<Windows10 騒動記>

pressココロ上




 先週の木曜日の夜9時半頃、それからほぼ丸一日の間、僕を焦らせることが起こりました。自分でも不思議なのですが、ちょっと「魔が差した」という行動がすべての原因です。
 僕は基本的に一日の流れを変えることを好みません。ものの本によりますとアスペルガー症候群の範疇に入るのかもしれませんが、だいたいやることは同じです。日中に出かけて帰宅してからは晩御飯を食べるまでパソコンに向かうのがいつものパターンです。
 そのときにすることは最初はメールチェックからはじまり、一通りそれが終わるとネットで調べものなどをします。そして、晩御飯を食べ終わると新聞を45分から1時間ほど読み、それからお風呂に入り、そしてまた寝るまでの時間パソコンをいじっています。
 先週の木曜日にこの最後のパソコンに向かったときに焦らせること起きました。パソコンをスリープ状態から復帰させますと、画面にいつもと違うダイアログボックスが表示されたのです。内容は「Windows10」の導入を勧めるものでした。
 それまでにもタスクバーにWindows10を勧める「ふきだし」は出ていましたが、画面の中央に大きく表示されたのは初めてでした。しかも、文章がそれまでの「ふきだし」に書いてあった内容と違っていたのです。そこには単に勧める文章だけではなく「今すぐダウンロードする」と「あとでダウンロードする」を二者択一するボタンが配置されていました。
 やはりいつもと違う展開ですので一瞬考えます。もちろんまだWindows10を導入するつもりはありませんでした。もう少し世の中の様子を見てからのほうが安心だという思いがあったからです。きちんと調べたわけではありませんが、ネットバンキングの中にはセキュリティの問題からWindows10を勧めていないという情報を読んだこともあります。
 ですから、僕は「あとでダウンロードする」をクリックしました。これが間違いの元でした。このあと僕は翌日午後11時まで焦ることになるのですが、あとから調べますとMicrosoftのほうでミスがあったようです。
 僕が少し躊躇しながら「あとでダウンロードする」をクリックしますと、なんとダウンロードがはじまってしまったのです。「えっ」。もちろん僕は驚きました。「あとで…」をクリックしたのに…。
 どんなソフトでもそうですが、ダウンロードやインストールが行われている画面には作業を中断するための「キャンセル」のボタンあるのが普通です。もちろん今回の場合もダウンロードが行われる画面に「キャンセル」のボタンがありました。しかし、「魔が差した」というか、なんとなく「キャンセル」ボタンを押す気分にならなかったのです。自分でもそのときの気持ちが思い出せないのですが、心のどこかで「ちょっと導入してみようかな」という気持ちがあったように思います。
 先に書きましたように、まだWindows10の対応に関して安全安心を確約していないネットバンキングがあるという噂を耳にしていました。ですが、「導入してみようかな」と魔が差したときは、そのことをすっかり忘れていたのです。単に「新しいものを試してみたい」という気持ちがあっただけでした。
 ダウンロードの作業にどれくらいの時間がかかったのでしょう。ほんの一昨日ですが、記憶が定かではありません。う~ん、20分前後かなぁ…。
 時間はともかく、画面にダウンロードが完了した表示がなされました。そして、次に書いてあったのは「インストールする」の文字です。そこにも「すぐに」と「あとで」の選択がありました。そして「あとで」は時間を選べるようになっていました。
 その時点で僕が思ったのはとりあえず「すぐに」は避けたほうがいいということでした。このときはまだ頭の中にネットバンキングの対応などのことは頭に浮かんできてはいません。単になんとなく「すぐに」はしないほうがいいだろうという判断でした。ですから「あとで」の時刻を翌日の午後11時に設定しました。
 この設定時刻からもわかるように、僕はインストールすることのリスクについて認識がありませんでした。導入を受け入れているのがわかります。
 ここまで進めたところで、いつもの就寝の時間になりましたのでパソコンの電源を切りました。そして寝るときに考えたのは翌日のインストール作業の準備についてのしっかりとした準備をすることでした。なにしろ、時刻設定画面にはこうも書かれていたからです。
 この時間を変更することはできません。
 さて、翌日の日中は用事があり夕方に妻とスーパーに出かけました。その日、僕が必ずしなければいけないことはWindows10の参考書を購入することでした。インストールしたあとにやり方がわからないのではシャットダウンすることさえできないことになってしまいます。
 僕はすぐに本屋さんに向かいました。ここの本屋さんは日ごろから通っているところですのでパソコンの参考書が置いてあるコーナーもわかります。本屋さんでパソコン関連の本を探すときは実用書のコーナーと雑誌のコーナーの両方を見るのがコツです。
 今回はとりあえず今日の夜の11時からはじまるインストールのあとに使うことが目的ですのでそれほど詳しい参考書は必要ありません。夜の11時ですからすぐに寝る時間がきてしまい、時間もそれほどないでしょうから簡単な設定だけをするつもりでいました。僕はできるだけ安い簡単な参考書を探すつもりでいました。
 売り場に行きますと、Windows10関連の数種類の雑誌がありました。どれにしようか迷っていますと、インストールしたあとの使い方ではなく「アップグレードする際の移行の方法」についても解説している雑誌がありました。よく考えてみますと、「使い方」だけではなくインストールする前の準備や移行の段取りなども大切です。そこでその雑誌にざっと目を通してみました。
