<上辺に惑わされないために>

pressココロ上




 一気に選挙の季節がやってきました。東京では都知事選もあり慌ただしい年末となり「師も走る」に相応しい12月になっております。都知事選について正直な感想をいいますと、どの候補者にも一長一短があり誰に一票を投じてよいか迷うところです。たぶん同じ気持ちの人が多いでしょうが、普通に考えますと猪瀬氏か松沢氏あたりで決まりそうな感じがします。それにしても石原氏の都知事としての最後の仕事が「尖閣諸島の購入」だったのは石原氏を象徴しているように思います。
 その石原氏が国政に復帰しましたが、その過程に対してはいささか違和感を覚えます。第三極を作るのが目的の政党もしくは勢力では最終的には崩壊するのは目に見えています。これまでなんどその光景を見てきたでしょう。
 先週も書きましたが、今の橋下氏は政界に進出した当初とは変節しているように思います。石原氏と合流する前と後ではいい意味での素人感覚が弱まっています。そしてその変節は橋下氏または維新の会の魅力を半減させてしまっています。しかも橋下氏はそのことに気がついていないようです。人間は渦中に入り込んでしまうと周りが見えなくなり、正しい判断ができなくなることがあります。今の橋下氏はまさにそのような状況です。
 橋下氏には賢明なブレーンがいるはずですが、その方々はアドバイスをしていないのでしょうか。僕はそれが不思議でなりません。もしかすると、石原氏と合流することを決めた段階でブレーンとの関係を見直したか、もしくはブレーンの顔ぶれを一新することを選んだ可能性があります。ちょうどAKB48が秋葉原から全国区へ進出する際にブレーンを秋元氏にバトンタッチしたような感じです。そのように考えなければ現在のような変節した橋下氏を理解することはできません。これまでの橋下氏ブレーンの顔ぶれと石原氏のポリシーには隔たりあるように思うからです。この決断が吉と出るか凶と出るかは選挙の結果で示されます。
 政党の党首が一堂に集まった討論会がネットで配信されていましたが、このやり方自体が画期的でした。中高年以上の人たちの中には時代の変化を実感した人も多かったはずです。
 全部を見たわけではありせんが、討論会の進行の仕方というか捌き方がうまかったような感じを持ちました。ニコニコ動画という新しいメディアが主催したことに意義があり、テレビ局などに出る著名な評論家やキャスターに負けず劣らずスムーズにきれいに進めていたように思います。テレビ局が評論家や専門家を交えて下手に仕切るより公平で分かりやすかったのではないでしょうか。その意味でも、今回のニコニコ動画が果たした功績は大きいものがあります。
 それぞれの党首の主張を大まかに分けますと、原発対策と外交対策、そして経済対策に収斂されると思います。この中でマスコミも含めて一番注目を集めているのは原発に対する考え方ですが、投票をする基準が原発の存廃だけというのはちょっと疑問です。僕たちが社会生活を営むうえで大切なのは原発だけではありません。確かに大震災で原発の恐ろしさを知りましたが、社会生活を営むうえで大切なのはこの1点だけではないはずです。原発があろうがなかろうが外交問題がこじれて武力衝突が起きても社会生活に損失を与えますし、経済が立ち行かなくなれば明日のご飯もままならない人が多数出てきて社会不安になり、それが高じて社会崩壊が起きることもあります。
 そうしたことを考え合わせるなら、ひとつだけに焦点をあてそれだけを投票する基準にするのは危険です。全体のバランスを見ながら総合的に判断して投票することが求められます。
 因みに、原発以外で対立軸となってわかりやすいのは自民党の安倍総裁の主張です。安倍氏は外交問題では中国に対して強行姿勢をとるようですし、自衛隊を将来的に防衛軍にすることを主張しています。また経済問題においてはインフレターゲットの設定や更なる国債の発行も厭わずしかもその国債を日銀に全額購入してもらう構想さえ主張しています。
 読者の方はおわかりですね。僕はこの主張に危惧を覚えています。ですから批判的意図も含めて紹介しているのですが、この2つの主張に僕は反対です。僕は公明党支持者ではありませんが、自衛隊に関しては討論会で山口代表が主張していた考え方が一番現実的で真っ当な対処の仕方だと思っています。
 経済問題については安倍氏は経済の専門家でもないにも関わらずあまりに具体的に話を展開しすぎです。せめて安倍氏に経済専門家の経歴があるなら説得力もありますが、経済に素人である政治家が安易に経済政策について語るのは軽々しさしか感じません。そもそもこれ以上国の借金を増やしてその後始末をどのようにするつもりなのでしょう。インフレターゲット論や国債を日銀に購入させることを表明したことで株価が上がったと安倍氏は自画自賛していますが、多くの人が一時的なものにすぎないと思っているはずです。マニフェストや公約など表面的なことに惑わされることなく本質を見抜いて投票しましょう。
