<ただの人>

pressココロ上




 僕のホームページやブログを検索で訪問してくださる方がいます。ホームページは脱サラ関係の内容が書いてありますので、自ずとキーワードは「脱サラ」とか「ラーメン」または「開業資金」などとなります。ですが、ブログはちょっと趣が異なります。ブログの場合はそのときどきの時事に関連したことを取り上げていますので一貫して通低しているテーマはありません。ですからキーワードとなる言葉も一貫していませんが、それでも検索に際し重複している言葉というのはあり、そしてランキングというものが形成されます。
 そのランキングの上位に「竹江孝」という言葉があります。この言葉だけを聞いてピン!とくる人はあまりいないと思いますが、この言葉は人の名前です。そしてどこに登場するかといえば、「積木くずし」という本の中に出てくるにすぎません。僕はコラムで「積木くずし」とともに「竹江孝」さんを取り上げたことがありました。昨年2月21日のコラムでした。
 今週、なぜこの話から入ったかといいますと、先週の金曜土曜の二夜連続でその最終章が放映されていたからです。
 この物語の不幸の核心は有名税です。著者である穂積氏も語っているように、親子の壮絶な体験を本にして出版などしなかったなら不幸はもっと早く収拾していたように思います。出版してベストセラーになったことにより、ある意味、一般大衆という不確かで無遠慮な魔物に食い荒らされた家族のような気がします。真実があからさまになればなるほど同情の気持ちが湧いてきます。
 そんなこととは関係なく世の中は動きそして政界も動きます。気がついてみますと、あっという間に政党が14党にもなってしまいました。これだけの政党がありますと、「なにがなんだかわからない」というのが多くの人の正直な気持ちのはずです。
 先週も少し触れましたが、僕がやはり一番納得がいかないのは橋下氏の日本維新の会と石原氏の太陽の党の合流です。橋下氏は石原氏と会談する前日までは合流に否定的な発言をしていました。「政策の一致が前提条件」となんども会見で話していたにも関わらず、政策の一致よりも合流が先にありきのような結果でした。しかも代表が石原氏というのも合点がいきません。ちょっとうがった見方をするなら、橋下氏は石原氏に弱みを握られているかのような行動にさえ映ります。僕と同じような感想を持った人は多いのではないでしょうか。
 民主党は惨敗すると予想している人は多いと思いますが、そうした結果を招いたのは民主党自身です。結局、政権交代だけが目的の同床異夢の政治家が集まった政党ではなにもできないことを証明したようなものです。かつて自民党が初めて下野した1993年の細川内閣のときも同じでした。このときも自民党から政権を奪い取ることだけが目的で政策の中身は後回しになっていました。八党の連立政権では細川内閣の短命は最初から決まっていたのかもしれません。
 こうした過去を振り返ってみますと、結局、政策理念よりも数を増やすことだけが目的だったり、または政権を獲得することだけが目的の政党は成功しないことが証明されています。それと同じことをまた橋下氏たちは行なおうとしています。
 維新の会は太陽と合流するに際して政策をすり合わせたようですが、出てきた政策は維新の会が当初掲げた政策の面影がなくなっています。まさに骨抜きにされた印象は免れません。果たして…。維新の会は合流によって魅力が半減したように思います。維新の会は「ただの政党」になってしまいました。
 民主党の鳩山氏が引退を表明しました。僕的には遅きに失した感がありますが、本来なら首相を退陣したときがそのタイミングだったと思っています。一度引退を口にしながら数日も経たないうちに撤回するのではあまりに軽い政治家の言葉です。思い返してみますと、鳩山首相は言葉が軽いことがあらゆることの失敗の源のように思います。
 沖縄県の米軍基地を「最低でも県外に」などという発言はあまりに軽すぎてふわふわしてしまいつかみどころがなくなり、現在でも収拾がつかない状態です。軽い言葉しか発することができない人は政治家よりもただの人になるのが相応しいように思います。
 鳩山首相の引退に関連して新聞では菅首相の動向も伝えていました。菅氏が退陣してからまだ2年も経っていませんが、すでに過去の人になっているようです。記事には地元でビールケースの上に立ち演説している写真が掲載されていました。写真からは本当にただの人の雰囲気しか伝わってきませんでした。首相時代は登場するだけで華がありカリスマ性もありましたが、首相でなくなった現在、カリスマ性もなくなっているのが不思議でした。
