<コンビニエンスストア>

pressココロ上




 時が過ぎるのは本当に早いもので暑い夏も終わり9月になってしまいました。読者のみなさんはどのような夏を過ごしたのでしょう。
 …なんてありきたりな「書き出し」から始まりましたが、外のお天気がどんよりしていて、なんとなくそんな書き出しで始めたくなった現在の心境です。
 さて、今週の週刊ダイヤモンドはコンビニの特集です。僕が週刊ダイヤモンドという経済誌に興味を持った発端はまさに15年くらい前の週刊ダイヤモンドのコンビニ特集でした。そんな経緯がありますので今週の表紙に書いてある「コンビニ特集」の文字には感慨深いものを感じました。
 以来ほぼ毎週ダイヤモンドを読んでおり、それで気がついたのですが、ダイヤモンドは年に1回くらいの頻度でコンビニを特集しています。年間を通して取り上げる記事のスケジュールパターンがあるのかもしれませんが、それでも役に立つ記事となっています。
 最初に興味を持ったコンビニ特集の記事は加盟店オーナーの覆面座談会でした。「覆面をする」くらいですから本部に対する批判が主な内容でした。僕の年賦を遡りますとちょうどその頃はラーメン店を廃業して体験談をネット上で公開しはじめた頃です。そうした関係で当時のコンビニの現役オーナーさんとメールのやり取りなどもしていました。
 ですからテキスト「脱サラ・独立・FC考察」ではコンビニに多くのページを割いています。僕のスタンスはFCに批判的ですから、もちろんコンビニ本部の問題点を幾つか指摘しています。
 つい最近、牛丼チェーン「すき屋」の労働環境問題がマスコミを賑わせましたが、コンビニの一番の問題点はまさにこの点にあります。
 「すき屋」は店舗閉鎖がネット上で騒がれ始めた当初は「人手不足が理由」を否定していました。しかし、最後は隠しきれなくなり、第三者委員会を設置してその内容を公表する事態にまで追い込まれてしまいました。
 こうした一連の流れを見ていますと、ネットという通信手段の社会における効用性について考えさせられます。もし、こうした通信手段がなかったなら「すき屋」の問題もうやむやで終わっていた可能性があります。その意味で通信手段の進歩は社会にとって有益であるのは間違いのないところです。
 それはさておきコンビニがチェーン展開をするうえでFCというシステムを採用しているのはFCでなければ成り立たないからです。反対にいいますと、そこにFCの問題点があります。直営店方式ですと「すき屋」と同じような結果になるはずです。働く人が集まらず営業することができなくなることです。このことはつまり、オーナーさんに問題点を押しつけることでお店の運営を成り立たせていることを示しています。
 僕の持論ですが、「本当に儲かる方法を見つけたなら、他人になどやらさずに自分でやる」の市場経済の鉄則です。チェーン本部は「コンビニ経営の儲かるノウハウを提供する」のが「売り」ですから、鉄則から外れたことをやっていることになります。
 先週はこのことと関連する記事がありました。それは会社員が発明した特許の所有権に関する記事です。今後は社員が発明した特許の所有権はすべて会社のものになるようです。
 以前、コラムで青色発光ダイオードの特許問題について書いたことがありますが、僕は会社に属している人が発明した特許は会社に所有権があることを支持する考えです。
 理由は、至極単純で独立した環境で発明したわけではないからです。本当に特許の所有権を求めるのなら会社員という立場でなく独立すべきです。そうでないなら、大きなリスクを犯して独立をして挑戦しているベンチャー起業家たちに失礼です。
 会社員という立場で開発に挑戦できることの恩恵を会社員という立場ではわからないかもしれません。「わかっていて」も肌で感じることはできないはずです。ちょっとした些細な事務的なことでさえ独立している立場または環境では負担になります。そうしたことをすべて会社におんぶに抱っこしてもらっている状態で発明したのですから、その特許は会社に属するのは当然です。
 開発ですから、ときには失敗することもあります。そのときに失敗した損失分を負担するのは会社です。会社員の立場では失敗しても経済的負担はしなくて済みます。この違いはとてつもなく大きなものです。
