<大物>

pressココロ上




 NHKの会長が就任記者会見で話した内容が物議を醸し、国会で説明を求められる事態になりました。一般の人でも、籾井氏の発言に違和感を持った人は多いのではないでしょうか。普通の感覚の人であるなら、あのような公の場での発言にはふさわしくないと感じと思います。しかし、そうした感覚は持ち合わせていなかったようです。
 記者会見での映像を見た印象では、そもそもの話しぶりに慎重さが欠けていたように思います。僕のような器の小さな人間ですと、あのような場では緊張してざっくばらんな対応はできません。ですから、あのような本心を吐露することなどは到底できようがありません。それができるということはそれだけ器が大きい、つまり大物ということですが、大物といわれる人の傾向として公の場でも物怖じしない性向があります。
 同じように大物である人たちの共通点としてあげられるのが、マスコミ対応を間違える傾向が強いことです。普段、王様の立場にいることに慣れていますので、ついそのままの気持ちで対応してしまうようです。
 以前にも、あるホテルチェーンの社長が法令違反の建築をしていながら、記者会見でその重要性を認識しないまま記者会見を行い、記者たちから批判されていました。そのときも、実にざっくばらんで飲み屋かどこかで気さくに世間話をしているような会見でした。最終的には、後日謝罪会見を迫られることになったのですが、大物といわれる人たちにたまに見られる光景です。
 大物の人たちはほとんどが年齢を重ねています。最初から大物の人物などいません。そして、年齢を重ねていく中では苦しい経験や辛い体験をしているはずです。ですから、多くの辛酸を経た後にある大物という位置です。本来ならそのような経験をしているのですから、大物といわれる人はものごとをわきまえた対応や行動をとる人たちのはずです。ですが、実際にはそうでない人もいます。
 現在都知事選の真っ最中ですが、ここにきてようやっと有力候補者4人が全員揃って意見を主張し合う場が設けられるようになりました。先週あたりの状況では、4人が揃うことがないまま投票になってしまう危惧を感じていましたので、最悪の事態は免れてよかったと思っています。いくら盛り上がりに欠けるとはいえ、立候補者が揃って意見を述べ合う場面がないまま投票に至るのでは民主主義の崩壊です。
 それでは少しでも都知事選挙が盛り上がるように、僕個人の各候補者の印象を述べたいと思います。年齢順です。
 細川護熙氏(76)は言わずと知れた元首相です。とは言いながらも、元首相ということを知らない若い人もいるかもしれません。政界を引退してから20年以上が過ぎていますから、知らない人にとってはただのおじさんです。
 細川氏に関しては、応援をしている小泉元首相の存在も忘れてはいけないところです。このような大物政治家二人がタッグを組んだのですから、脱原発によほどの思い入れがあるのでしょう。しかし、僕的にはやはり都政と原発の関連性は今ひとつ弱いように感じています。それよりも、細川氏がどうして今頃都知事に立候補したのか腑に落ちない感じがしています。
 もう大分前ですが、僕はコラムで細川氏に対して批判的な文章を書いた記憶があります。確か、当時は陶芸家として活動していたと思いますが、その立場で取材を受けたときに政治に対して距離を置いているというような発言を聞いたからでした。仮にも、一国の総理まで勤めた政治家が国政に対して無関心でいることに憤りを感じたのでした。そのような思い出があるだけにもう若くはない今になって都政とはいえ政治家に復帰する気持ちになったのが不思議です。
 次は、前日本弁護士連合会長の宇都宮健児氏(67)です。宇都宮氏は日本弁護士連合会の会長まで務めていますが、僕の印象では「棚から牡丹餅」で会長になった感があります。それは本来当選すべき候補者が派閥の力学が働き票が集まらなかった結果により偶発的になったように記憶しているからです。つまり、大きな組織のうえで人を束ねる能力に疑問がついている印象です。僕の思想的な面では一番支持したいのですが、現実的な面では不安を感じてしまいます。
 次は、元航空幕僚長の田母神俊雄氏(65)ですが、田母神氏が有名になったのは2008年に航空幕僚長という立場にありながら右派思想を主張する論文を発表したときでした。結局、麻生内閣のときですが解任され自衛隊を退職しています。
 不偏不党で中立な立場である僕からしますと、あまりに右派思想を前面に出しすぎるのは今の時代には適さないような気がしています。テレビでの発言を聞いていますと悪い人ではないようですが、東京都の実態をあまり把握していないようで、その点においてマイナスな評価です。
 最後に、元厚生労働相の舛添要一氏ですが、この4人の中では最も東京都の実態を掴んでおり、やらなければいけない政策をしっかりと持っているように思います。国政時代の最後のほうでは政党再編を目指していたようですが、結局結果を出せないまま引退した過去があります。
 一度は見切りをつけた政治家ですが、やはり政治に対する灯火は消えていなかったのでしょう。くすぶっていた火の粉が燃え盛ったように感じています。舛添氏については離婚した奥さんのことやお母様に対する介護などプライベートなことで中傷する記事が報じられています。僕はなにが事実かわかりませんので、そうしたことは全く無視してこれまでの政治家としてやってきたことや学生時代から今に至るまでの足跡を見て判断したいと思っています。
 一週間後、本当の大物が当選していることを願っています。
 じゃ、また。




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