<対立>

pressココロ上




連日、ウクライナの戦況が報じられていますが、僕は知人がいるわけでも、なにかしらの関係があるわけでも全くないのですが、それでもどうしても気になって気になって仕方ありません。なにをしていても、心から楽しめない自分がいます。僕は妻と毎週必ずドライブを兼ねて遠出をしているのですが、目的地はいわゆるショッピングモール的なところになっています。やはり、ただドライブだけではつまらないので妻の好きな買い物、正確には郊外のいろいろなリサイクルショップを巡るドライブです。

リサイクルショップを巡るついでにショッピングモール的なところにも行くのですが、平日といえどもどこも人でにぎわっています。そうした人々が楽しんでいる中にいますと、余計にウクライナの人々の苦難に心が痛んできます。ウクライナの方々もわずか1ヵ月前までは、僕たちと同じように家族で出かけたり友だちと遊びに行ったりして日々の生活を楽しんでいたはずです。それが突然、生活が一変して砲弾が飛び交う事態になったのです。なにも悪いことはしていないのに、です。プーチン大統領の愚行を非難せずにはいられません。

侵攻が始まった当初はすぐにでもウクライナが陥落するような予想でしたが、すでに2週間以上が経っています。それだけウクライナが徹底抗戦し成功していることの証ですが、現在ロシアは総攻撃をしかけるための準備に入っている段階という情報もあります。先週も書きましたが、戦力的にはウクライナとロシアは10倍の差があるそうですから、ロシアが本気で総攻撃をかけたならウクライナはひとたまりもないかもしれません。

またある情報では、英国と米国の特殊部隊がウクライナの大統領をはじめとする幹部が殺害されないように逃す作戦も用意しているそうです。そうなりますと、僕などは逆に不安な考えが浮かんできます。それは兵士たちが戦っている中で、幹部だけが逃げ去っては兵士を置き去り見殺しにすることになってしまうことです。素人的な発想かもしれませんが、それではあまりに理不尽です。

以前、藤原ていさんの「流れる星は生きている」という本を読んだことがありますが、この本には、満州から引き上げてくるときの苦難の様子が書かれています。このとき敗戦に際して関東軍が住民に知らせることもなく、自分たちだけが勝手に撤退したのは有名な話です。幹部たちが逃げるということはこれと同じことになるのではないか、と危惧している次第です。

ニュースを見ていますと、世界の至るところでウクライナを応援する映像が映し出されていますが、そのときに気になるのは「NO WAR」という文字を掲げているデモ行進などの映像です。「戦争 反対」は確かに正しいことですが、「戦争」という言葉にいささかしっくりこないものを感じます。「戦争」という言葉には、あることに対して双方に言い分があり、決着がつかないときに起きてしまう戦力的争いといイメージがありますが、今回の場合はロシアの一方的な悪行で、勝手に隣国の主権を犯しているのですから「侵略」という言葉が適切です。

もしかしたなら専門家の中には過去の歴史とか、ここ数年の出来事も考慮すべきという考えの人もいるかもしれません。しかし、自分の思い通りにならないからと言って、武力を行使するのはやはり犯罪です。「侵攻」「侵略」の理由にはなりません。

と、ウクライナのことを書いてきましたが、今週はあるスーパーとメーカーの対立について書くつもりでした。ウクライナについては冒頭で少し触れる程度の予定だったのですが、書いているうちに長くなってしまいました。いつもいつもウクライナのことが頭から離れませんので何卒お許しください。

さて、あるスーパーとは関東を中心に展開している「オーケー」という会社で、メーカーとは洗剤など家庭用品で有名な「花王」です。「花王」は全国的に知られている超有名な会社ですのでご存じでしょうが、「オーケー」は関東に集中していますので、ご存じない方もいるかもしれません。

「オーケー」については、このコラムで幾度か紹介したことがあるのですが、僕が最初に知ったきっかけは創業者が警備会社セコムの創業者のお兄様だったからです。僕が脱サラをした30年くらい前、起業家としてマスコミに頻繁に出ていた方は幾人かいるのですが、そのうちの一人がセコムの創業者・飯田 亮氏でした。

当時の若手起業家としては、リクルートの江副浩正氏などもいたのですが、飯田氏がマスコミの注目を集めたのは40代半ばで経営者しての第一線を退いたことでした。若くして社長から会長に退いたので記者会見には多くのマスコミが詰めかけたそうです。飯田家ではほかの兄弟も経営者でしたので「飯田四兄弟」などと書かれていましたが、オーケーの創業者である飯田勧氏は三男にあたるそうです。

僕が「オーケー」の存在を知ったのはセコム創業の亮氏がきっかけですが、「オーケー」に興味を持ったのは、家の近所の店舗がお正月の三が日を休業日にしていたことです。普通と言いますか、当時の業界の常識ではお正月は儲かる期間ですので元旦から営業するのが一般的でした。そんな中、「オーケー」は堂々とお正月三が日を休業日にしていたのです。以来、「オーケー」に注目するようになっていきました。

注意深く見ていますと、「オーケー」はほかのスーパーよりも時給が高く設定されていることも驚きでした。しかもお店の従業員の雰囲気を見ていますと、どちらかと言いますとお客様よりも従業員のほうを大切に考えているように感じられました。これはあくまで感覚のことですので、正確には計れないのですが、そんな印象を受けています。

その「オーケー」が今回「花王」の商品値上げに納得できずに「販売を中止する」と報じられたのでした。実は、「オーケー」がこのような対応をするのは今回が初めてではありません。当時マスコミで報じられたのかはわかりませんが、数年前「オーケー」はキリンビールに対しても同様の対応をしています。僕がそれを知ったのは売り場の貼り紙でした。そこには「メーカーとの値段交渉が折り合わず、一時販売を休止する」旨が書かれていました。

凄い!でしょ。実はそれ以外にも森永のチョコボールでも同じような貼り紙が貼られているのを見たことがあります。実は、僕はチョコボールのピーナッツが大好きなのですが、そのスーパーの価格の目安にチョコボールを使っています。ですので、チョコボールの販売を見合わせる勇気には感動さえしたことを覚えています。

ところがですね。実は、「オーケー」のこうした対応が「いい」か「悪い」かは別物なのです。小売業とメーカーの対立は昔から言われていましたが、かつて小売業は「メーカーの言いなり」が普通でした。価格の決定権はメーカーが持っていました。こうした関係は、つまりは「メーカーのほうが小売業よりも偉い」という発想からきていたのですが、そうした慣習に異を唱えたのがダイエーの中内功氏でした。

有名な話ですが、一時期、ダイエーではパナソニック(当時はナショナル)の商品を置いていませんでした。理由は、価格決定権で対立したからです。中内氏は小売業の立場を高めることに尽力していたのです。僕がスーパーに入社した頃はちょうど、スーパーが最も伸びている時代でメーカーに対抗すべく規模をどんどん大きくしていた時代です。

この話を書くと長くなってしまいますので、今週はここらで止めますが、小売業・スーパーの力がどんどん強くなったことで今度はメーカーの存続に影響が出はじめるようにもなりました。少しだけ触れますと、スーパーがプライベートブランドを開発したことでメーカーはスーパーの下請けのような状況になっていったのです。まさにメーカー冬の時代に突入したのでした。

構造的に小売業とメーカーは対立する立場になっていますが、だからと言って武力を使うことは決してありません。もし仮に、武力を使って無理やりに相手の業界に進出するなら消費者は武力を使った方を非難し、その業者は廃業に追い込まれるでしょう。同じように、武力で自らの領土を広げようとするロシアの侵略は決して許されてはいけないのです。

じゃ、また。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする