者ではありませんが、自民党や公明党が声高に叫ぶ「菅首相辞めろコール」に憤りを感じています。いったい、菅首相を辞めさせたあと政治をどのようにするつもりなのでしょう。そうした青写真がないまま「辞めろコール」を叫ぶのは、僕からすると単なる「菅アレルギー」にしか映りません。僕は、政治家の方々が良識をわきまえた行動をすることを願っています。
 じゃ、また。




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