 話をコンビニに戻しますと、コンビニはオーナーさんを独立自営業者という立場にすることで成り立たせています。僕はオーナーさんが独立自営業者の立場になることには異論がありません。僕が問題視するのは「実態が独立自営業者でないこと」です。例えば、営業時間や休店日の自由がオーナーさんにありません。このような契約内容で、どうして独立自営業者といえるでしょう。マクドナルドの「名ばかり店長」と同じ「名ばかりオーナー」です。
 つまり、本部は自分たちにとって都合のいいように独立自営業者という看板を利用していることになります。僕はそこに反感を覚えます。
 先週は、安倍首相の内閣改造がありましたが、それに関連して経済財政諮問会議の民間議員の発表もありました。その中に元ローソンの会長であり次のサントリーHDの社長に決まっている新浪氏の名前もありました。新浪氏に関してはローソン時代に印象に残っていることがあります。
 新浪氏はローソンの親会社である三菱商事から天下ってきたエリート社員ですが、ローソンの社長に就任早々、コンビニ業界にとって画期的なことを発表しました。それは24時間営業の見直しです。新浪氏は「オーナーたちの意見を踏まえて、営業時間の変更を検討する」と発表しました。このときにセブンイレブンの鈴木会長は「コンビニはお客様がいなくても夜中でも開店していることに意義がある」と一蹴しています。現在の状況を見る限り鈴木氏の主張のほうが正しかったようです。
 しかし、しかし、それを成り立たせているのはFCの核心である「オーナーは独立自営業者」という立場であることです。果たして、これで正しい経営手法といえるのでしょうか。僕には疑問です。
 コンビニオーナーの中にも本部に対して異議申し立てをして裁判を起こしている人もいます。民主党が政権を取っていたとき、チェーン本部に反旗を翻している人たちに注目が集まったことがありました。それは小沢氏がこうした人たちの集会に出席したからですが、僕はそのときにFCシステムに関するひとつの転換点になることを期待しました。しかし、民主党の衰退とともにFCシステムへの関心も薄れていってしまいました。結局、小沢氏は選挙目当てでしかなかったようです。
 僕はFC本部に加盟して飲食店を開業した経験が2回あります。1回目のときはFCというシステムのことも世の中のこともなにも知らずに開業しました。その経験がありましたので2回目のときは「加盟店の自由度が高い」というか「ほとんどない」本部を選びました。しかし、残念なことにその本部には「本部を維持するノウハウ」すらもなく倒産してしまいました。
 今の時代は個人がどこの組織にも加盟せずに小売業を営業するのは不可能です。仕入れの部分で大きく不利な状況になりますので100%不可能です。このような状況の中、加盟店の立場に立って支援する組織が成長することを願っています。残念ながら、現在のところは大手のチェーンが先行しているのが実情です。僕が期待した新浪氏にしても結局はFCのシステムを変えることはできませんでした。
 しかし、いろいろな問題を指摘されながらもコンビニが社会に登場して40年以上が過ぎています。この点に関してだけいうなら、コンビニは企業として社会から認められていることになります。企業30年節に照らすなら優良企業のレッテルが貼られるのに十分な資格があることになります。
 実際、なんだかんだ言ってもセブンなりローソンなりファミマで加盟して続けている加盟店主がいるのも事実です。僕が年賀状をやり取りしている人にはコンビニを営んでいる人がふたりいます。そしてどちらも20年近く継続しており、ひとりは30才を越えた息子さんが親とは別の店舗を開業しています。また、あとひとりも今年の年賀状では、「まだまだ頑張ります」と書いてありました。
 こうしたふたりを見ていますと、一概に問題点ばかりではないようにも思えてきます。確かに、コンビニを解約する簡単ではありません。数百万円の違約金支払いができずに仕方なく続けている人もいるでしょう。
 僕は長所短所の両方を身近で知ることができるだけに、どちらが実態なのか判断に迷うところです。でも、常識的に考えて時給が高くなる夜中にアルバイト2人分の人件費を捻出できているとは思えないですよねぇ…。
 じゃ、また。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする