<基準>

pressココロ上




 僕は毎週、自サイトを更新していますが、更新したあとには必ず正しく更新されたかを確認しています。ところが、先日表示に関して不手際を発見しました。いつから不手際があったのか自分ではわかりませんが、少なくとも開設当初は正しく表示されていたように思います。
 不手際とは、トップ画面において下段広告の位置がずれていたことです。僕は通常、左端に「お気に入り」を表示させています。ですので、更新後も「お気に入り」を表示させて確認をしていました。そのときは本文と広告はきれいに並んで表示されていました。しかし、先日たまたま「お気に入り」を表示せずに自サイトを見る機会がありそのときに気がついたのでした。
 原因は実に簡単なミスでして、僕が下段広告の左右位置の設定を間違っていたことです。本文は「中央」に設定にしていたのですが、下段の広告だけを「左寄せ」に設定していたのです。自分では全く気がつかないでいました。それまで本文と広告が上下揃って並んでいるように見えたのは「お気に入り」を表示させていたという偶然の賜物にすぎなかったのです。今まで僕のサイトを見ていた人の中には広告の位置がずれていることを心の中で笑っていた人もいただんだろうなぁ、と思うと恥ずかしさで一杯です。でも、まぁ広告ですから訪問者の方にとっては大した問題ではないかもしれません。
 それはともかく基準をどこに設定するかはとても重要です。基準を間違えたなら自分の思いとは違う結果が出ることになってしまいます。
 このように今まで僕のサイトは見づらかったのですが、そのサイトで先々週、僕は「シューカツ」をテーマにコラムを書きました。すると偶然にも翌週シューカツ中の女子大生から話しかけられてしまいました。
 彼女はそれまでにもたまに買いにきてくれていたのですが、そのときはリクルートスーツに身を包んでやってきました。そして買い終わったあとに
「今、就職活動をしているんですけど、なかなかうまくいかなくて…」
と話しかけてきました。僕はそれまでの彼女の暮らしぶりを目にしていましたので、彼女が地方から上京して一人暮らしをしていそうなことは想像できました。たぶん、その日は辛いことがあり誰かに話をしたかったのでしょう。一人暮らしでは家に帰っても誰にも話すことはできません。僕は、現在の厳しい就職状況、特に女子学生にとって冬の環境であることがわかりますので同情を禁じえませんでした。僕にできることは励ましの言葉を進呈するくらいです。
 一般的に、大学生が就職活動を始めて少なからずショックを受けるのは、自分という人格を企業の基準で計られることに対してです。こういう場合、企業を社会と言い換えてもいいと思いますが、企業は企業の基準を学生に押しつけてきます。時には、学生の立場からしますと、意地悪と感じる質問や態度をとられることもあるでしょう。多くの学生がそうした状況に遭いショックを受けます。先ほどの彼女もそのような話しぶりでした。
 しかし、彼女もそうでしたが、ほとんどの学生はそうした状況を予想はしています。先輩の話や大学のセミナーなどで情報は得ているからです。しかし、情報として知っているのと実際に体験するのとでは大きな違いがあります。やはり体験に勝る情報はありません。この差は脱サラをするときに、大変さを覚悟はしていても実際に始めてみると想像以上に辛く感じることと似ています。
 それはともかく、学生が学生時代に考えていた基準と企業の基準には大きな差や違いがありますから、それを体験することによって学生は社会人への第一歩を踏み出したことになります。
 先日、イオングループが大きな広告を打ちました。PB商品の値下げを大々的に宣伝していたのですが、その中で僕が興味をそそられたのはカップ麺を値下げすることについての説明でした。
 広告では、値下げをできる理由として「粉末と具を1つの袋に入れるようにした」と書いてありました。今までのカップ麺は粉末と具を別々の袋に分けていたのが一般的でしたので、その袋を減らすことによって値下げを実現したようです。
 以前、僕はコラムで製造小売業の価値についてきました。
 話は少し逸れますが、僕のブログを検索で訪れるときのキーワードとして「PB商品」が今でも上位に入っています。PB商品にこれほど関心を持っている人が多いことに僕は驚かされています。
 話を戻しますと、製造小売業の価値は「メーカー同士の競争では思いつかない発想を小売業の人たちがすること」と書きました。「粉末と具を1つの袋に入れる」という発想もメーカーの人たちでは思いつかない小売業ならではの発想かもしれません。単純そうではありますが、メーカーの人たちでは思いつかなかったのですからやはり画期的といえるでしょう。
 このメーカーと小売業の発想の差は、メーカーの基準と小売業の基準が違うことが理由のように思います。メーカーが考える低価格と小売業が考える低価格のそれぞれの基準が違うことがその発想の差を生み出しているように思えます。基準をどこに設定するかはとても重要な要素です。
 ここまで考えて、正直に言いますと僕は少しばかり疑問も感じています。それは、本当にメーカーの人たちは「粉末と具を1つの袋に入れること」を発想できなかったのか、と。やはりいくら基準が違うとはいえ、この程度の発想はメーカーの人でも思いつくような気がしてなりません。そこで僕は考えました。
 今回の値下げは、発想の違いから行われたのではなく、全く異なった意味合いがあるのではないか…。それは小売業とメーカーにおける価格決定権のせめぎあいです。
 メーカー側も「粉末と具を1つの袋に入れる」という発想は以前から持っていたのですが、あえてそれを実行してこなかったと考えられなくもありません。理由は「安く売りたくない」からです。そうした状況を覆すべく小売業であるイオンはわざわざ「スープと具を1つに入れる」ことを強調したように思えます。このようなシンプルでわかりやすい「値下げ理由」は一般消費者の支持を受けやすいものです。イオンはその支持を背景に価格決定権の基準を獲得することを目論んでいるように見えます。
 今から30年以上前、小売業は価格決定権を握ることを悲願としていました。ダイエー創業者の中内氏などは公然と語っていたものです。しかし、実現することはとても困難な状況でした。
 ところが、最近の小売業のPB商品の充実ぶりは目覚しいものがあります。こうした環境になり、小売業は初めてメーカーに宣戦布告をできる態勢になりました。価格決定権の基準を握れるかどうかは、小売業とメーカー双方にとって自らの業界の存続を左右する大きな要因です。今後は更なる戦いが行われるでしょう。
 ところで…。
 新型インフルエンザが社会問題化しそうな雰囲気がありますが、ある日の新聞に腑に落ちない見出しがありました。
「豚から鳥インフルエンザ」
 このような見出しだったのですが、「豚」から出たのに「鳥」インフルエンザとは不思議な気分になります。インフルエンザの名前の基準はどのように決められているのでしょう。
 じゃ、また。




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