<政治家のパフォーマンス>

pressココロ上




 先週の政界は高市総務相の放送業界に対する高圧的な発言や丸川環境相の被ばく線量に関する無責任な発言や、そして島尻北方大臣が「歯舞を読めなかった」問題など、マスコミが注目したくなるような出来事がありました。この中で前の2つはまだ「ありそうな」発言で僕の中では許容範囲ですが、さすがに担当大臣ともあろう人が「歯舞」を読めないのはとても悲しく情けない気持ちになりました。いくら政治を動かしているのは官僚だとしても、あまりにもお粗末すぎる失態で政治家としての資質を問われても仕方のない出来事でした。
 安倍首相が女性閣僚を任命したのは女性が活躍する社会を目指していることのパフォーマンスだと思います。ですが、その女性自身が勉強を疎かにしているのでは女性が活躍するために必要な前提が崩れることになってしまいます。
 実は、島尻氏に対しては元外務省の官僚で現在は作家として活躍している佐藤優氏が強烈に批判をしています。あまりにも強烈過ぎるのですが、島尻氏の経歴をみますとあながち批判が的外れでもないことが伺えます。どちらにしましても、閣僚に任命されたからには政治家としてしっかりと勉強をして国家のためになる活動をしてくれることを望みます。
 今までにも言われてきたことですが、政治家はパフォーマンスが大切です。民衆に訴えることがとても重要だからです。あのヒットラーさえパフォーマンスが下手だったならあれほどの権力を持ち悪行を行うことはできなかったでしょう。大衆を動かすにはパフォーマンスは大切な要因です。
 パフォーマンスを辞書で調べますと、「演劇や音楽などを上演すること」とか「身体を媒介とした芸術表現」とか「性能。機能」などと書いてありますが、政治家に当てはまる意味は「人目を引くためにする行為」でしょう。政治家はある意味芸能人と似ている部分があります。それは「人目を引かなければいけない」仕事であることです。いくら高邁な政治信条を持ちそれを訴えたところで多くの人に認知してもらわなければなんの意味もありません。
 ですから政治家になる人は多かれ少なかれパフォーマンスの才能に長けていることは必須条件です。先に紹介した女性閣僚の方々ももちろんパフォーマンス力が秀でている方たちです。しかし、政治家に大切なのはパフォーマンス力とともにそれを裏打ちできるだけの実力です。パフォーマンス力だけでは政治家としての使命を果たすことはできません。仮に、一時はパフォーマンス力で注目を集めたとしても、ときを経ずに必ず化けの皮が剥がれることになります。
 それを体現したのが先週議員辞職を表明した宮崎謙介衆議院議員です。宮崎議員は育児休暇を取得することを表明したことで世間から注目されました。「これからの社会は男性も育児に参加することが大切」ということでの主張でしたが、不倫騒動から辞職に至った経緯はまさにパフォーマンスが剥がれたことになります。
 実は、僕は男性が育児休暇を取ることに賛成ではありません。なぜなら、今の日本で男性が育児休暇を取れるのは恵まれた環境で働いている一握りの恵まれた人たちだけだからです。宮崎議員にしても育児休暇が取得できるのは公務員だからです。つまり、倒産がない仕事に就いている人しか育児休暇はとれるはずがないからです。…不公平です。
 普通に考えて、民間企業で育児休暇を取得できるほど余裕がある企業は、大企業やほんのわずかな優良な中小企業だけです。それ以外の民間企業はどこも必死に人員をやりくりして企業活動を行っているはずです。ですから、国会議員がやるべきことは自らが育児休暇を取得することではなく、普通の平均的な民間企業の従業員が育児休暇を取得できるような労働環境を整備することです。それなのに恵まれた環境にいる国会議員が率先して育児休暇を取得するのでは本末転倒です。
 それにしても育児休暇の取得についてうんぬんできるのはまだ恵まれた民間企業といえます。先週のガイヤの夜明けではブラック企業について伝えていました。ある引越し企業に勤める従業員が会社と戦う様子を報じていました。
