<逮捕>

pressココロ上




 妻が新聞のプレゼントコーナーで無料のチケットをゲットしましたので早速観てきました。題名は、妻が大好きなキムタクが主演している「ヒーロー」です。さすがに平日昼間の観客は主婦と年配の方々が多く、僕のような中年男はあまりいなかったのが少し恥ずかしくもありました。
 映画の「感想は」と言いますと、「まぁまぁ及第点」といったところでしょうか。あるラジオのパーソナリティは「ボロクソ」に批評していましたが、そこまではひどい映画ではなかった、と思います。でも、まさか最後の最後にキムタクと松たか子がキスするとは思いませんでしたが…。本当に唇と唇がくっついていたんですから…。ああいう演技のときって本番前に歯を磨くのかなぁ…。
 お店での休憩時間はお昼ごはんを食べながらラジオを聴くのが常です。先日、番組の中で興味深い特集をやっていました。
「なにも悪いことをしていないのに、交番の前を通るときドキドキするのはなぜか?」
 アンケートによりますと、かなりの割合の人が「ドキドキ」するそうです。「ドキドキ」は大げさな表現ですが「ちょっと緊張する」といった感じです。番組内での大学教授の解説では、「人間の自然な反応で、潜在的防衛反応」が働くのだそうです。やはり「警察は恐い」という潜在意識が一般の人にはあるようです。その理由は「個人の自由を束縛できる」唯一の機関だからです。もし、その権力を過って使われたら…。先週、そのような恐い想像をさせる冤罪に関するテレビ報道が2つありました。
 1つは深夜にやっていたドキュメント番組です。鹿児島県志布志市の選挙違反をめぐる冤罪事件です。番組の題名はズバリ!「でっちあげ」でした。「冤罪」という表現より激しい批判を込めた「でっちあげ」。その題名が全く大げさでないほどの真相でした。普通は「火のないところに煙は立たない」ものですが、警察と言う権力を使うなら「火のないところに煙を立たせる」ことが可能であることを証明していました。
 番組では再現ドラマを織り交ぜながら放映していましたが、ドラマの中での取り調べの様子を見ていますと、一般の人では「警察の描いたシナリオ」を否認することはほとんど無理でしょう。ときに「怒鳴り」、ときに「机を叩き」、ときに「嘘の情報を漏らし」、ときに「人格を侮蔑する言葉を投げつけ」て相手を追いつめていくさまは強い憤りを感じるものでした。このような取り調べが行われるなら「冤罪はなくならない」と思わざるを得ません。
 あと1つは富山県で起きた冤罪事件です。この事件については前にも書きましたが、先週「無罪が確定」しました。この男性は服役まで終えてからの冤罪確定ですから怒りが収まるはずがありません。この男性の場合、たまたま真犯人が捕まったから証明できた冤罪事件です。もし、この「たまたま」がなかったなら一生を棒に振った人生を歩まざるを得ない状況でした。それにも関わらず警察に対する処分があまりに軽いのには閉口するどころか開いた口が塞がりません。
 この男性は、取り調べ当初は否認していましたが、先ほどの例同様執拗な取り調べに「投げやり」になり「自白」してしまったそうです。やはり余程のツワモノでない限り警察の描いたシナリオを否認することは不可能です。
 その理由として取り調べにおける「密室性」が指摘されていますが、それとともに判断を過ったときの警察・検察に対する処分の軽さがあるのではないでしょうか。
 もし、「ある人」が容疑者として逮捕されたなら、「ある人」はその時点で世間から白い目で見られ真っ当な社会生活が送れなくなります。簡単に言いますと社会から抹殺されるに等しい人生を送ることになります。それに対して誤認逮捕をしても警察官が社会から抹殺されることはありません。もし、警察が判断を過ったとき容疑者同様に社会から抹殺されるほど重い処分を受けるなら逮捕にも慎重になるのではないでしょうか。警察は権力を持っていますから容疑者と警察は対等ではありません。ただでさえ強い警察ですから「それくらいはしてもよい」と思うのは一般の人の感覚であるように思います。
 数週間前、やはり深夜にアメリカでの冤罪事件を放映していました。
 ある有名人が殺人容疑者として逮捕された事件でした。結局、裁判では無罪が確定したのですが、裁判のその後について担当した弁護士が語っていました。
 その弁護士は各地を講演などで回ることが多いそうですが、講演のあと親睦会のような集まりがあるそうです。そうした場所では参加者が気楽に会話をするのですが、その際に「あの殺人事件の弁護士」ということがわかると周りの人は必ず尋ねるそうです。
「ところで、あの容疑者は本当にやってないの?」
 いくら裁判で無罪を獲得しようが、「一度疑われた事実は簡単には消えない」ことを弁護士は憂慮していました。
 このように「逮捕」という事実は一生を左右するほど重いものです。今後、警察が権力も持つにふさわしい組織に変わることを願っています。
 数ヶ月前、周防正行監督が痴漢冤罪を取り上げた映画が公開されていましたが、一般の人は「逮捕」という非現実的な世界に遭遇することはほとんどありません。しかし、絶対遭遇しないと決まっているわけでもありません。警察、裁判など司法全体の制度にも関心を持つことが大切である、と痛感した事件でした。
 映画の中のキムタクは人間味あふれる正義感の強い検事を好演していましたが、妻はそのキムタクを夢中で見つめていました。そんな妻ですので、妻がいつも持っている手帳の終わりのページにはキムタクの写真が貼ってあります。しかも顔のアップの写真です。そのことに気がついたのは、たまたま僕の机の上に妻の手帳が置いてあったからです。そこで僕はあるアイディアが浮かびました。
 確か、机のどこかにキムタクの写真と同じくらいの大きさの僕の証明写真があったよな…。
 あれ以来、僕の証明写真はずっと妻と一緒に行動をともにしています。
 じゃ、また。

紙.gif4コマ漫画
ジャーック!




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