<ウサン臭い>

pressココロ上




 どうも気になります。
 英会話スクールNOVAの創業者である猿橋社長が逮捕されました。僕は、元々NOVAのCMにウサン臭さを感じていましたので「さもありなん」とは思っていました。しかし、気になります。
 問題が起きた当時、猿橋社長は経済誌「日経ビジネス」の<敗軍の将>コーナーで自分の主張を訴えていました。特に僕が印象に残っているのは次の内容です。
「マスコミなどでは、僕(猿橋氏)が贅沢三昧をしているように書いています。例えば社長室の家賃が数百万でその社長室には豪華なカウンターバーや夜景が見えるお風呂がある、としてその映像で流されたりしています。しかし映像で流されている社長室はデモンストレーション用のものです。実際に使用している社長室ではありません。あの映像は、管財人が僕を悪者にするために意図的にマスコミに公開した映像です」
 約1年も前ですので正確ではありませんが、大まかにいうとこのような内容でした。
 もし猿橋氏の主張が正しいのであれば、マスコミはなんの検証もしないまま管財人寄りのニュースを流したことになります。そして今回の「逮捕」です。1年も経っての「逮捕」にはやはり<ウサン臭さ>を感じてしまいます。先に書きましたように僕はNOVAに対して本来は批判的ですが、それでも今回の「逮捕」を素直には受け取れないのです。
 グッドウィルが廃業に追い込まれました。今回の猿橋氏の逮捕や昨年のホリエモン氏、村上氏の逮捕などの流れからしますとつい「折口氏の逮捕」までも連想してしまいます。理由はかつて逮捕された経営者に共通点があるからです。それはベンチャー起業家ということです。
 こうした人たちは、世間的には成功者であるとともに「安易にお金儲け」をした人たち、といった印象を持たれています。問題は「安易」です。「額に汗して」でなく「株を公開」したことによって大金を得たことが「安易」と思われています。
 しかしベンチャー起業家たちが栄華を満喫していた頃は「株式公開」することが時代の流れでした。そして当時から一部の人たちから批判はありましたが、それでも一般的には支持されていたように思います。ここ1~2年のベンチャー起業家たちの逮捕劇はそうした時代の流れの転換を意味しています。佐藤優氏が言うところの国策捜査の一環かもしれません。
 一部の尖ったジャーナリストは、こうした逮捕劇を検察という組織の力の誇示と考えているようです。世間が溜飲を下げるような事件を起訴することで検察の存在意義を世の中に訴えようとするものだそうです。検察力の強大化を狙った行動というわけです。そうしたジャーナリストの指摘を見ますと確かに検察OBが国の重要なポストに就いています。さもありなん…。
 またしても食品偽装が発覚しました。今度はウナギと豚です。
 中国産のウナギを日本の有名な産地として出荷していたそうです。社長の話では「今年1月の中国ギョウザ事件以降、売れなくなり在庫が溜まった」のが理由だそうですが、もし「在庫処分」が本当の理由なら単純に値段を下げるなどして販売するのが本来の筋です。「有名産地」などにせずもっとマイナーな産地していたのならまだしも「有名産地」にしていたことは犯罪に値すると言われても仕方ないでしょう。ウサン臭い…。
 豚の偽装では嘆かわしい経営者の姿が映し出されました。当初は「従業員が勝手にやった」と言っていましたが、その後あっさりと言を覆し謝罪していました。その「あっさり」具合がせめてもの救いです。しかしこの社長に限らず人間は「自分に非がある」ことからは逃げたくなるものです。
 社会人になって一年後、僕は一人暮らしをしていました。
 当時僕はスーパーに勤めていたのですが、僕の勤務していた店舗が改装をすることになりました。改装は3日かけて実施される予定でした。
 さて、改装日前日。 
 改装するために売り場を手直ししなければなりません。短期間で終わらせるために出勤時間も普段とは違い早くなりました。普段は午前9時頃でしたが、午前5時と決まりました。係長は終礼で言いました。
「明日はいつもより早いけど遅刻だけはしないように…」
 普段僕は、覚まし時計で起きていました。明日はいつもより大部早く起きなければなりません。午前4時。僕は寝る前に念入りに目覚まし時計を設定しました。もちろん早めに寝床につきました。なにしろいつもより4時間も早起きしなければいけないのですから…。
 しかし、いくら寝床に入ってもそう簡単に早く寝られるものではありません。やはり普段の就寝時間が身体に染み付いています。眠ろう、眠ろうと思っても思うように睡眠に入れませんでした。
