<マギー>

pressココロ上




 久しぶりにリアルタイムで野球を見ました。しかも二日連続で。理由は、昨日見た田中投手の投げる姿に惹かれたからです。晩御飯を食べるときに、たまたまテレビをつけたら日本シリーズをやっていて、普段ならそれほど興味は持たないのですが、昨日は田中投手を見ていてそのまま釘付けでした。
 もちろん田中投手が今年一回も負けていないのは知っていましたが、それほど感動していたわけでも感激していたわけでもありませんでした。ただ「すごいなー」と思っていただけです。
 でも、どうして「勝ち続けられるのか」には興味がありました。そういう疑問がありましたので田中投手の投げる姿を「一度見てみたい」とも思っていました。そして、昨日見てその理由の一端がわかったように感じました。
 とにかく「あきらめない」「捨てない」「投げない」のでした。もちろん、最後の「投げない」は「ボールを投げない」のではなく「試合を投げない」とか「勝利に対する希望を投げない」という意味です。
 田中投手が前人未到の記録を作れたのは、こうした前向きな姿勢と運が偶然にも完璧にマッチしたからにほかなりません。ですが、「あきらめない」「捨てない」「投げない」を1年間通して続けるのは簡単ではありません。それをできたことが素晴らしいの一言です。
 最終戦に勝利して日本一になった楽天ですが、僕は勝負の分かれ目は第六戦で田中投手が最後の打者・高橋由選手を空振りの三振にとる前にあったと思っています。
 実は、あの場面で田中投手は気持ちが切れそうになっていました。負けていたにも関わらず最後の9回まで投げ続けていた田中投手でしたが、自分の気持ちとは裏腹に思うようなピッチングができていなかったようでした。先頭打者の寺内を空振りの三振にとり、次打者の長野も遊撃ゴロに仕留めました。本来なら、いつもの田中投手の流れでいきますと、次打者の亀井選手も凡退に仕留めるはずでした。しかし、二塁打を打たれたしまったのです。この日の田中投手を象徴するような場面で、このとき田中投手の周りからは苛立ちと落胆が混ぜ合わさったような雰囲気が出ていました。
 たぶん、あのまま投げ続けていたなら高橋由に適時打を打たれ追加点を取られていたでしょう。追加点を取られなかったにしても日本シリーズの流れが巨人に傾くような雰囲気のまま試合を終えていたはずです。それほど重要な場面でした。
 その田中投手の気持ちを落ち着かせ、本来の「あきらめない」「捨てない」「投げない」の精神状態に戻したのはサードにいたマギーでした。あの場面、マウンド上の田中に近寄り声をかけていました。ものの15秒くらいでしょうか。
 あのタイミングで声をかけることの意味を誰よりも知っていたのがマギーであり、それを感じたのは田中投手だったはずです。
 本来なら、あの場面であの役割をしなければいけなかったのはショートの松井選手です。チームキャプテンであり、野球経験も豊富なのですから、あのときに田中投手の身体が発していた危険信号を察していなければいけなかったのです。楽天はマギー選手に救われたと言っても過言ではありません。
 僕が最初にマギー選手に興味を持ったのは、なにかの記事で「自分はジョーンズ選手を尊敬している」と語っているのを読んだからです。確か、そのときはジョーンズ選手よりも成績はマギー選手のほうがよかったにも関わらずです。このような謙虚な選手に悪い人はいないと思ったのがきっかけでした。
 そうした知識があっただけに、あの場面で田中投手に近寄りなにかを話している姿を見て感動した次第です。
 田中投手が出てきた最後の場面も、ドラマや映画のようにきれいに三者凡退にならないところが、作り物でないものが持つ迫力です。あの場面、僕は「とにかくなんでもいいから、無事に9回が終わること」だけを願いながら見ていました。
 いやー、久しぶりに野球を見て涙が出てきました。
 じゃ、また。




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