<今は昔>

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ゴールデンウィークもとうとう終わってしまいましたが、皆さんはどのようなゴールデンだったのでしょうか。また明日から普通の日常がはじまります。
さて、昨日お風呂から上がり居間に行きましたところ妻が卓球の世界大会を見ていました。僕が見たときはちょうど伊藤美誠選手が中国の劉詩選手と試合を始めるところでしたが、試合がはじまったとのあまりの面白さについ最後まで見てしまいました。
卓球と言いますと、なんとなく暗くマイナーなイメージがあり、テレビには不向きな感じがしていました。ですが、ラリーの速さは見ごたえのある映像になっていました。あの速いボールの行き来は見ている人を興奮させるものがあります。
この試合は卓球の世界大会だそうで、僕が見たのは団体戦の決勝戦でした。団体戦は5試合を戦う中で先に3勝したほうが勝ちになるそうです。伊藤選手は1番手として出てきていましたが、相手の劉詩選手は日本人相手に30戦以上連勝をしている強敵だそうです。その相手になんとフルセットの末に勝利をしたのですが、勝利の瞬間僕は思わず「おお!」と声を上げてしまいました。
結局、最終的には団体戦としては3対1で敗れてしまいましたが、日本の健闘は褒め称えられてよいのではないでしょうか。しかも選手の平均年齢が若いということはこれからの日本卓球界に期待を持てることを意味します。
それにしても卓球がこれほどテレビの映像に向いていると感じたのは驚きです。テレビ局は東京12チャンネルでしたが、主要キー局でないところが今のテレビ界の一面を表しているように思います。主要キー局の方々は卓球の魅力をきちんと理解するまたは感じる感性に欠けていることになるからです。
そのテレビ業界でここ数年言われていることがフジテレビの凋落です。僕が20代30代の頃はフジテレビが絶頂の時期でしたので現在の絶不調が不思議でなりません。フジテレビの絶頂期と言いますとフジサンケイグループの鹿内一族の興亡が思い出されます。これを書きますと長くなりますので飛ばしますが、鹿内一族のお話は若いビジネスマンには興味深く感じること間違いありません。
それはともかく先日もヤフートピックで4月からはじまったフジテレビのドラマがすべて視聴率が一桁であったことが報じられていました。今の時代は昔と比べて視聴率が全体的に低くなっていますが、それを差し引いてもすべてのドラマが一桁というのはやはり注目されます。
僕はフジテレビの現在の状況を最も象徴しているのは林修先生の起用方法だと思っています。林先生とは「いつやるの?今でしょ」で有名な林先生ですが、林先生はフジテレビのほかにはTBSとテレビ朝日にレギュラーを持っています。この3つの局で林先生の魅力を引き出し切れていないのがフジテレビだと感じていました。
最初に林先生の魅力を引き出していたのはテレビ朝日でしたが、TBSも当初は試行錯誤していた時期がありましたが、現在はその時期を脱した感があります。「林先生が驚く初耳学」は当初、このような番組が成り立つのか疑問に感じていましたが、現在は見ごたえのある番組になっています。
今春よりフジテレビもようやく『林修のニッポンドリル』という林先生を前面に押し出した番組をはじめましたが、遅きに失した感は否めません。たぶん今の状況をフジテレビがどんなに頑張っても覆すことはできないのではないでしょうか。そのような流れが固まってしまっていて、時間が過ぎるのを待つしか術はないように思っています。
ちょっと古い話になりますが、かつてビール業界はキリンビールの独壇場でした。1987年にアサヒのスーパードライが発売されるまで首位をダントツで独走していました。それまでアサヒやサッポロなどがどんなに頑張っても追いつけない壁として立ちはだかっていました。
今の若い人には信じられないでしょうが、シェアが60%以上もありましたので「もしかしたら独占禁止法で分割されるかも」などと言われるほど強かったのです。そのキリンビールを追い落としたのがアサヒのスーパードライでした。当時の経営関連の本には必ずスーパードライの成功について書かれていましたが、そのきっかけを作ったのが樋口廣太郎氏でした。樋口氏は住友銀行の副頭取から天下ってきた方ですが、負け根性が沁みついていた企業を立ち直らせたことでも有名になりました。樋口氏はアサヒビールの中興の祖と言われています。
少し寄り道をしますと、樋口氏がアサヒビールで成功したことは「ビジネスマンの人生」という意味でも注目を集めました。銀行というところは出世競争が激しいのですが、その中でも最大手の一つである住友銀行での出世競争の激しさは半端ではありません。副頭取から取引先の企業に天下るということは出世競争に負けたことを意味します。しかも、当時アサヒビールは赤字に苦しんでいましたので、決して優良企業とは言えない企業でした。その企業に天下って復活させたのですからビジネスマンの人生という意味においてもダイナミックは生き方でした。財界人としても見事復活した姿を世の中に見せました。
住友銀行はこのあと世間を揺るがす大事件を起こすのですが、もし樋口氏が銀行で順調に出世して頭取になっていたなら人生後半の栄光は得られなかったでしょう。名経営者という称号を得られたのは出世競争に負けたからとみることもでき人生の不思議さを思わずにはいられません。
話しを戻しますと、キリンビールはアサヒがスーパードライを発売してから一気にシェアを落とすのですが、その後かつてのような独壇場を築くことができないどころかアサヒの後塵を拝するほうが多くなっています。今ではアサヒと抜きつ抜かれつの関係ですが、これが普通の時代になっています。
ビール業界に限りませんが、今の時代はある一つの企業が独壇場を築くという時代ではなくなりつつあるようです。唯一それが可能なのはインフラに関する業界です。具体的には、IT業界におけるプラットフォームのことですが、これさえも次々に新しい技術が生まれることで確実ではなくなってきそうです。
昭和の戦後「君の名は」というラジオドラマが放送されていた時間帯は女風呂が空になると言われていました。ほとんどの女性がラジオの前でドラマを聞いていたからです。しかし、このような時代は「今は昔」です。楽しみが多種多様し、メディアも多様化した今の時代は低いシェアでも長続きできるようなもの、つまり低いシェアでも利益を出せる構造なりシステムを確立することが重要になってくるのではないでしょうか。
そんなことを考えたゴールデンウィークでした。
じゃ、また。




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