<漫画家マインドコントロール>

pressココロ上




このコラムは、noteというサイトにも投稿しているのですが、そのサイトは一般の人・素人が自分の思いを世の中に発信できるサイトです。だれでも投稿できるところが一番の魅力ですが、「一般の人・素人」というところに意義があります。雑誌や書籍などいわゆる出版社が発行する媒体ですと、そこに載せるだけの「意味がある」「価値がある」と媒体側に判断される必要がありますが、noteはそんなことを気にする必要はありません。ですので、そうした媒体のフィルターがかかっていない記事を読むことができます。

とは言いつつも、まったくフィルターがかかっていないわけではありません。noteには1日に4万くらいの投稿があるそうですが、その中から僕の好みに合いそうな記事をnoteが選別してくれています。そうしたフィルターはありますが、それでも出版社というある程度レベルを高く保つフィルターはありませんので、一般の雑誌、書籍とは一味違った記事を読むことができます。

僕は1日に1回はnoteを訪問していますが、noteさんが僕に勧めてくれる記事の中で「面白そう」と感じた投稿者さんをフォローしています。noteには、フォローした方が投稿したときに教えてくれる機能があるからですが、先日、その数が100人を超えていることに気がつきました。自分でも驚いたのですが、フォローする人が少しずつ増えていき、いつの間にかそこまでの数になったようです。

noteには「フォロー」のほかに「スキ」といった投稿者を評価・応援するボタンもあるのですが、中にはそれらを返してもらうことを目論んでボタンを押す人がいます。僕はそういう行為が好きではありませんので、「お返し」を期待していそうな雰囲気のある人にはどちらのボタンも押しません。そんな考えでいる僕の「フォロー」数が100を超えていたのは驚きでした。

言うまでもありませんが、noteの記事を読むのにもそれなりの時間を要します。1日中なにもすることがなければいくらでも記事を読むこともできますが、生きていますとほかにもやらなければいけないことがたくさんあります。ですので、noteを読むのはおおよそ30分~1時間と決めています。

しかし、100人を超えるフォローの記事を30分~1時間程度ですべてを読むことはできません。ですので、どこかでフォローをする人数を抑制する意識が働くはずです。それにもかかわらずフォローをしている方が100人を超えていたのは、フォローしている方の投稿する頻度が減っていくからです。最初は毎日投稿していた人が1ヶ月に1度になり、1ヶ月に1度だった人が数か月に1度になったりします。そうしたことがあって、フォロー数100人以上を可能にしていたようです。

先日、そうした投稿者の一人が久しぶりに投稿をしていました。佐藤秀峰さんという「海猿」や「ブラックジャックによろしく」という人気作品を描いている漫画家さんです。超有名な方ですので、知らない人がいないというくらいの方でしょうが、僕が佐藤さんを知ったのはこのnoteでの投稿でした。僕は漫画をあまり読みませんので、「海猿」や「ブラックジャックによろしく」も知りませんでした。

僕が佐藤さんに興味を持ったのは、出版業界の「闇、暗部」と言っては大げさかもしれませんが、業界の問題点をnoteに暴露していたからです。もしかしたなら、出版業界にも文芸誌とか雑誌とかいろいろな部門がありますので、出版業界と一括りにするの違っているのかもしれませんが、それはともかく佐藤さんは出版業界を批判していました。ちなみに現在は、佐藤さん自身が不利な立場に置かれている漫画家の方たちをサポートする仕事をしているようです。

その佐藤さんが久々に投稿をしていました。理由は、先日訃報が伝えられました芦原妃名子さんについて物議を醸していたからです。ご存じの方も多いでしょうが、芦原さんは「セクシー田中さん」という作品を描いている漫画家さんです。そして、騒動になっているのは、テレビドラマ化された際の「テレビ側の対応に不手際があった」と報じられているからです。

