<平成24年もおわりです>

pressココロ上




 先週の最後に「来週は、第三者委員会での体験をお伝えする」と予告しましたが、よく考えましたら今週で今年も終わりなのでした。僕は年末年始も普段どおりの仕事ですので、ついそのことを忘れていました。ですので、「第三者委員会の体験」はまた後日お伝えすることにして、今週は今年最後のコラムということで書き連ねたいと思います。
 今年もいろいろなことがありましたが、一年を終えるにあたって新聞の見出しを見ていますといろいろな思いがよぎってきます。
 最初に思いがよぎってきたのは29日土曜の朝刊の見出しを見たときでした。
「 東証、大納会で今年最高値 」 
 この見出しと同じ文言をかつて見たことがあります。確か、1989年の大納会だったと思いますが、そのときに同じ文言が踊っていました。当時はバブルがずっと永遠に続くかに思われていたときでしたが、年が明けますと株価は徐々に下がりだし、ついには1991年にバブル崩壊に至ることになりました。あとから振り返りますと、本当は1989年の大納会が頂点だったことになります。
 僕は土曜日の朝刊を見てすぐに当時のことが思い起こされたのでした。現在、株価が上昇していますが、冷静になって考えてみますと株価が上がる確たる根拠が全くありません。ただ自民党が圧勝して、その過程で安倍さんがインフレターゲットだとか日銀に国債を買わせるだとか、これから実行するかもしれない政策を口にしただけです。ただそれだけで円安に振れて株価が上昇したにすぎません。本当は、株価が上昇する根拠はなにもないはずです。
 株の世界は面白い側面があり、マーケットは株価が上がるきっかけを「いつも」探しています。隙あらば株価上昇の根拠にしようと虎視眈々と狙っています。実際、そのきっかけはなんでもよく誰かがきっかけに反応してくれれば儲けものと考えているようです。…というわけで、僕は年が明けたあと一気に株価が下がることを心配しています。
 株価はともかくとして僕が不安に感じるのは安倍首相が日本経済を安易に早急に活性化する方策をとろうとすることです。やっとのことで政権を奪取した勢いのままに焦って勇み足で経済策をとることを心配しています。しかし、新内閣の顔ぶれを見て安心しました。
 それは経済を担当する閣僚に麻生氏と甘利氏が就いていたからです。安倍首相は選挙を意識して、経済対策アドバルーンを揚げただけにすぎないようです。この二人の顔ぶれを見て前回を教訓としている安倍首相の進化を感じた次第です。
 次は新聞ではなくネットでの記事ですが、Yafooのトピックスではカレーチェーンの最大手であるCoCo一番の好業績を伝えていました。
 実はCoCo一番はフランチャイズチェーン(以下 FC)です。僕のコラムの常連の読者はご存知でしょうが、僕はFCに批判的です。しかし、CoCo一番は例外です。
 今年の春先のある日、僕は妻と一緒に車で10分ほど走った商店街にあるマクドナルドでお茶をしていました。妻と話をしながら外を見ていますと、狭い通りを挟んだ向かいにCoCo一番のチェーン店があるのを見つけました。
 なにげにCoCo一番を見ていますと、たまたま原材料の納品業者が来ました。業者は台車にコンテナを数段積み上げ、それを押しながら入り口まで来ました。普通、納品業者が納品をする際はお客様が利用する出入り口からではなく裏口などを利用します。しかし、裏口がない場合は仕方ありませんのでお客様と同じ出入り口から納品することになります。その店は裏口がない店舗のようでした。
 その業者は出入り口の近くにコンテナを止め自分だけ店舗の中に入って行きました。僕は「中から空箱を持ってきて、それから商品の入ったコンテナを中に持っていくのだろう」と想像しました。しかし、業者の人は手ぶらで出てくるとコンテナの前で待機しているようでした。
 しばらくすると、店長らしき人が空き箱らしきコンテナを台車に載せて出てきました。そして、空箱のコンテナと商品の入っているコンテナを交換しました。それから笑顔でなにかしら言葉を交わしていました。
 僕はこの光景にCoCo一番の好業績の要因が凝縮されていると思って見ていました。CoCo一番は納品業者を見下していないのです。普通、業者が納品する場合は業者がコンテナなどの移動をするものです。お店側がわざわざ空箱を外まで運ぶことはしません。あくまでもそれは納品業者の仕事です。しかし、CoCo一番では違っていました。
