<商はフィルターなり>

pressココロ上




 連日、耐震基準を満たしていないマンションが建設されていたことが報道されています。この問題は奥が深いようで設計士、建築主、審査機関などいろいろな企業が責任を押しつけあっています。どこに責任があるかが焦点になっていますが、その視点は実際に住んでいる方々の立場からでなければなりません。特に分譲マンションに住んでいる方々にとっては切実な問題です。
 妻から聞いた近所の主婦のお話です。
 近くのスーパーで198円の特売ポップが表示されている冷凍品を買ったところレジでは通常の498円で購入したことになっていました。店員さんに尋ねたところ特売の棚に本来の特売用商品とは違うものが並べられていることがわかりました。そのときの店側の対応は「498円と198円の差額を返金する」というものでした。スーパーという小売業界では視点を消費者の立場に置かなければ勝ち残れない、という証拠です。この例は表示と違う商品を並べたことが原因ですが、仮にメーカーのミスによって作られた瑕疵のある商品を販売した場合でもスーパーはお客様に返金をするでしょう。過去にそのような例はたくさんあります。
 翻って今回の違法建築されたマンションも同様のはずです。購入した方々に責任を負うのは販売した会社でなければなりません。そして販売会社が建築主や設計士もしくは審査機関に責任があると考えるなら当事者間で争うのが本来のあるべき姿です。
 そんなことを思いながら新聞を読んでいましたら「銀行が最高益」という見出しがありました。内容を読みますと投資商品の販売手数料が最高益に貢献しているようです。ここで注意しなければならないのは「投資」という部分です。また「手数料」という部分も気になります。
 「投資」ということはリスクがあるということです。つまり預金利息のように必ず増えるのではなく損をする可能性もあるということです。
 私は自分のHPで生命保険の項目を設けています。これは自分が今までに一番損をしたと思うことがあるからです。十数年前、私は生保の女性営業員の方の訪問を受け保険の見直しを勧められました。当時は生保に関心もなく知識もありませんでした。営業員の説明を漠然と聞き、勧められるままに見直しをしました。しかし数年後その見直しが自分にとって損であったことを知りました。そのときの落胆は大きなものでした。「損をしたこと」と「営業員に対する信頼感」に対してです。簡単に言いますと、私は「転換」という方法で保険の見直しをしたのですが、これは保険会社のための方法でしかなかったのです。もし読者の方で今現在「転換」を勧められている方がいましたらよく検討することが必要です。「転換」という方法で見直すことは契約者の約80%の方にとって損をすることにつながります。
 銀行は投資商品の販売手数料によって最高益を上げているわけですが、購入者はリスクについて本当に理解しているか疑問に感じます。私が「転換」によって生保を見直したときと同じような気持ちで購入していても不思議ではないからです。
 将来、投資商品のリスクに注目が集まったとき銀行はどのように対処するのでしょう。銀行が「自分たちは販売しただけで責任は運用会社にある」などと言わないことを願うばかりです。
 かつて士農工商と最下位に置かれていた「商」ですが、成熟した現在の社会では「商」の果たす役割はとても大きなものとなっています。そのような中で消費者に安全で安心できるモノやサービスを選別する「フィルター」という役割があるはずです。このフィルターという役割を放棄するなら「商」の存在価値はなくなると言ってもよいでしょう。間違っても消費者に不利益を与えるわかっていながら販売することがあってはいけません。
 商人は悪いことをやっては「アキンド」。
 じゃ、また。




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