<憲法記念日なので…>

pressココロ上




 先月の半ばに元首相の鳩山由紀夫氏がTBSラジオに出演していました。ジャーナリストの小西克哉氏がインタビューを行っていましたが、興味深い話が幾つかありました。またテレビではTBSのサンデーモーニングで元政治家の田中秀征氏が橋本龍太郎首相について語っていました。お二人の話がちょうど憲法記念日に関係にある内容でしたので、今週はおふたりのお話を絡めて書こうかなと思います。
 
 僕は基本的に鳩山元首相に批判的ですが、その一番の理由は沖縄普天間の米軍基地に関して無責任な発言をしたからです。現在でも沖縄と政府の間に信頼関係がなく、対立が深まったままですが、そのはじまりは鳩山氏が「最低でも県外」と発言したことにあると思っています。この発言が心の中でなんとか折り合いをつけていた沖縄の人たちの気持ちのタガをはずしてしまいました。
 僕の知っている知識では、鳩山氏が「最低でも県外」発言をするまで、政府と沖縄の間でなんども話し合いが行われ、ようやっと普天間から辺野古への移転に決まったはずです。もちろん簡単に決まったわけではなくそれこそ紆余曲折の中での決定でした。
 沖縄について調べていきますと、米軍基地については県民の間でも意見が割れているようです。大まかにわけますと、米軍基地の恩恵を受けている人とそうでない人です。これは当然といえば当然です。しかし、ただひとつ意見が一致していることがあります。それは米軍と県民の関係を「平等にしてほしい」ということです。95年に起きた米兵による少女暴行事件の抗議集会を覚えている人は多いでしょう。
 そうした複雑な状況の中で、なんとかたどり着いた普天間から辺野古への基地移転でした。それを鳩山氏はそれまでの努力を泡に帰するような発言をしたことになります。鳩山氏がいうまでもなく「沖縄に基地が集中している」状態は不公平な状態です。しかし、現実問題としてそれしか方法はないのが実情ではないでしょうか。
 いくら政府がお金を落とそうが、県民の感情問題を抜きにして米軍基地の話を進展させることは不可能です。そうした「沖縄県民の心情を思いやっていたのが橋本龍太郎元首相だった」と田中秀征氏が話していました。僕にとって田中氏のこの発言はちょっと驚きでした。
 実は、僕のそれまでの橋本元首相の印象はパフォーマンスに長けているというものでした。例えば、幹事長時代に選挙で惨敗したときにテレビカメラの前で「ちきしょう!」と悔しがってみせたり、通産大臣だったときに日米通商交渉の場でカメラマンの前で米国の交渉相手に剣道の竹刀を持たせ剣先を自分の咽喉に向けさせたり、などです。ですから、橋本氏に対しては浮ついたイメージがありましたので田中氏の発言はちょっと驚きでした。
 田中氏の発言を聞いてから橋本元首相について思い起こしてみますと、金融の自由化を意味するビッグバンを実行したのも橋本首相でした。実は、当時僕にはとても強い思い出があるのですが、それは郵便局の民営化です。
 郵便局の民営化を成し遂げたのは小泉元首相ですが、そのずっと前に最初に挑んだのは橋本元首相でした。僕は忘れもしません。ビッグバンの掛け声の中で保険の自由化が進められる中で「あれよ、あれよ」という感じで郵便局の自由化も成し遂げられそうになっていきました。当時僕は、郵政族議員の反対はないのかと不思議に思っていたのですが、あと一歩で実現という段階までたどり着きました。結局最終的には土壇場で族議員の大反対に遭い自由化は阻止されましたが、挑戦した橋本元首相に感動した記憶があります。
 そうした橋本元首相の記憶をたどっていきますと、私心のない誠実な政治家だったのではないか、と思うようになりました。ビッグバンもそうですが、それ以外にも戦後の日本が経済発展をしていく中でいろいろなひずみが生じていた問題を解決しようという気概があったように思えます。もっと評価されてしかるべき政治家です。
 ラジオを聴いていましたら、ある政治評論家が「政治家は実現性のある政策を訴える義務がある」と話していました。ポピュリズムで政治を行うことを戒めた言葉ですが、鳩山氏の「最低でも県外」はまさしくポピュリズムの最たる発言です。
 最近の鳩山氏の言動で最も物議を醸したのはロシア訪問とウクライナに関する発言です。鳩山氏の行動について弟である邦夫氏は「宇宙人らしい人間がいよいよ本物の宇宙人になった」とコメントしていましたが、世界から非難されているロシアを擁護する言動はやはり少し奇異に映ります。
 そのことに関して鳩山氏は「マスコミなどで伝えられているロシアの動き、またはウクライナ住民の気持ちが真実かどうかを確かめたかった」と話していました。鳩山氏によりますと、ロシアにも理があるそうでした。
 その発言を聞いて思い出したのですが、ソ連の改革を行ったゴルバチョフ氏が現在のプーチン氏の政策に対して賛同している書籍がありました。ゴルバチョフ氏といいますと、ソ連を解体した政治家としてロシアでは評価されていませんが、西側諸国からしますと冷戦を終結させた人物として高く評価されている政治家です。そのゴルバチョフ氏がプーチン氏のとっている行動を支持していましたので驚きました。
 ゴルバチョフ氏の意見を要約しますと、今回のウクライナの問題の発端は米国が親ロ派政権を倒し西側寄りの政権を支援したことにあるそうです。僕はウクライナ問題に詳しくありませんのでどれが真実かわかりませんが、ゴルバチョフ氏に対しては好感を持っていますのでウクライナ問題に対する見方が少し変わりました。…ということは、鳩山氏の言動も少しくらいの理があるかもしれないと思っています。
 そのほかに鳩山氏がラジオで語っていたのは官僚の強さでした。メディアで盛んに伝えられました、鳩山氏がオバマ大統領に「トラストミー」と話した件について鳩山氏が話していました。鳩山氏の話を聞いていますと、巷間伝えられていた内容とは弱冠ニュアンスがうように思いました。
 そして、鳩山氏はその点こそに現在の日本の政治の問題点があると指摘していました。簡単にいってしまうなら、官僚が事実を首相にさえ伝えず、そして事実とは違うニュアンスをメディアに流すことです。
 先週、日米安全保障協議委員会(通称「2+2」閣僚会合)に関して共同発表が発出されたことが報道されましたが、鳩山氏はこの「2+2」閣僚会合についても話していました。鳩山氏が首相だったときも、日米における防衛に関する内容はすべてこの会議で決められていたそうです。鳩山氏の言葉を借りるなら「首相に報告もせず」です。これはつまり官僚がすべてを仕切っていて決めていることを意味します。鳩山氏はそのことを憂慮していました。
 もし、鳩山氏の発言がすべて事実であるなら日本を動かしているのは政治家ではなく官僚ということになります。そこで思い出したのが、小泉内閣のときに外務大臣に就任した田中真紀子氏に対する官僚の対応でした。完全に大臣を蚊帳の外においていました。また、民主党政権時代に厚生労働大臣に就任した長妻昭氏に対する官僚の対応も同様でした。このときは蚊帳の外というよりも全くの無視という感じでした。
 こうした事実を踏まえて考えるなら、是非とも穏健で戦争を好まない官僚がたくさん輩出されることを願ってやみません。人を殺したり殺されたりする確率が高くなる政策に少しずつ進みそうで心配です。
 徴兵制が実施されそうになったなら、若い皆さん絶対に反対しましょう。
 じゃ、また。




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