 その本質に関していうなら、先週の週刊ダイヤモンドは就活の特集を組んでいました。1日に平成26年に卒業する大学生の就活が解禁されました。僕が大学生の当時は就活などという言葉すらなく、単に就職活動と言っていました。僕の時代は大学4年生になってから就職活動をするのが一般的でしたから今から思いますとのんびりしていた時代です。
 それから30年以上が過ぎ時代は変化していますが、就活に関してはなにも変わっていないというのが僕の実感です。僕は「就活をする前に」というテキストを書いていますが、毎日誰かが読んでくださっています。
 週刊ダイヤモンドに大学の就職アドバイザーが記事を書いていますが、就活に対する僕の実感の正当性を強くしました。30年前から企業の採用担当者の考えややり方がいろいろと言われていましたが、基本は全く変わっていませんでした。記事で印象に残ったことを紹介します。
 現在の就活における最初の行動はネットでエントリーすることのようです。就活するには応募をしなければなにもはじまりませんから、その応募をすることです。昔でしたら履歴書など応募書類を企業に送付することにあたりますが、そうした行動がネットでは簡単にできることを示しています。また、今の時代にネットを活用するのは常識ですが、企業にとってはそのネット活用力を知る意図もあるようです。
 しかし、アドバイザーの記事を読みますと、結局、企業はネットで応募してきた学生の選抜を採用活動を専門とする企業に丸投げしている実態が紹介されていました。しかし、考えてみればわかります。ネットでの応募は簡単にできます。しかもそれほど真剣に応募を考えていない学生も「不安感を払拭する目的」でエントリーをすることもあります。そうした応募状況の中で企業の採用担当者だけで対応できるわけがありません。専門企業に丸投げするのも当然の対応です。
 このような実態を理解するなら学生も就活のやり方を見直す必要があります。就活の原点に戻ることです。それは学校にレベルに合った企業にしか就職できないという現実です。有名一流企業が「どんな学校にも門戸は開かれている」と書いてあったり謳っていたりしていても、それは上辺だけ表面的な表現に過ぎません。本質的な部分では有名一流企業にはやはり超有名大学の出身者しか試験を突破することはできません。なぜならエントリーが安易にできるがゆえに選抜に時間も費用もかけていられないからです。
 このような現実を踏まえたうえで就活に臨むのがベストなやり方です。しかし、学生に多く見られる勘違いは情報に振り回され、惑わされている姿です。就活という渦に巻き込まれると現実や実態を見る目を失ってしまいます。今の橋下氏と同じ状況になってしまいます。だからこそ、就活生が気をつけなければいけないのはブレーンの選択です。
 就活生は不安ですから情報に飢えています。ですから、噂話に振り回されることが多くなり、そして就活を専門とする業者の情報に頼ることが多くなってしまいます。ですが、その業者は就活生からお金をもらうわけではありません。業者にお金お支払うのは企業です。つまり企業に利益をもたらすのは学生ではなく企業でしかありません。ですから企業側に立ったアドバイスをする傾向があります。このような状況の中で就活生が業者に全幅に信頼をおいてアドバイスを求めるのは賢明な就活活動ではありません。適正なアドバイスを求めるなら中立な立場にいる人を選びましょう。そしてそれは誰かといえば、答えは簡単です。大学の就職課もしくは関連した部署です。
 大学は就職状況が大学の存続に関わってきますから真剣に学生の立場に立ったアドバイスをしてくれます。就活生の皆さん、もっと就職課を利用しましょう。それが就職活動という戦場で上辺情報に惑わされずに活動できる唯一の方法です。
 
 ところで…。
 またぞろ小沢氏の動きが注目を集めていますが、今回は女性を前面に出して自らは後ろから操縦する道を選んだように見えます。このスタイルこそ小沢氏が得意とする方法で小沢氏はこのようにして政界を歩んできました。その小沢氏を未来の党の党首嘉田氏は苦い薬と例えていましたが、まだ本当の恐さをわかっていないように思います。あのような例えをすること自体が小沢氏を甘くみている証拠です。もしこのまま合流を進めていくなら苦い薬どころか副作用の強い抗がん剤となるでしょう。
 じゃ、また。




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