<一方的>

pressココロ上




 昔は情報を得る手段がそれほど多くはありませんでした。ほとんどが新聞かテレビ、ラジオそして週刊誌といったところでしょうか。しかし、現在はインターネットという手段も加わり、しかもインターネットはたくさんのメディアから報じられる情報の中から選りすぐった情報を取り上げる能力があります。つまり、ほとんどといっていいくらいのメディアの中から価値のある情報を集めて伝えていることになります。
 このことはつまり、情報の受け手はどのメディアから得た情報なのかがわからなくなることに通じます。実はこの事態は、今週コラムを書くときに僕自身が体験したことで、自分でも驚いています。
 今週のコラムのネタを自分では新聞の記事で読んだような記憶がしていました。ですが、コラムを書くにあたってネタ元を整理していて、新聞ではなくネットで読んだ記事であったことに気がつきました。結局、思い違いをしていたわけですが、人間の記憶ほど当てにならないものはありません。
 さて、今週僕が題材に取り上げるのは情報の信憑性と情報を受信するときの心構えについてです。僕が媒体を記憶違いしていた記事は「大津市のいじめ事件」に関することでした。
 2011年に大津市でいじめを苦にした中学生が亡くなった事件を覚えている方は多いでしょう。先週のニュースで僕が印象に残った記事は「いじめた加害者の祖父」としてネット上にプライバシーを書き込まれた方に関する記事でした。
 この方は加害者の少年とはなんの関わりもなく、ましてや祖父でもなんでもないにも関わらず「加害者の祖父」として37才の男性に氏名や住所など個人情報をネット上に書き込まれたそうです。その行為により現在でも被害を受けていると報じていました。ニュースになったのは、男性がその相手に対して損賠賠償を求めることにしたからでした。
 このニュースを読んだときの僕の感想は「社会に対するマスコミの啓蒙」です。このニュースからは「安易に個人情報をブログなどネットに書き込むことに対して警笛を鳴らす」意図が感じられます。
 つい先日には女子高生がストーカーから殺害された事件で犯人がプライベート写真をネット上に公開していました。インターネットには誰でもが発信者になれるという長所もありますが、反対に弊害もあります。こうした事件はその弊害が表れたものといえます。
 しかし、この弊害を根絶することは不可能に近いかもしれません。世の中から犯罪がなくならないのと一緒です。ですから、ネット上に溢れる情報を有意義なものにする方法は受け手である閲覧者が情報の取捨選別をすることに尽きます。情報の信憑性も含めて役に立つか、意義があるかなどを閲覧者が判断することが大切です。
 そして、そのことは新聞やテレビが報じるニュースについても同じことがいえます。これまでにも間違った事実をニュースとして伝えた例が過去に幾つもありました。例えば、オウム真理教事件での河野さんに対する取り上げ方です。当初、マスコミは警察発表を鵜呑みにして、こぞって河野さんを犯人扱いをしていました。
 また、2009年の郵便局不正事件における村木局長逮捕事件も記憶に新しいところです。この事件も最終的には検事による証拠改ざんという事実が出てきて無罪が実証されることになりましたが、逮捕当初はやはりマスコミは村野氏を犯人として報道しています。
 このようにマスコミが一方的にあまりに大々的に報じるときは、情報の受け手は一度立ち止まり冷静になる必要があります。一度立ち止まり心を落ち着かせ、浮き足立っているマスコミの情報を整理することが必要です。
 先週のニュースで僕がそのことを感じたは徳州会事件に対する報じ方です。あまりに大々的で一方的な印象があります。
 このように書きますと、僕が徳州会の回し者のように勘ぐられそうですが、もちろん違います。関係者でもなければ取引業者でもありません。但し、ずっと前から徳州会には関心を持っていました。
 その理由は日本医師会と対峙する姿勢をとっていたからです。徳州会は「命だけは平等だ」とか「ミカン1個ももらわない」などをモットーに24時間病院を開いたりして医療界の革新的な存在でした。見方によっては、医療を医師側ではなく患者の側の視点で行う先駆的役割を果たしていました。そうした活動が日本医師会から反発されるのも当然です。日本医師会は医師の待遇を改善するための組織ですから、相容れるわけがありません。
 そうした経緯をみていただけに、選挙のたびに買収疑惑が報じられることに不思議な気持ちになっていました。正義の顔と悪の顔。どちらがほんものなのか興味深くみていました。それだけに今回の逮捕には少し違和感を感じざるを得ません。
 あまりに一方的な徳州会批判の洪水は、これまでの医療界を革新しようとしていた功績を消滅させようとしているかのようです。患者の側に立った医療を目指していた活動についても報じるべきではないでしょうか。現在、徳田虎雄氏は難病にかかり入院中で身体が不自由な身です。かつての威光が衰えたのは間違いないところでしょう。そのことと今回の逮捕劇が偶然とも思えないのです。
 さて、真実はどこにあるのでしょう。
 じゃ、また。




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