<副業>

pressココロ上




 先週は東京12チャンネル「ガイアの夜明け」でユニクロを取り上げた内容について書きましたが、今週も「ガイアの夜明け」について書きます。
 先々週は、サラリーマンの副業について特集をしていました。その1つとして「白いたい焼き」屋さんのオーナーになった30才過ぎの男性を紹介していました。男性は収入を増やすべくFCに加盟して開業した内容でしたが、幾つか違和感を持ったところがありましたので僕の感想を書きたいと思います。
 僕はこれまでにもFCの問題点や今後の展望について書いてきましたが、セブンイレブンの裁判以降、今後はますますFCシステムが変革せざるを得なくなるでしょう。今までのように本部が圧倒的に有利な立場でいられる時代は過ぎ去ろうとしています。これからがFC本部の本当の力が問われることになります。
 しかし、そうした状況が表れるのは大手のチェーンであり、特にコンビニ業界に限られるかもしれません。FCにもいろいろな業種があり、小規模なFC本部もたくさんあります。たぶん、中小の本部は当分の間、今までと代わらないやり方を続けていくように思います。その理由は、「今までと変わらないやり方」の本部に対する需要があるからです。
 FCの代表的な業種はコンビニですが、コンビニ業界は先ほどの流れが加速こそすれ減速することはありません。しかし、飲食業におけるFCはまだまだ旧態依然とした状態が続きそうです。やはり、会社勤めをしている人がある程度の資金を貯め「なにか商売を」と考えるとき真っ先に思い浮かぶのが飲食店だからです。こうした傾向は今から20年前とほとんど変わらず、だからこそ「白いたい焼き」屋さんも開発されました。
 飲食業にもいろいろありますが、実はFC本部にしてみますと、提供する種はなんでも構いません。「ラーメン」であろうと「ハンバーガー」であろうと「たこ焼き」であろうとなんでもよいのです。ただブームになり一時期でも大衆に受け入れられる種であるならよいのです。ガイアの夜明けで紹介していました「白いたい焼き」もそうした中の一つに過ぎません。
 番組では、開店当初こそかなりの売上げがありましたが、次第に売上げが落ちていった様子が映し出されていました。オーナーの男性は少しばかりショックを受けていたようですが、これは想定内のことです。男性は売上げを上げるべく工夫を凝らしたチラシを打つ対策をとりました。「工夫」とはチラシに塗り絵の下書きを施し、色を塗ってきた子供たちにたい焼きを一個サービスするものでした。
 売上げが落ちるのは不思議でもなんでもありません。開店時に売上げが高いのは、開店景気と言われるものですし、そもそも「白いたい焼き」そのものが現在ブームになっているからです。それが一巡したなら売上げは落ちて当然です。大切なのはお客様が一巡したあとの売上げです。それがその店の本当の売上げです。
 テキストにも書いていますし、このコラムでも幾度か書いていますが、飲食店の売上げを決める要素は立地環境です。先日読みました本には、ファーストフード店において通りすがりの通行人が立ち寄る割合は3%~4%と書いてありました。つまり店の前を100人の人が通るなら3~4人の人しか立ち寄らないことを意味します。仮に来店客100人を目指すなら2,500人の通行人が必要ですし、200人を目指すなら5,000人の通行人が必要なことになります。このような立地環境でなければ目指す売上げは達成できないことになります。
 番組では、チラシを打った当日の売上げ8万円も公開していました。そしてそれを見たオーナーの一応の安堵の表情が映し出されていました。
 ひと口に8万円と言いますが、この8万円を作る大変さが画面からは伝わってきませんでした。一個の単価が100円前後の商品で8万円を売り上げるのは並大抵のことではありません。たぶん厨房内は混乱状態だったのではないでしょうか。
 単価の低い商品で8万円の売上げを作るには従業員の人数確保が欠かせません。飲食店は人海産業です。間違っても一人では対応できない数字です。最低でも3人は必要でしょう。もしオーナーが8万円の売上げを本気で毎日続けるつもりなら常に3人以上の従業員を置いておかなければなりません。予想がはずれて売上げが目標に達しないなら人件費は無駄なことになります。そのリスクを負う覚悟が必要です。しかも接客など仕事をきちんとこなせる力量を持った従業員でなければいけません。その教育や管理も大切です。
 チラシを打った日に8万円の売上げができましたが、大切なのはそのときに来店したお客様に満足感を与えることです。いくらその日に来店客が多かろうと、そのお客様が「二度と来たくない」と思ったならチラシは逆効果となってしまいます。チラシは顧客を増やすためのものでなくてはなりません。
 このように考えますと、副業で「たい焼き屋」のような飲食店を開業するのはかなり難しいことがわかります。過去にも似たような種の商売はFCによって開発されてきました。しかし、ある程度営業年数を重ねているのは、オーナーが売り場に立っているケースです。つまり副業ではなく本業として営業しているケースです。稀にオーナーが売り場に立っていないケースがありますが、それらはほとんどが物件が自己所有であるケースで家賃がかからないケースでしかありません。
 飲食店を本業で開業しても成功する確率は低いのが実状です。そんな実状の中、で副業で開業して一応でも成功する確率は一段と低いと言わざるを得ません。読者の皆さん、「会社に勤めながら副業で商売」など安易に考えるべきではありません。
 ところで…。
 行政刷新会議が終わりましたが、傍聴に訪れた人数が日ごとに増え最終日は入場制限をしたほどだったそうです。また、ネット中継のアクセス数も2万件をはるかに越える数字だったそうで、国民の関心が高かった証拠です。
 刷新会議の結果に対して「期待はずれ」の声も聞こえますが、大切なのは今まで密室で行われていた予算配分のやりとりが公開されたことです。これだけでも刷新会議の意義があります。それも政権交代が起こったればこそです。
 今週、本コーナーで「特殊法人は国を潰す気か」という本を紹介していますが、これなどを読みますと国民に隠れたところで、または国民の無関心さにかこつけて、いかに無駄な税金の使い方がされているかがわかります。今回の行政刷新会議ではそうした特殊法人も仕分けの俎上に上がったようですが、天下り先の実態が少しは公になったのではないでしょうか。
 天下り先だけとして存在している特殊法人は、極端に言いますと「官僚が税金を着服している」ことと同じです。自分たちの退職後の収入を税金から得るためだけの法人だからです。このような特殊法人での仕事を僕は「服業」と呼びます。
 じゃ、また。




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