 確か、今月だと思いますが、ヤフーのトピックに「なんでんかんでん」という有名ラーメン店が廃業するニュースがありました。このラーメン店は川原ひろし氏という有名店主がマスコミに出まくって売れていたラーメン店です。しかし、時代の流れには逆らえず閉店に追い込まれたようです。川原氏の説明によりますと、今の若い人が車離れを起こしていることが理由のひとつのようで、結局飲食業にとっては立地環境が一番重要であることを証明したように思います。それにしても廃業を報告する川原氏もかつての輝きは失せただの人になっていました。
 先週、本コーナーで紹介しました九州少年は甲斐バンドの甲斐よしひろさんが上京するまでの青春時代を綴った本です。その本を読んだからといわけでもないのですが、僕が今毎日聴いているのは甲斐バンドの「シネマクラブ」です。You Tube ではフランスの女優ソフィー・マルソーさんの写真とともに流れているのですが、これがまた歌詞とマッチして素晴らしいのです。是非、興味のある方はYou Tubeで「シネマクラブ」と検索してみてください。
 この本は読みやすくとても面白かったのですが、僕は「積木くずし」を見ていて甲斐さんの最初の奥さんのことを思い出していました。僕の記憶では甲斐さんの最初の奥さんは売れる前からつき合っていた同郷の女性だったように思います。売れる前から結婚していたと聞きますと、やはり好印象を持ちます。売れて成功したあとの人はお金も社会的名声もありますからどんな人であろうとも魅力的にみえます。しかし、成功したあとの男性と結婚をする女性には少しばかり違和感を覚えます。そのような女性よりは成功する前のただの人のときに結婚をしている女性のほうが人間として純粋なように思えます。男性の名声やお金が目的で結婚したのではないことを示しているからです。やはり男性でも女性でも純粋な愛を全うしているように映る行いには尊いものを感じます。そういえば、今のNHKの朝の連ドラも純と愛でした。
 このように考えている僕ですから、甲斐さんと最初の奥さんは理想の夫婦のように思っていました。しかし、甲斐さん夫婦は離婚をしてしまうのですが、その理由が奥さんの不倫にあったと知ったときはショックでした。奥さんは甲斐さんがツアーで忙しく家を留守にしている間にどこかのセールスマンと駆け落ちをしたようでした。人とは不思議なものです。普通の人の感覚では、自分の夫がせっかく売れて名声もお金も得たのですからその幸せな境遇を死んでも手放したくないと考えるはずです。ですが、奥さんは有名になりお金も名声もある甲斐さんよりもただの人を選んだことになります。人間は不思議です。
 アーティスト系の人に多いのですが、売れる前に結婚していた人が売れたあとに離婚してもっと若くて綺麗な女性と再婚する様は見ていてあまり気持ちいいものではありません。名前は上げませんが、そういう人たちは売れない頃の純粋な気持ちをなくしてしまったように感じてしまいます。しかし、昔から「英雄色を好む」といいますから、男の性としてわからないでもありませんが…。
 ところで…。
 先週、あとひとつ僕にとって印象に残るニュースがありました。小沢一郎氏の無罪確定です。よくマスコミでは、有罪になるか無罪になるかという瀬戸際の状態を指す言葉として「塀の上を歩いている」という表現を使います。塀とは刑務所の塀を指すのですが、刑務所の内側に落ちるか外側に落ちるかでは人生が全く違ったものになってしまいます。その意味でいいますと、小沢氏は塀のうえを歩いていて内側に落ちなかった唯一の政治家ではないでしょうか。これは特筆すべきことです。
 このコラムでなんどか紹介していますが、かつて師匠であった田中氏のロッキード裁判は長期化していました。田中氏にはたくさんの子分たちがいましたが、長期化するうちに徐々に田中氏の下を離れていくようになりました。その究極の形が竹下登氏が作った経世会です。それはともかく、そのような状況の中、ロッキード裁判を最後まで傍聴したのは若手の小沢氏だけだったというエピソードは有名です。
 そうした義理堅い姿勢が小沢氏に幸運を呼び込んだのでしょうか。小沢氏ほど運のいい人はいないように思います。小沢氏が訴追されたころはちょうど検察批判が起きていたころです。強引な捜査方法があり、違法ともいえる取調べがあり、そして冤罪があり、といったこれまでの検察の膿がちょうど出てきかかった状況と、検察が小沢氏を不起訴にしたことは無関係ではないでしょう。検察が弱気になっていたのは間違いありません。今回の小沢氏の起訴は検察が行なったのではなく検察審議会が行なったものですが、検察が不起訴を決めた時点で小沢氏の勝訴は決まっていた感じまでします。
 裁判でどのような判決が下されようと、庶民感覚でいうなら4億円というお金を右から左に動かせる政治家に清廉潔白な政治家がいるはずがありません。4円“置く”のではなく4億円ですから…。
 裁判では勝利を納めましたが、来月の選挙では4億円の人が“ただ”の人になる可能性もなきにしもあらずです。
 じゃ、また。




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