<営業時間>

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 今年に入り食品の値上げが続いていましたが、7月に入ってまた一段と値上げがありました。飲食業を営んでいます当店にも当然影響があり、かなり苦しんでおります。商品が値上げされるのも痛いですが、揚げ物を中心に品揃えをしています当店に最も悪影響を与えているのが「油」です。
 揚げ物店には「油」が欠かせませんが、その油の価格が高騰しています。昨年末に比べますと約1.5倍です。割合で言いますと深刻さが伝わらないと思いますので金額で言いますと、1ヶ月に約3万円の負担増となります。「油」だけで3万円、商品の値上げ分まで合わせますとさらに負担増となる計算になります。僕の悲しみ具合がわかりますでしょうか。もし皆さんの給料が「なにも悪いことをしていない」のにいきなり5~6万円減額されたときの気持ちを想像してみてください。
 このように自分は「なにも悪いことをしていない」のに自身を取り巻く環境が変化することで収入が減るのは理不尽です。しかし経営学者ドラッカー氏によりますと「変化はコントロールできない」そうですから変化に対応すべく工夫するしか生き残る道はありません。
 そんなことを思いながらニュース番組を見ていましたら、大阪府が職員の給与を減額する内容を伝えていました。映像では職員が橋本氏と相対する場面がありベテラン職員が強い口調で問い詰めていました。
「(賃金カットされると)私の人生設計が狂うんですが、どうしてくれるんですか!」
 たぶん多くの視聴者はその映像を見て憤りを感じたのではないでしょうか。そこには「自分のことだけしか考えない」エゴだけが映し出されていました。「親方日の丸」意識…。
 先週の週刊ダイヤモンドを読んでいましたら東京の中堅スーパー「オーケー」に関する記事が載っていました。僕は前にも幾度かオーケーについてこのコラムで書いたことがありますが、スーパーとしては中堅規模でしかないにも関わらず記事として取り上げられるのはちょっと不思議な気がしないでもありません。このスーパーの社長が大手警備業セコムのお兄さんであることも影響しているのでしょうか…。
 それはともかく今回の記事は小売業とメーカーの取引き形態というか力関係というかそのようなものでした。内容を要約しますと、オーケーが次のような掲示を売り場に貼り出したことを伝えていました。
「キリンビールが特売する期間を年に18週と規制したためにキリンビールの販売は年に18週のみとなります」
 このような内容の貼り紙なのですが、こうした行為は第三者から見ますと、やはり「挑戦的」と受け取れます。オーケーのポリシーは「正直」です。売り場を歩いていましてもこのポリシーは感じられます。その点が僕がオーケーに好感を持っている理由ですが、今回の件に関しては「やりすぎ」ではないか、と僕には思えるのですが皆さんはどのように感じるのでしょう。
 実は、この記事を読む前に僕はオーケーに対して感動したことがありました。それは営業時間を短縮したことです。近年はスーパーに限らずデパートなど小売業は売上げを確保するために営業時間を延長するのが一般的になっています。ところがオーケーはその逆をおこなっています。1~2時間営業時間を短縮したのです。オーケーがほかの小売業と反対の行動をするのは今回が初めてではありません。お正月の三が日も休業しています。これも近年の小売業の流れとは正反対です。
 詳しい理由はわかりませんが、小売業が売上げを下げる行動をとるのが並大抵の決断でないことはわかります。特に、経営者という人種は自分の評価は「売上げで決まる」と思っていますから容易に売上げ減の行動など決してとらないものです。売り場という現場がどんなに厳しい労働環境になろうとも売上げが落ちる経営計画などとらないのが通常です。そうした小売業が多い中、営業時間短縮を実行に移したオーケーの偉大さがわかろうというものです。
 このように小売業では営業時間の短縮は容易に実行には移せませんが、その象徴となるのがコンビニです。一般の小売業は営業時間の延長は人件費の増大に直結します。しかし、場合によっては人件費のとの兼ね合いで営業時間を見直すことも選択肢の一つとはなり得ます。しかしコンビニは多くがフランチャイズシステムですので人件費とは無関係です。フランチャイズシステムでは営業時間を短縮することはタブーとさえなっています。
 先日、新聞にコンビニ経営者の投稿が載りました。「深夜の営業を中止したい」という内容でしたが、現実は本部との契約でそれもままならないようでした。僕としてはこのような内容の投稿が記事になったことが驚きでした。コンビニは新聞社にとって大切なスポンサーだからです。にも関わらず記事になったのは近年は環境問題が花盛りですので、また洞爺湖サミットがあることも影響したのでしょうか。
 どんな事情があったにせよ、こうしたコンビニの実態が紹介されたことは意義があります。また、週末にはコンビニに関する画期的な判決報道がありました。「加盟店が求めたなら、本部は仕入先に支払った代金を報告する義務がある」という判決です。昔でしたら本部が圧倒的に強い立場でしたが、時代の流れで少しずつそうした状況も変化していくかもしれません。また、そのようになることを願っています。
 小売業にとって営業時間はとても重要な要素です。そうであるからこそ単に長くすることだけを考えるのではなく現場で働く人の労働環境も考慮に入れて決めてほしいものです。
 ところで…。
 僕の店は油の値上がりがとても大きな負担になっておりそれはそのまま収入減につながります。冒頭に書きましたように、「環境の変化」で収入減になることも受け入れざるを得ません。そしてそうしたことは日本の社会ではどこでも起きることです。それを思うとき大阪府のベテラン職員が自分の都合だけを橋本知事に訴え問い詰める姿は共感できるものではありません。ほとんどの公務員の方はこのような考えでいるとは思いませんが、中には昔の親方日の丸意識を持ったままの職員もいるようです。
 僕の仕事は「油を買う」ことが日常ですが、親方日の丸意識の公務員は「油を売る」ことが日常となっているでしょう。
 じゃ、また。

紙.gif4コマ漫画
ジャーック!




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