 そして、それを読んでいるうちにとても大切なことを思い出したのです。それはWindows10を導入することのリスクです。先に書きましたようにネットバンキングの使い勝手もそうですが、それ以外にもソフトが動かなかったり周辺機器が対応していなかったりなどいろいろなリスクがあります。僕がWindows10の導入を控えていたのはまさにこの点でした。しかし、ついついそのことについて忘れていたのです。そして、すぐに頭に浮かんだのがウィルスソフトのことでした。
 僕のウィルスソフトはWindows10に対応しておらず、対応するにはWindows10をインストールするより前に先に対応版をインストールしておく必要があるのでした。そうした通知が幾度かきていたことを思い出しました。
 また、最悪のことに備えての解説していました。重要なファイルはバックアップしておく必要性も書いてありました。僕は以前「XP」から「7」にアップグレードしたときも同じような対応をしていたはずです。ですが、今回僕はそれらを全く忘れていました。
 僕はその雑誌を読んだことをきっかけに急に焦る気持ちが強くなったのを実感しました。そうなんです。午後11時にはインストールが始まってしまうのですから…。
 僕は妻をせかしてすぐに帰宅することにしました。
 パソコンに向かって最初にやることはとにかくウィルスソフトを購入することです。メーカーサイトに行き、すぐに購入手続きをしました。ところがここで問題が起きます。普段ですと、クレジットカードを登録していますのでなんの問題もなく手続きが完了するのですが、久しぶりにそのサイトで買い物をしますのでカード番号の有効期限が切れていることを指摘しました。ここでちょっと手間取り時間がかかってしまいますと、余計に焦ってしまいます。
 手続きが完了したあとにサイトからダウンロードを試みるのですが、なぜからうまくいかないのです。インストールの時間まで残り2時間少々でした。焦れば焦るほどうまくいかないのは人の世の常です。シリアル番号を打ち直したりなどやり直しを幾度か繰り返したあとようやっと対応版のインストールに成功することができました。
 次にやることは大切なファイル類のバックアップを取っておくことです。もし外付けHDDなどがありますと、バックアップも簡単ですが、そんなしゃれたものは持っていません。唯一僕が持っているある程度の容量がある外部メディアといいますとUSBメモリです。容量を調べますと4Gでした。僕が必要最低限バックアップを取っておかなければいけないファイルを調べますと、3G程度でした。一応一安心でした。
 すぐにバックアップ作業に取り掛かったのですが、これが意外と時間がかかる作業で20分以上必要であることがわかりました。…僕の焦る気持ちがわかるでしょうか。
 ようやっとの思いで最低限のバックアップ作業を終えたときに、モニター画面に僕をさらに焦らせるようなダイアログボックスが現れました。
 インストールが始まるまであと1時間です。
 まるで僕を脅迫するかのようなこの文面…。僕は固まりました。まだやらなければいけないことがあります。必要最低限のファイルのバックアップを取ったとはいえ、まだバックアップしなければいけないファイルや対策、対応があります。間に合わない…。正直な感想です。
 ダイアログボックスに怯んだ僕ですが、ダイアログボックスの下の方にある文字が目に入ってきました。そこにはこう書かれていました。
 まだ準備ができていません。
 試しに僕がその文章にカーソル合わせてみますと、クリックできることがわかりました。クリックできることはわかりましたが、元々はといいますと最初に現れたダイアログボックスのボタンをクリックしたのがはじまりです。やはり躊躇します。また変なことがはじまったらどうしよう…。
 しかし、ここまできましたら一か八かです。僕は「まだ準備ができていません」をクリックしました。すると次のような文章が出ました。
 Windows10アップグレードはWindows Update に移動します。
 Windows Update というシステムについては知っていますが、実のところこの文章の正確な意味がよくは理解できていませんでした。理解しようという余裕もありませんでしたので残り時間は40分ほどでした。僕は残りの時間をすべて費やしてバックアップ作業を続けていました。
 しかし、残り10分を切ったところで作業をすべてやめました。理由は作業の途中でWindows10のインストール作業が始まることを心配したからです。僕は11時を静かに待ちました。もし途中でトラブルが起きたらどうしよう…。ネットバンキングが利用できなくなったらどうしよう…。HPの更新ができなくなったらどうしよう…。
 考え出したらキリがありません。不安な気持ちのままいよいよ11時になりました。パソコン画面を見つめていましたが、一向にインストールが始まりません。1分が過ぎ2分が過ぎ5分が過ぎたところで安心しました。
 たぶん「まだ準備ができていません」をクリックしたことが功を奏したのでしょう。インストールのスケジュールは中止になったことを確信しました。
 …ふう…。
 あとからいろいろと調べてみますと、今回の騒動はMicrosoft側でなにかしらの手違いがあったらしく、僕以外にも同じようなダイアログボックスが表示された人がいたようです。僕はことなきを得ましたが、中には意に沿わずにWindows10をインストールした人もいたのではないでしょうか。
 まだ大きな問題にはなっていませんが、今後賠償問題なんかも起きるんじゃないかな、って想像している僕です。だって、僕、今回のことでウィルスソフトの購入で1,680円と雑誌代972円の出費が発生したんですよ!
 いやぁ、それにしても11時を迎えるときは
「緊張したな、もう!」(三波 伸介ふうに)
 じゃ、また。




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