<消費者不在>

pressココロ上




 大手英会話学校が「中途解約金が少なすぎる」として元生徒から裁判をおこされ、その判決先日が下りました。結果は学校側の敗訴でした。その数週間前に日経ビジネス「敗軍の将」の記事で社長が弁明していました。その内容は企業側としての論理に理解できる部分もありましたが、全体としては消費者の視点に欠けている印象を持ちました。
 今月、その英会話学校の女性講師が殺害される事件が起きました。社長は「敗軍の将」の弁明の中で、中途解約金が生徒側に不利になっている理由として「外国人講師の確保が大変である」と語っていました。謀らずも今回の事件で「本物の外国人が講師である」ことが証明されましたが、それでもやはり生徒側に不利な契約内容である感は否めません。
 弁明の中で、もし裁判で負けるなら「企業としてのシステムが崩壊する」と主張していましたが、生徒(消費者)が納得、満足できないシステムならシステムそのものを改める必要があるはずです。
 以前より、私は「学校」と名のつく業界には一般とは「かけ離れた感覚」が常識になっているように思っていました。それは入学金や授業料に象徴されています。例えば大学への入学を辞退した場合でも入学金や授業料が返還されないシステムは一般の常識とは「かけ離れて」います。私の記憶では、昨年の最高裁判決で「前納授業料の返還」が下りましたが、判決以前に「入学もしていない」「受けてもいない授業」に対して「学校側が料金を求めること」に納得できないものがあります。
 ほとんどのスーパーでは、購入した証明ができれば一週間以内なら商品の返品に応じてくれます。保険契約においてもクーリングオフ制度により一週間以内に申し出れば解約することができます。こうした例に比べると学校業界に消費者の視点が欠けていると言わざるを得ません。消費者不在です。
 先ほど保険契約を例として挙げました。契約の入口ではクーリングオフ制度により消費者が守られていますが、保険内容においては消費者不在が露わになってきました。
 昨年来、保険会社の「保険金不払い」が問題になっています。発端は生命保険金の不払いでしたが、その後損保会社にも広がっていきました。損保業界においては最初に第三分野が問題になり、そして自動車保険においても多数発覚し現在は火災保険に発展しています。先週、損保業界トップの企業が社長辞任を発表しましたが、「遅きに失する」と思っているのは私だけではないでしょう。
  保険会社は「保険金不払い」の理由として「契約者から申請がないこと」を主張していますが、こうした主張が消費者の理解を得られないのは明白です。
 保険に興味のない方のために今回の問題について簡単に説明いたします。
 そもそも「保険金不払い」は「契約者から申請がない」なら問題になりません。ですので「不払い」とはオプション(特約)についての「不払い」のことを言っています。
 例えば、自動車保険は事故を起こした場合、保険会社に連絡すると相手との交渉を行い過失割合などを確定し相手への賠償や自分がケガをした場合に自分のケガに対しても保険金がおります。保険は保険会社により、または保険種類により保障内容は違いますが、一般的にはこうした契約内容が基本です。
 近年、保険会社は保険料の下落を補うためにこの基本内容に加えて様々なオプション(特約)をつけて販売してきました。例えば、「事故に遭った際に代車費用を保障する」とか「車が全く使用できないほど損壊した場合に保険金を増額する」など多岐にわたります。今回、問題になっているのはこうしたオプション(特約)についての保険金が支払われていないことです。
 一般的な感覚では、事故を一度報告したなら自分が契約している保険内容の全ての保険金が支払われると考えます。なぜならその分の保険料を支払っているからです。にもかかわらず保険会社は保険金不払いの理由を「オプションについての申請がなかったから」と弁明していたのです。
 しかし、保険を販売するときは保険料を上げるためにオプション(特約)を勧めておきながら、支払う段階では「申請がなかったから」では筋が通りません。消費者から「申請がない」のにオプションを勧めたのですから…。
 今後、火災保険の問題がどれほどの広がりを見せるかわかりませんが、経済誌によりますと「過去に溯って検証した場合保険会社が潰れる」ほど保険内容に問題があるようです。生命・損保ともに保険は国民のほとんどの人が加入しています。その保険会社が潰れてしまっては影響が計り知れないものとなってしまいます。保険会社の方たちが今回の件を機に消費者有在の経営に変わることを願っています。
 そう言えば社会保険、つまり年金においても「記録が削除されている例」があると報道されていました。収めた保険料の「記録がない」ということは「給付金がなくなる、もしくは減額される」可能性があることを意味します。今後、管轄である社会保険庁の改革も行われるようですが、是非とも国民が安心できる年金にしてしてほしいものです。
 みなさ~ん、「保険」と名のつくものには常に意識を高め関心を持っていましょう。
 子供が小学生の頃、2DKの我が家で夕方からずっと台所兼居間の隣の部屋で机に向かって調べものをしていました。7時頃になると襖越しに妻と子供二人のにぎやかな会話と笑い声が聞こえてきました。僕は「晩ご飯だろう」と思い襖を開けると三人は食事をしていました。妻は驚いたような表情で僕に言いました。
「あら、いたの?」
 妻の頭の中は「夫不在」なのでした。不在扱いされた者ほど悲しい存在はありません。昔、流行ったキャッチコピーを…。
「亭主元気で留守がいい!」
 じゃ、また。

紙.gif4コマ漫画
ジャーック!





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