芦原さんは原作者という立場ですが、映像化されたドラマに納得できない旨をX(旧ツイッター)に投稿したことで炎上した模様です。納得できないことをX(旧ツイッター)に公開してから数日後にお亡くなりになっています。誰もが違和感を覚えるのは当然です。以前、SNSでの誹謗中傷を苦にして自ら命を絶った女子プロレスラーがいましたが、彼女はまだ20代の若者でした。誹謗中傷で心が傷つけられるのは若い人だけだと思っていましたので、大人の年齢の芦原さんがお亡くなりになったのは驚きでした。SNSの恐ろしさを思い知らされました。

佐藤秀峰さんは「海猿」がドラマ化・映画化されたときの自らの苦い体験を投稿していましたが、感情的に書いているわけではなく、実際に体験したことを淡々と綴っている印象です。しかし、それが真実かどうかはわかりません。あくまで漫画家の側だけの意見・考えで、テレビ側からしますと、景色が異なって見える可能性もあります。

そのように思っていた先日、ドラマのプロデューサーだった方が今回の問題について考えを述べている記事を目にしました。詳細は省きますが、漫画を原作とする作品のドラマ化に際しての原作者とプロデューサー(ドラマの責任者)の両方の考えを読みますと、一番の問題点は原作者とプロデューサーが直接会っていないことのように思いました。そうなりますと気になりますのは、両者の橋渡しをしていた人物です。

それは、出版社でした。佐藤さんの記事と元プロデューサーさんの記事(https://president.jp/articles/-/78338)で共通しているのは、原作者とプロデューサーが直接会って考え・思いをすり合わせていないことです。ここからは想像ですが、出版社は自分たちが利益を最大に出すことを考えて、原作者とプロデューサーの両方に話をしていた可能性があります。

偶然ですが、僕は先月「勝ち組の論理」というタイトルで漫画家さんについてコラムを書きました。漫画家として成功をするのは一握りの人たちだけですが、だからこそ成功した人たちには「あとに続く若い人たちのために業界を改善する役割を担ってほしい」と書きました。今回のケースでは、漫画家を取り巻く状況が旧態依然としてまだ改善されていないことが露わになりました。

「勝ち組の論理」とは出版社の論理にほかなりません。なぜなら、「勝者だけを優遇する」ことは出版社にとって最も有利なシステムだからです。敗者を見捨てることは、企業にとっては最も安易なコストカットになります。なにも手当てをしないで切り捨てることができるからです。こうした状況をそのままにしておいては、立場が弱い漫画家はいつまで経っても不利な状況のままに置かれてしまいます。

かつて、プロ野球界は球団側の力が圧倒的に強く、選手は球団に言われるがままに従うしかありませんでした。そうした状況を改善したのは選手会という選手たちからなる組織が強く粘り強く働きかけたからです。フリーエージェント制も年俸調停システムもそうした努力が実った結果です。もし、そうしたことがなければ、プロ野球はサッカーにもっと差をつけられていたでしょう。

今回の芦原さんの問題に関して、日本漫画家協会の理事長を務める里中満智子さんがインタビューに答えていました。正直な感想としては、どこか他人事のように思っている感じを受けました。もっと漫画家の立場が強くなるように協会を挙げて対応する心構えを期待したいです。漫画家の卵の人はもちろんですが、名前の知れた漫画家の方でも漫画の世界に没頭していたのですから、世の中を知らないまま社会人になっているように思います。

佐藤秀峰さんの記事から想像しますと、今回の芦原さんの件も芦原さんとテレビ側の間に入った出版社に一番の責任があるように思えて仕方ありません。出版社に都合のいいように、両者を橋渡しした結果が今回の「芦原さん問題」の大きな要因のように思います。

僕が気がつかないだけかもしれませんが、出版社関係の方が誰も意見・考えを公表していないのが気になります。世の中をあまり知らない漫画家をマインドコントロールして利益を得ようとするのは正しい経営のやり方ではありません。

じゃ、また。




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