<仕事>

pressココロ上




 先週は子供に関する悲しい事件が2つありました。ひとつは義理の父親からの虐待で自殺した少年の事件と、佐世保市で起きたなんの脈絡もなく友人を殺害した高一女生徒の事件です。
 親から虐待を受けている子供の事件に接するたびに僕は思うのですが、これほど居たたまれない事件はありません。本来なら親という存在は子供を守ることが使命であり義務です。その親が子供に虐待をするのですから子供にとってこれほど苦しいことはありません。今回の事件は義理の父親の言動が自殺の原因ですが、その原因を作った母親の責任はとても重いものがあります。
 僕が忘れられない子供虐待事件は、今から4年前の事件です。その事件も虐待をしていたのは継父ですが、小学1年生の子供は母親を気遣って継父をかばっていました。その健気さに胸が張り裂ける気持ちになりました。
 シングルマザーが子供を育てるのは大変です。でも、だからといって子供を虐待するような男性と再婚するという選択肢をとるのは間違っています。本来、子供は幸せになるために生まれてくるものです。
 また、このような事件に接するたびに憤りを感じるのは、子供を守ることを仕事している関係者の対応です。あまりの無責任ぶりに暗い気持ちにさせられます。
 今年の4月に、ある女性教師の行動が物議を醸しました。それは自分の子供の入学式に出席するために勤務する学校を欠席した行動です。教師といえども普通の人と変わりませんから自分の子供の晴れ節目の式に出席したい気持ちがあるのはわかります。しかし、教師という立場から考えますと自分の子供の式典への出席よりも業務を優先させるべきでした。
 その女性教師には仕事に対する責任感が欠如しているように思います。そのような無責任な教師に教えられる子供たちはかわいそうです。そこまで自分の子供を大切に思うなら、教師という仕事を選ぶべきではありません。
 今回の子供虐待事件も関係者が自分の仕事に責任感を持って対応していなかったことが原因です。これまでに幾度も書いていますが、これだけ虐待事件が報じられている今の時代において、子供のあざや言動、振る舞いから虐待を連想しないほうが不思議です。ほんの少しの想像力さえ持っていたなら子供の身に降りかかっている不幸を察知することは容易です。
 それができなかったとうことは、想像することを意識的に避けたと思われても仕方ありません。「面倒なことに巻き込まれたくない」という気持ちが心のどこかにあったのではないでしょうか。
 佐世保市の事件も同じようなことがいえます。この事件も女生徒を取り巻く関係者がきちんと対応をしていたなら未然に防ぐチャンスが幾度かあったように思います。また、精神科医から児童相談所へ匿名で「将来の危険性を指摘していた」そうですから、防ぐチャンスを逃していたことになります。
 佐世保市では10年前に小学6年生が同級生を殺害した事件があり、その教訓として「いのちの大切さ」を訴える授業なども取り入れていたそうです。そうであるだけに精神科医からの連絡に対して迅速な対応をとらなかったのは教訓が生かされていなかったことになります。やはり、仕事に対する真剣みが薄れていたと思われても仕方のない対応です。
 今週紹介しました事件の共通点は、関係者が自らの業務に真摯に取り組んでいなかったことが事件が起こった原因のひとつであることです。やはり、誰でも仕事は早く終わらせてプライベートを楽しみたいという気持ちが起きて当然です。
 こうした発想と真逆な労働環境が露になったのが牛丼チェーン「すき屋」の閉店問題です。この問題はネットから拡散した感がありますが、当初「すき屋」は人手不足が原因で閉店していることを認めていませんでした。しかし、徐々に事実が表に出てくるようになり、今では事実を認めています。
 以前も書きましたが、個人商売ではなく企業という組織形態の飲食チェーンが人手不足で閉店に追い込まれるということはとても想像できませんでした。企業ですから、普段から予備の人数を確保しているのが当然と思っていたからです。しかし、企業であるとも人手というのは簡単でないことを実感しました。
 調査委員会の報告では1ヶ月の労働時間が500時間を越えていたそうですから、常識を越えています。仮に、1日に12時間働いたとしても26日間では312時間にしかなりません。500時間という労働時間がいかに常識はずれであるかがわかります。
 すき屋に限らず今のフードチェーン店はアルバイトやパートさんを活用して運営しています。ですから、アルバイトさんやパートさんが集まらないことに注目が集まっていますが、最終的には不足人数分を補うのは正社員です。その結果が500時間の労働時間です。報告書にはその正社員がごっそりと退職していることも報告されていますが、こうした事態は先に書きました子供たちの事件に対応した関係者とは正反対です。
 僕が言いたいことがわかるでしょうか。
 すき屋では店舗を運営するために月間500時間も働くことを余儀なくされています。それほど働かなければお店が運営できないからです。そして、最終的には退職を余儀なくされています。それに対して子供たちの事件の関係者が激務のために退職したという話を聞くことはありません。僕はそこに仕事に対する姿勢の違いを感じてしまうのです。子供を守る立場の仕事に従事している人たちがすき屋の人たちと少しでも近い気持ちで働いていたなら…。
 僕は決して、劣悪の労働環境で働くことを推奨しているのではありません。ただ、仕事をするならそのくらいの気構えで臨んでほしいと思っているだけです。そうでないなら子供たちが浮かばれません。繰り返しになりますが、それができない人はその仕事に就くべきではありません。
 今日のコラムはちょっと激辛かなぁ。
 じゃ、また。




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