 僕はブラック企業は世の中に存在するべきではないと考えていますが、ブラック企業の概念がほかの人とは少し違うかもしれません。僕は自分自身が自営業者でこれまでにラーメン店などを営み従業員を雇用してきましたが、その中で正社員の人には無理をお願いしたこともあります。いい訳になってしまいますが、小さな店が営業活動をするにはやはりある程度の無理は避けて通れないのが現実です。ですが、賃金を支払わないなどというのは言語道断です。つまりサービス残業のことですが、僕は貯金を崩してでもサービス残業をさせなかったことことを自負としています。
 それに対して最近の企業は安易にサービス残業を強制しすぎているように感じます。僕からしますと、サービス残業に対する罪悪感を全く持っていないように思います。経営者の中には企業の利益を優先するあまりサービス残業を当然視している人もいるようですが、それは間違っています。もしサービス残業をしないなら倒産してしまうならそのような企業は倒産するべきです。社会に存在する資格がありません。
 ガイヤの夜明けではドンキ・ホーテもブラック企業として取り上げていました。以前からドンキ・ホーテはブラック企業という噂は流れていましたが、ようやっと表面化したように思います。実は、ガイヤの夜明けではこれまでにドンキ・ホーテを成長著しい企業として取り上げていました。ですが、僕はずっと違和感を持っていました。僕にはブラック企業としか映っていなかったからです。
 数年前にドンキでは店舗火災で従業員が亡くなるという事故がありました。そのときに創業者が記者会見を開いて涙を流しながら犯人に対する怒りと亡くなった従業員に対する哀悼の言葉を発していましたが、僕にはあの涙が空々しいパフォーマンスしか見えませんでした。
 残念ながらブラック企業は世の中に少なからず存在しています。そのような社会で一般の労働者が不利益を被らないためにできる唯一の効果的な方法はそのような企業で働かないことです。働く人がいなくなればそのブラック企業は存在が不可能になるからです。牛丼チェーンのすき家が店舗封鎖に追い込まれたのは、働く人がいなくなったからです。
 しかし、実際問題として一般の人が応募の段階でブラック企業を見抜くのは容易ではありません。なぜなら、実際に働くまで労働環境の実態がわからないからです。先の引越し業者のケースでも応募の段階ではブラックとはいえない労働環境を示されていたそうです。
 このような就職環境の中で大きな意味を持ってくるのが就職を斡旋する業界です。その中で公共的なのはハローワークですが、そのハローワークがようやっとブラック企業に対する厳しい対応をするようになるそうです。
 実は、ハローワークは採用活動をする企業を断ることができないそうです。つまり、ブラック企業も堂々とハローワークで採用活動をしてきたことになります。しかし、普通の人の感覚では公共的なハローワークで募集している企業は優良企業というイメージを抱くものです。しかし、実際は正反対だったのですが、それをようやっと改善するようです。これで少しはブラック企業に応募することが少なくなるのではないかと期待しています。
 宮崎議員は単なるパフォーマンス人間ということがわかったわけですが、その反対に奥様である金子恵美氏の素晴らしさが世間に知られたように思います。宮崎議員は奥様に「やり直したいなら、恥をかいてきなさい」と叱咤されたそうですが、この言葉にはパフォーマンスのかけらも感じられず、覚悟だけが伝わってきます。金子議員は単なる美人すぎる議員ではなかったことを証明したことになります。
 このように先週の政界には話題に事欠かないことがたくさんありましたが、政治と両輪である経済の面では大変なことが起きています。日銀がマイナス金利を発表したにも関わらず株価が下がり為替は円高になりました。もし、政界で大きな話題がなかったなら株価の下落はもっと大きく報じられていたかもしれません。その意味でいいますと、政界の問題は経済のショックを和らげる効果があったといえるかもしれません。
 結局、先週株を上げたのは金子恵美氏だけだったことになります。
 じゃ、また。




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