 改装日当日。
 僕はなんとなく目を覚ましました。頭がボーッとしています。しばらくして目覚まし時計を見ました。時計の針は7時を少し過ぎたところを指していました。
「まだ7時か…」
 僕はもう一度布団をかぶりました。しばらくして…。
「えっ!…」
 僕は飛び起きると大急ぎで着替え駅までの道を走りました。改札口も走り抜けると電車に飛び乗りました。電車に乗っても気持ちは落ち着きません。午前5時集合なのに午前7時に起きたのですから…。
 僕は考えました。みんなになんて言おう…。
「急に実家から連絡があった」「急にお腹が痛くなって途中で家に戻った」「電車を乗り間違えた」「電車を乗り過ごした」…。いくら考えても妙案は浮かびません。
 結局、妙案が浮かばないまま勤務先の駅に到着しました。僕は必死に走りました。走りながらも言い訳を考えていました。
 店の近くに行くと既に午前5時に出勤している同僚たちがせわしく動いている姿が目に入りました。僕は恐る恐る社員通用口に向かいました。店は4階建てで僕が働いているのは2階です。2階以外の社員とは同じ店とはいえ担当が違いますのでそれほど親しくはありません。それでも同じ店ですから顔見知りではあります。
 社員通用口は1階にありました。僕に気がついた同僚が声をかけてきました。
「おお、早い出勤だな」
「えっ、ええまぁ…」
 僕は曖昧に答えながら2階に急ぎました。階段を上りきりフロアを見渡すと同僚がそれぞれ商品などを運んでいました。僕がそのまま進むと2階踊り場付近にいた同僚が僕を一瞥しましたがなにも言いません。僕はそのまま進みました。すると作業をしているみんなの視線が僕に集中しました。僕は思わず大きな声で言いました。
「すみません!寝坊しましたぁ!」
 すかさず係長が怒鳴りました。
「こらぁー!」
 この一声にみんながドッと笑い声をあげました。
 あー、良かった。
 その後はパートさん、先輩、上司から「嫌味」とも「からかい」ともとれる言葉を浴びせられはしましたが、きつく問い詰められることもなく作業に入ることができました。
 その日の帰り。
 電車に揺られながら思いました。朝、電車の中でいろんな言い訳を考えはしましたが、いざみんなの前に行くと頭の中が真っ白になり本当のことを言ってしまいました。もし僕が強心臓で度胸があったら「尤もらしい言い訳」を言っていたかもしれません。しかし僕は小心者でした。本当のことしか言えませんでした。けど、たぶん、もし「尤もらしい言い訳」を言っていたならみんなの「ドッと笑い声」はなかったでしょう。「尤もらしい言い訳」はみんなの反感を買うことにしかならなかったと思います。小心者でよかった。「尤もらしい言い訳」ほどウサン臭さはつきまといます。
 ところで…。
 娘が中学生の頃。我が家には一匹の野良猫が毎日来訪していました。
 名前はヤマちゃん。
 我が家の数軒隣の奥さんがいつも餌を与えていたので我が家の界隈を徘徊していました。そのヤマちゃんはなぜか知らないんですけど2階の娘の窓が開いていると勝手に部屋に入って来ていました。娘が学校が帰って来るとベッドの上に寝そべっていたりしたそうです。娘もヤマちゃんを気に入っていたのでそれほど嫌がってもいませんでした。
 ある日、娘が2階から降りてきて不愉快そうな顔で言いました。
「なんか私の部屋、変な臭いがする」
 僕と妻は娘の部屋を見に行きました。確かにいつもはしないなにかが臭います。僕と妻は部屋の中を見渡しました。なにかが落ちてるのではないか…。
 部屋を見渡す限りいつもとなにも変わった様子はありません。何気に窓を見ますとサッシの上にヤマちゃんが座っていました。もちろん猫背で座っていました。ヤマちゃんは僕と目が合うとちょっと澄ました顔でそのまま外に出て行ってしまいました。
 ヤマちゃん、なんかウサン臭いな…。
 僕は微かに臭うベッドのほうに行きました。ベッドと壁の間が怪しいです。僕はベッドと壁の間に顔を押し付け下を覗き込みました。しかし暗くてよく見えません。僕は懐中電灯を持ってきて中を照らしました。するとそこには臭いを発しているある物体がありました。
 ヤマちゃんが出て行くとき、僕はウサン臭いと思ったのですが、実際は
 「ウンコ臭い」のでした。
 じゃ、また。

紙.gif4コマ漫画
ジャーック!




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