<無駄>

pressココロ上




 以前、煙草自動販売機のことをこのコラムで書きました。僕がいつも利用していた自販機が撤去された話ですが、現在は違うところの自販機を利用しています。僕は典型的なA型人間ですので、通勤時ほぼ毎日同じ道を通り、決まったところで煙草を買うという行動を好みます。
 現在利用している自販機は駄菓子屋さんの店頭に設置されているものです。ですから店内で買うこともでき店先にも店内にもガラス製のカウンターがあります。しかし、シャッターが開いてないこともありますし、シャッターが半分しか上がってないことが多く僕は自販機でしか買ったことはありません。たまにシャッターが全開しているときに店内をのぞきますと、店舗の奥に和室がありそこには70才過ぎのおばあさんが座りなにかに見入っているようでした。たぶん、僕の想像ではテレビを見ていたのではないでしょうか。なんとなく昔の駄菓子屋さんの風情を感じます。
 このような駄菓子屋さんは、一見すると今の時代にそぐわない印象を持ちます。昔の駄菓子屋さんは店内が暗く商品もまばらに陳列され最近の洗練された店舗とはかけ離れているのを連想するからです。しかし、この駄菓子屋さんはピカピカとはいえませんが、それなりに小奇麗で商品もきちんと陳列されていました。このような駄菓子屋さんを見ると僕は疑問が湧きます。「どうやって仕入れているのか?」
 答えは、僕の店と同じでした。業者が配達に来ていました。たまに運転席の後ろに駄菓子を目一杯積んだワゴン車を見かけます。自転車で通りすがりにワゴン車の中を覗きこむと「いかにも昔風」な駄菓子が山のように詰まれていました。僕は懐かしさが込みあげてきました。
 昨今、このようなお店を見かけることはほとんどありません。理由はもちろん利益が出ないからです。このお店が現在も営業を続けられているのは、一重に自宅の一部を店舗にしているからです。また、おばあさんが「儲け」より「自分の気持ちの張り」を得ることを目的にしているからです。…たぶん。きっと、おばあさんの代で駄菓子屋さんは終わってしまうでしょう。
 さて、そのおばあさんのお店の煙草自販機ですが、僕がいつものように自転車を止め自販機に向かって歩いていますとジャージ姿の中年男性が店内に入って行きました。そしてすぐに出て来て自販機にお金を入れ始めました。するとおばあさんが店内から出てきて中年男性の隣に立ちました。男性はお金を入れ終わると煙草の銘柄のボタンを押し、おばあさんに声をかけました。
「お願いします」
 男性の言葉に促されて、おばあさんは手にしていたカード状のものを自販機に向かって掲げました。僕は最初、二人がなにをしているのかわかりませんでしたが、その後の男性の行動ですぐに疑問が解けました。男性は煙草が落ちてくるのを確認すると、取り出し口から煙草を取りその場を去って行きました。
 そうです。男性はおばあさんにタスポをかざしてもらっていたのです。おばあさんのタスポで。
 僕はおばあさんに話しかけました。
「面白いですね。ああいう買い方もあるんですね」
 おばあさんは答えました。
「そうなの。あの人、いつもああやって買うのよ。でも、自分でタスポを申し込んで買ったほうが面倒じゃないのにねぇ」
 タスポを申し込んでいる人の割合はまだ50%に届かないそうで、タスポを持っている人はそれほど多くないようです。僕は先ほどの中年男性のような買い方をする人を初めて見ましたが、全国では結構いるのではないでしょうか。
 煙草をコンビニで買う人が多くなり、自販機で買う人が減っているそうですが、おばあさんのお店のような自販機は買う人も減らないような気がします。でも、一つ僕は疑問があります。
 わざわざ店の人を自販機の側まで呼び出すのなら、自販機まで行かずにその場で手渡しで買ったほうが早いのではないでしょうか。そのほうが買う側も売る側も手間が省けるというものです。わざわざ自販機まで店の人を連れ出す行為は無駄なような気がしますが、本当のところはどうなんでしょう。
 今回の例は、仮に無駄な行為だとしてもあくまで個人の問題ですから誰からも非難される筋合いのことではありません。あくまで個人の自由です。しかし、国の予算に無駄があるならそうはいきません。
 先週は、「事業仕分け」に関するニュースが新聞の一面を占めることが多かったですが、僕はとても画期的なことだと思っています。外野からは批判や問題点も指摘されていますが、今まで密室で内々に決められていた予算配分が公の場で討論されることは財政において大きな意義があります。国民の前にさらけ出されることによって無駄な支出が減ることは間違いありません。
 これまで長い間、行財政改革が叫ばれながらいつも頓挫していたのは国民に情報が知らされていなかったからです。今回、予算の決まる過程が公開されることになりましたが、これだけあからさまになったなら各省とも怪しげな予算申請などできないでしょう。僕が一番大きな成果だと思えるのは○○法人と名のつく組織が見直しや廃止を求められていることです。こうした○○法人は多くが官僚の天下り先となっていましたので、予算の無駄の削減ばかりでなく天下りの廃止という効果も生みそうです。まさに一石二鳥の結果が得られるのではないでしょうか。
 報道によりますと、事業仕分け作業で決まったことでもそれが実現されるとは限らないようです。最終決定は財務省がするそうですから是非とも事業仕分け作業が活かされることを願っています。間違っても、予算が決まったあとに「仕分け作業は無駄だった」などと言われることがないように祈っています。
 ところで…。
 民主党が政権をとってから真っ先に手をつけたのは八ッ場ダムを象徴とする全国的なダムの見直しでした。今にして思えばそれは当然だったのですね。つまり、「ダム」は「駄無」だったのです。
 じゃ、また。




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