先週、NHKで興味深いドキュメンタリー番組を見ました。ある地方の市会議員に立候補した男性の選挙期間中の奮闘ぶりを追った内容です。見終わったあとに思い出したのですが、この番組は幾度か新聞などでも紹介されていました。その理由は、監督がアメリカ在住の日本人であることと、監督が立候補者と友人関係にあり民主主義の基本である選挙について描いていたからでした。
この番組はシリーズものでしたが、基本テーマを「民主主義」としており日本だけでなく世界各国の選挙について報告していました。僕が見たのはたまたま日本編だったというわけです。
番組の感想を言いますと「選挙の当落は政策で決まるものではない」ということです。そして思い出したのが、昨年TBS深夜番組で放映されていた「選挙のプロ」の方のお話でした。
選挙のプロ氏は言っていました。
「政策と選挙は別物である」。
「別物」であるからこそ「選挙のプロ」という職業が成り立ちます。選挙の世界には素人ではわからないやり方があるようでした。実際にドキュメント番組では「選挙には選挙の世界があること」が映し出されていました。そこには政策とは全く関係のない「人間関係の重要さ」やもっと具体的にいうなら「握手の仕方」「お辞儀の仕方」など有権者にいかにして「顔を覚えてもらい」「投票してもらうか」のノウハウがありました。
ドキュメント番組内では、立候補者である男性はそうしたノウハウを徹底的に指導されていました。男性は言っていました。
「体育会系のノリで考えないとやっていけない」
番組内で男性が支持者に語句強く「叱られる」場面がありました。それに対してただただ低姿勢で謝っている男性の姿からは政治家を志す立候補者の「志」はかけらも感じられません。
また、違う場面では男性の奥さんが不平不満、愚痴とも言える言葉を強い口調で話していました。その話し方には怒りも含まれておりストレスが溜まっているのがわかります。奥さんも支持者にいろいろなことを言われ、それに対して反論もできずただただ頭を下げていることが悔しかったようでした。
奥さんに対して男性は言います。
「そんなのは『ハイ、ハイ』と言って謝っていればいいんだ。それが大人の対応というものだよ」
確かに政治家は大人でないと務まりません。
選挙は本来、立候補者が頂点となり応援してくれるスタッフに仕事を手配して戦うもののはずです。しかし番組での選挙は、頂点にいるのは選挙参謀の人でした。立候補者は「スタッフの一員」でしかないのです。選挙参謀に指示された通りにしか動けない、そして選挙参謀に従う立候補者の姿に政治の現状が垣間見えるような気がします。
結局、男性は当選しましたが、当選で沸きかえる事務所では支援していた政党や団体の幹部が我が物顔で振舞っていました。まるで自分たちの力で当選したかのように…。立候補者である男性は当選確定時に自宅におり事務所にいなかったのですが、参謀や支援していた幹部の人たちは当選の挨拶になかなか現れない男性を「前代未聞だ」と批判していました。
このような状況で議員になって真の政治家の活動ができるのでしょうか? 政治家の周りの人たちは議員を見下しています。
最近の選挙は「無党派層の動向が影響する」と言われていますが、私はこの傾向は本来の選挙の姿に近づいているのではないかと思っています。一部の支持組織に支えられて当選するよりは「より公平な」選挙結果になると思うからです。
そういうとき私たちは有権者は立候補者の「素顔」を感じることが大切です。選挙運動中の候補者は「素顔」を隠しています。選挙のプロに指南された振る舞いをしているからです。しかし、人間の「素顔」を見破るのは簡単ではありません。
あなたの周りにもいませんか? 一見人当たりもよく好人物に見えるが、裏では権謀術数をはかっている人。「優しい人ぶってる」けど素顔は「意地悪な人」。…いますよねぇ。そういう人とお友だちや知り合いにはなりたくないですよねぇ。そうならないためにはなんとしてその人の素顔を見破る能力を養う必要があります。
でも、やっぱり難しいですよねぇ。僕なんて、結婚して初めて
「妻は化粧がうまい」ということを知りました。
じゃ、また。
4コマ漫画
ジャーック!