<ビッグモーター事件>

pressココロ上




今現在、世間をにぎわせているニュースといいますと中古車販売で有名な「ビッグモーター事件」ではないでしょうか。かなりインパクトのある経営者のようですが、未だ記者会見を開いていないのは問題です。上場していないとはいえ、これだけの規模の企業の経営者なのですから、きちんと説明責任を果たすのは経営者の務めあり、その意味においては失格のように思います。昨年北海道で観光船沈没事故を起こした会社は、もっと規模が小さく個人企業の部類に入る会社でしたが、その社長でさえ会見を開いています。

今回の事件について、テレビなど大手マスコミは「保険金不正請求」と報じています。読んで字のごとくビッグモーターが保険会社に本来の傷の修理金額よりも多く請求していたからですが、僕にはそれがどうにも腑に落ちません。テレビでは現役の店長とか元社員という人が顔にモザイクをかけて証言していますが、モザイクがかかった人の証言ですので真実性の担保はありません。

僕は基本的にテレビなどで報じる街頭インタビューを信頼していないのですが、そのきっかけは異なるテレビ局の街頭インタビューに同一人物が出演していたことです。たまたま午後10時からのニュース番組を見たあと、午後11時過ぎに寝ながら見ていた違うチャンネルのニュース番組に同一人物が街頭インタビューで答えていました。僕はあまりに驚き、布団から飛び起きてしまいました。

20年くらい前のことですが、駅の近くを歩いているときに「インタビューに答えていただけませんか?」と声をかけられたことがあります。その方の後方を見ますと、どこかのテレビ局らしいクルーが待機していました。

もちろん僕は断ったのですが、少し離れたところからそのクルーを見ていますと、通りがかりの人に声をかけながらも、了解を得られず苦労している様子がありました。このように街頭インタビューというのはなかなか応じてもらえないのが実情です。僕が同一人物を違うテレビ局の街頭インタビューで見たのは、そうした実情を熟知している人たちが「テレビに映りたい」がばかりに出かけていたからでした。

ここで問題なのは、ほかのテレビ局のインタビューに答えていた人に、なんの問題意識も持たずにインタビューをする取材陣の姿勢です。同じ人が違うテレビ局でインタビューに答えている状況になんの疑問も持たないのでしょうか。テレビでは、現場で取材に出ている人たちは「人集め」で苦労しますので仕方のない面もあるかもしれませんが、報道の真実性の観点からは絶対にやってはいけないことだと思います。

少し前に書きましたが、TBSラジオ・午後の番組「こねくと」のパーソナリティの石川蓮華さんは、20代前半にあるバラエティ番組で街頭インタビューを担当していたそうです。しかし、その街頭インタビューのやり方に「疑問を持っていた」とエッセイでつづっています。その「やり方」とは、自分たちが求めている答えをしてくれる人を探すやり方です。つまり、街頭インタビューといいながら、結果が最初から決まっていることに疑問を感じていたのです。

このエッセイはある意味テレビ局内部の暴露話が書いてあることになりますが、独裁政権ではこのような内輪の暴露話など絶対にできません。その意味でいいますと、暴露話を堂々と公表できるということは、「報道の自由」が守られていることになり、それはとりもなおさず社会の健全性を証明していることにもなります。

「報道の自由」の観点からビッグモーター事件を見ますと、今テレビ局など大手マスコミが報じるずっと前からビッグモーターの問題点を指摘していた経済誌がありました。今回大きく報じられたとき、僕の記憶のどこかに残っており調べたところ、今年の4月にはすでにビッグモーターの問題点を報じていました。

しかし、その経済誌の記事と現在テレビ局など大手マスコミが報じている内容とでは少しばかり異なっている点があります。それは「ビッグモーターと損保ジャパンとの癒着」についてです。「損保ジャパン」とは大手損保会社の一つですが、経済誌ではその損保会社が「ビッグモーターと癒着している」と報じていました。その記事を書いているのは東洋経済という経済誌ですが、テレビなど大手マスコミが「損保ジャパンとの癒着」ついて報じていないのが気になっています。

テレビ局などでは事件の表層的な部分、例えばドライバーで車体に傷をつける映像とか、ネジのようなものでタイヤに穴をあける様子とかを放映していますが、こうした映像はこの事件の本質ではありません。そもそもこの事件で損失を被っているのは不正請求をされた保険会社ですが、その保険会社からビッグモーターに対して大きな強い憤りの声が出てこないのも不思議な気がしています。

ここから先は僕の全くの想像ですが、保険会社はテレビ局の大きなスポンサーです。ですので、保険会社からテレビ局など大手マスコミになにかしらの圧力がかかっているのではないか、と思っています。「ビッグモーターと損保ジャパンの癒着」の件もそうですが、この問題もおそらくすでに大手3社で話し合いが行われている可能性があります。そして、もっと問題かもしれないと推測しているのは、保険金不正請求の損失を顧客に転嫁している可能性です。

報道の中ではほんのわずかですが、「顧客の自動車保険の等級を調査する」と報じています。ご存じの方も多いでしょうが、自動車保険は等級によって保険料が変わってきます。その等級は事故の有無により上下し、事故を起こしていないと保険料が安くなる制度になっています。

ですので、ビッグモーターが勝手に保険を使って保険会社に請求していたなら、最終的に損失を被るのはお客ということになります。仮に、お客が知らないうちに保険が使われ、そして等級が下がっているようなことがあるなら、損害保険そのものの信頼が揺らぐこととなります。もし、そのようなことがあったのであれば、ビッグモーター事件はもっと大きな社会問題に展開する可能性があります。僕が「腑に落ちていない」根本の部分はそこにあります。

先ほども書きましたように、今回大手マスコミで報じられるずっと前から経済誌では記事になっていたわけですが、ずっと報じられていなかったものが、突然大手マスコミで報じるようになった理由、背景も気になっています。もし大手マスコミが報じなかったなら、政府が実態解明に乗り出す事態にまで大きくならず、経済誌内の記事の一つとしてずっとくすぶっていたはずです。そうであるだけに、なぜこの問題が突然大手マスコミで報じられるようになったのか、がとても気になっています。

今回のビッグモーター事件で火の粉が飛んできたのが、同社のテレビCMにずっと出演している佐藤隆太さんです。ネットでは「賠償金をもらうべき(イメージダウンしたから)」とか、反対に「詐欺の片棒を担いだ」と賛否両論ですが、著名人がCMに出演するということはその企業もしくは製品、サービスを勧めていることは間違いありません。消費者は著名人が勧めていることが購入の動機になることもあります。反対に、出演する企業のイメージが著名人のイメージにつながることもあります。つまり、どちらにしてもリスクがあるのですから、著名人の方はCMを選ぶことに慎重であることは重要です。

著名人のCM出演がリスクになるのは、一般の人がマスコミからの情報に影響を受けるからですが、先ほどの僕の疑問「なぜビッグモーター事件が突然大手マスコミで報じられたか」もそうした一般人の資質に関係しているのかもしれません。つまり、ほかの事件から目を逸らす目的です。

そうした観点で今世の中で起きている事件を思い返してみると…。ああ、あの事件かな、いやあれかもしれない…。

真相はどうなのでしょう。

じゃ、また。




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