<老朽化>

pressココロ上




 師走に入り慌ただしい時節になったしょっぱなに驚くべき事故がおきました。中央自動車道・笹子トンネル内での天井落下です。お亡くなりになった方もいらっしゃいますが、まさかトンネルを走行中に天井が落下するなどとは誰も予想などすることはできません。本当に「人生一寸先は闇」を実感する事件です。 
 僕が見たニュースではNHKの記者の方がたまたま現場に居合わせたようでそのときの模様を話していました。車を運転していると左側の天井がメリメリと剥がれるように落ちてくるのが目に入り、その現象が右側の天井にも起きてきたそうです。記者はその中を車のアクセルを最大にして走りぬけたというのですから、さながらアクション映画の一場面のようでした。走り抜けたあとの車を見ますと、助手席側のドアガラスは粉々に砕かれドアも天井部分から潰れていました。奥様が助手席に乗っていたそうですが、奥様は無事だったのでしょうか。
 事故の原因が明らかになるにつれ、中日本高速道路の管理の杜撰さに驚いた人も多かったと思います。天井はパネルを敷き詰めて作られていたそうで、その1枚の重さが1トンもあるそうです。そのパネルを上部から吊り下げていただけというのは驚きでした。素人が考えてもそんな安易な設置方法で安全性が確保されるとは思えません。しかし、今までなんの対策もとってこなかったのですから専門家はそれでも充分に頑丈で耐えられると思っていたのでしょう。しかし、天井は落下しました。警察が業務上過失致死の疑いで捜査を始めたようですが、仕事に対する責任を考えるなら当然の動きです。
 僕は飲食業に関する情報を発信していますが、飲食業もまかりか違えば人の命を奪うことがある業種です。焼肉チェーン店での生のユッケを食べて死亡して事件は記憶に新しいところですが、人間の口の中に入れるものを提供していることの重大性を常に意識していなければいけません。
 飲食業ではありませんが、中国への旅行で死亡した事件もありました。これも旅行会社が仕事を甘くみていたとしかいいようがない事件でした。先の焼肉チェーンもこの旅行会社も倒産しましたが、どちらの社長も起業をして必死に働いていたと想像できるだけに、同情の気持ちも起きます。小さな会社は管理を完璧にこなすだけの余裕がないことも想像できるだけにその思いが強くなります。それでも、結果に対しては責任を負うのが社長の務めです。
 選挙の特番が各局で組まれていますが、先週はニュースステーションの党首討論を見ました。僕があのような番組を見るときは政策や主張などを聞くというよりは討論における振舞いを見てその人の人物像を観察するようにしています。例えば、他人が意見を言っている最中に強引に割り込んだり、ただ声を大きくすることで自分の意見の正当性を訴えようとするなど人それぞれです。あのようば場面でこそ人間の本性が出るように思えてなりません。
 番組の進行は古舘さんが行なっていましたが、あのような番組をやっていますとバッシングされることが多くなります。理由は社会に対する影響力が強いからです。その古館さんが石原氏に対して気色ばむ場面がありました。石原氏は憲法を変えることを主張している政治家ですが、その考えに対して古舘さんが「今の平和憲法があったからこそ、今の石原さんがいることができるのではありませんか」と質問していました。この二人のやり取りは時間の制約もあり深くは突っ込めませんでしたが、僕は古舘さんの言いたいことがわかりました。というか賛同できました。
 憲法に関しては単純にいうと「変えるべきだ」と「今のままでいい」というふたつの意見にわかれます。「変えるべきだ」の主張の根本には「米国から押し付けられた」という発想があり、「今のままでいい」の主張の根本には「憲法に戦争放棄があったからこそ平和があった」という発想があります。
 自衛隊を国防軍にしようという安倍氏の発言もありますが、たぶん若い人たちにしてみますとこれらの意見の対立はあまり興味がわかないと思います。ですが、ひとつ間違えると国が危険な方向に進む第一歩になる可能性もあります。危険な方向に進んでしまいますと、自分たちの自由がなくなることにつながります。ですから、目の前の生活のことだけでなく国家の方向性を正しいほうへ向かわせるという意味で政党および政治家の主張に耳を傾けてほしいと思います。
 新聞報道などを見ますと20代30代の非正規社員の割合が高いそうです。この年齢での非正規社員は自分が望んでなっている印象があります。こうした現象も晩婚化が進む理由だそうですが、僕のいろいろな職場の経験からしても若い人の非正規社員の多さは事実のように思います。また、40代以上の場合はリストラなどの関係で非正規社員にならざるを得ない状況に追い込まれているのが現実です。立候補をしている政治家の方々はこのような実態を知っているのでしょうか。僕はそれが疑問です。
 笹子トンネル事故の原因は老朽化が原因ですが、普通の住宅でも10年に一度くらいはメンテナンスが必要と言われています。それなのに30年以上もなにもメンテナンスをしていないことの危険性を関係者は誰も考えなかったのか不思議です。そういえば、数年前高速道路の無料化がしきりに叫ばれていたことがありました。確かそのときは高速料金を新しい高速道路建設に使うことに非難が集まっていたように記憶していますが、今になって思いますと新しい高速道路建設でもなく無料化でもなくメンテナンスに使われるのが正しい使われ方だったのかもしれません。
 自民党の安倍氏は国債を発行して公共工事をすることで景気の上昇を行なう旨を発言していますが、無理して新たな公共工事をしなくとも戦後60年以上が過ぎこれまでに造られてきたインフラをメンテナンスするだけでも大規模な公共工事になります。以前見たテレビ番組では戦後に造られた水道管が古くなり使用に絶えられないほど傷んでいるそうです。水道管の水は僕たちが日常生活で口にするものです。その水道管が古くなり水道水に悪影響を与えているのですから本来ならもっと注目を集め国会でも取り上げられなければいけないように思います。
 老朽化といえば年金問題が近頃は話題に上らなくなっていますが、やはり先週のニュースステーションで現状を伝えていました。覚えているでしょうか。5年前安倍さんが首相だったとき「消えた年金5000万件」の存在が明らかになったことを。番組での報告によりますと5000万件のうちまだ2200万件が手付かずの状態になっているそうです。
 現在、日本年金機構から「ねんきん便」なるものが半年に一度送付されてきます。そこには支払い状況が記載されているのですが、その内容と自分の記憶に違いがあるときは訂正を申請するようになります。しかし、誰のものかわからない消えた年金が2200万件もある中でのねんきん記録は意味がないように思います。この点についても議員さんの誰も異議を唱えないのが不思議です。
 このように政治にしろインフラにしろ過去を振り返ってみますと、それら全てが50年以上経過しています。このような状態で老朽化による弊害が生じないほうが不思議です。是非とも政治をメンテナンスするつもりで選挙に行きましょう。
 ところで…。
 選挙運動真っ盛りで立候補者の方々が必死に活動をしています。先日も、たまたま通りがかったところであの橋下氏と石原氏が演説する場面に遭遇しました。その人の多さに驚かされたのですが、「一目見よう」という野次馬精神の人も少なからずいたようです。
 それにしても…、橋下氏の本業は大阪市市長のはずです。これだけ選挙活動をしていて市長の業務はいったい誰が取り行なっているのでしょう。もし市長が市長の仕事ではない活動をしていても市の運営ができるなら市長という役職などいらないことになってしまいます。
 福島県矢祭町の議員さんは日当制で活動しているそうです。つまり議員としての仕事を1日いくらの報酬で請け負っていることになりますが、政治家としての基本的な姿はここにあるような気がしてならないのは僕だけではないでしょう。
 じゃ、また。




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