 自分が購入する側という強い立場であるにも関わらず謙虚に接している姿に感銘しました。その姿勢がCoCo一番という企業の姿勢でもあるように感じていました。
 普通、FCは加盟店を募集することで利益を上げます。加盟を希望する人から加盟金とか保証金とか、または指導料とかロイヤリティという名目で金銭を徴収します。それらが本部の収益となるシステムがFCです。しかし、CoCo一番の加盟店は部外者がなるのではなく社員がなるのが一般的なシステムです。しかも開業する際に必要となる資金も融資してくれます。僕はこのようなシステムこそが本当の意味でのFCのメリットを活かすシステムだと思っています。
 会社は従業員を独立させることで人件費や福利厚生費などの費用の負担を避けることができます。また、従業員にしてみましても一般的な独立よりも有利な条件で独立できることになります。記事によりますと、約5年くらいの期間を経て独立するそうですから店を運用する勉強もしていることになります。企業と従業員の両方にとって理想的なシステムといえます。
 このようにCoCo一番は理想的なFCの運用で好業績を上げていますが、それと正反対に業績悪化が伝えられているのがマクドナルド(以下マック)です。
 僕は以前から今の原田社長の経営方法に疑問を感じていました。しかし、マスコミでは原田氏の経営方法を賞賛する記事のほうが多く、僕は不思議でなりませんでした。ある経済誌などは原田氏を講師とする誌上セミナーまで開いていたほどです。また自らの経営方法を開示する本まで出版しています。今現在も本屋に行きますと目立つところに並んでいます。しかし、業績は芳しくないのが実体です。
 以前も書きましたが、原田氏の経営方法は飲食業そのものに関することではなく、業態を変化させることで数字をいじっているように僕には感じられます。具体的には、直営店方式からFC方式への変換です。僕に言わせるならこの変化は、単にリスクを加盟店に押し付けて本部が利益を捻出していることにすぎません。これは飲食業の経営ではありません。僕は常々そのように思っていましたから、今回マックの真の姿が表面化したことを歓迎しています。やはり経営者は企業の本当の姿で評価されるべきです。
 ではいよいよ今年最後に取り上げるニュースですが、それは大津市のいじめ事件に関するニュースです。
 この事件は大津市の中学生がいじめを苦に自殺をした事件ですが、その後の調査により「自殺の練習までさせられていた」ことが判明しました。大津市の市長までが談話を発表するという事態に発展しましたから記憶に残っている方も多いでしょう。
 この事件は週刊誌などでも取り上げられ、いじめた側の首謀者3人の動向まで記事になりました。結局、首謀者3人は起訴されることが決定したことが新聞で伝えられていました。
 その決定を受けて自殺した子どもの父親のコメントが新聞に書いてありました。
「いじめのことを知った当初はいじめていた3人を憎んでいたが、今では憎しみは弱くなっている」
 僕はこの「憎しみは弱くなっている」という言葉に救われた思いがしました。この言葉こそが、人間が持っている本当の姿を表しているように思います。本来、人間は憎しみを持続することができない生き物なのです。
 人間には感情がありますから憎しみを抱くこともあります。ですが、神様はその憎しみという感情を徐々に弱めていく遺伝子を人間にお与えになったのではないでしょうか。僕はそんな気がします。
 因みに、僕のいう神様とは宗教的な意味合いではなく、「お天とうさま」のような存在を指しています。
 憎しみをいつまでも持続していていいことはなにもありません。今でも地球上ではいろいろなところで紛争や戦争で人の命が失われています。その原因は元を辿れば「憎しみ」に行き着くように思えてなりません。
 不完全な生き物である人間にとって簡単ではありませんが、憎しみという感情がなくなるように生きていきたいものです。
 最後に、今年もご愛読くださいましてありがとうございました。特にRSSやブックマークでお読みいただいている方たちにはとても感謝しております。そうした方々のおかげでこのコラムも続いているようなものです。本当にありがとうございます。
 では、来年もよろしくお願いいたします。
 よいお年をお迎えください。




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