<子供と環境>

pressココロ上




 我が家は現在朝日新聞を購読していますが、朝日新聞には毎週日曜日にGLOBEという別刷りの新聞が入ってきます。GLOBEは海外のニュースを紹介する新聞ですが、先月そこに興味をひく記事がありました。
 早いもので東西冷戦が終了して25年が過ぎました。今の若い人はあまり関心がないでしょうが、僕が’89年にニュースで見た「多くの若者がベルリンの壁をツルハシやスコップなどで壊している映像」はとても感動するものでした。
 そのときに僕が思った感想は「これで世界も平和になるんだろうな」でしたが、現実はそれとは正反対で世界のあらゆるところで民族紛争が勃発したのでした。その理由の最も大きな要因は東西冷戦によってひとつに固まったいたように見えていた国家という括りの中において冷戦がなくなったことで民族対立が表面化したからです。
 こうした状況は現在のスコットランドやウクライナなどを見る限りまだ続いているようです。本当に人間というものは複雑な生き物ということを実感します。
 その人間という生き物がどのように成長していくかに興味を持つ記事が先月のGLOBEに載っていました。元東側に属していたルーマニアという国に関する記事です。
 東西冷戦時代から東側では英才教育というシステムが存在していたようです。才能のある子供を小さいときから徹底的に教育をするシステムです。そうしたシステムがオリンピックなどの世界的な競技の場で好成績に結びついたいたようです。
 しかし、そうしたシステムは人間を人間として扱うのではなくロボットのように育てることになっていました。例えば、薬物によって運動能力を高める方法などが取られていたようです。もちろん、こうした方法が当人の健康に害を与えていましたが、個人のマイナスよりも国家のプラスを選択していたようです。
 そうした考え方と同じ発想で、ルーマニアでは人口を増やす政策が取られていたそうです。具体的には国策によって避妊と中絶を禁止したことですが、そうした政策は子供たちの環境にも影響を与えます。貧しい家庭で育てるよりも国の施設で育てる政策が取られていました。そうした状況が東西冷戦が終了し政権が崩壊したことによって明らかになってきました。報道によれば、政権が崩壊した時点で国営の孤児院に十数万人の子供たちがいたそうです。
 ここまで読んで僕が思い浮かんだのは昔ビッグコミックオリジナルで連載されていた浦沢直樹さんの「モンスター」という漫画です。この主人公モンスターという悪の怪物は東ドイツの孤児院で育てられたという設定になっていたように記憶しています。これはつまり、人間を悪にするのも善にするのも環境が大きな要因となることを示しています。
 さて、GLOBEでは冷戦が終了したあとに孤児院にいた子供たちを幾つかのグループに分けて育てる研究をしていたことを報じていました。例えば、あるグループは里親家庭で育てるようにし、あるグループは施設で育てるようにして言語力や愛情や脳活動などを調査したそうです。
 まだ研究の途中だそうですが、大まかな傾向としては、やはり一般の人が想像するとおりに普通の家庭で育ったほうが全般的な能力は高いようでした。
 記事では、このようなこを報じていたのですが、僕の感想としては「わざわざ実践する必要などないのではないか」と感じました。一応「研究」とはされていますが、僕にはかつて東側が行っていた「子供を洗脳して自分たちに都合のいい人間に育て上げること」となんら変わらないように感じました。つまり、子供の成長を実験していることです。子供たちが実験のモルモットになっているからです。
 人間は育つ環境に大きく影響を受けることは間違いないように思います。だからこそ、西東京市で起きた虐待事件の続報に心が痛みます。男子中学生が継父に自殺を強要された事件ですが、親というのは子供が育つうえで最大の環境です。その環境が悪であるなら子供は逃げるのが正解です。
 子供は親という環境に影響を受けますから、「逃げる」という発想さえも思いつかなかったのかもしれません。そのように想像できるだけに周りの大人たちの存在が重要です。被害者の中学生にもだれかひとりでもいいですから、助けるきっかけを与える大人がいたならと思わずにはいられません。
 子供は親の影響を受けますから、自分では気がつかないうちに親の考え方に縛られていることがあります。しかし、世の中にはいろいろな考え方があります。それらの考え方を知るだけでも自分の本来の意思を作ったり知ったりすることつながります。
 若い皆さん、いろいろな考え方に触れられるように本を読んだりネットをめぐったり、知識や情報を求めることは大切です。それと同時に大切なことは行動することです。行動を起こした経験がない人の知識や情報はうわべだけのうすっぺらい効果した自分に与えません。
 ところで…。
 ある日の新聞の下に「小さな恋のものがたり」の広告が載っていました。これはチッチとサリーという若いほのぼのとしたカップルの4コマ漫画なのですが、僕が高校・大学時代に読んでいたものです。その漫画の最終43巻の発売の広告だったのですが、まだ続いていたことに驚きました。
 僕は自サイトにて同じ題名の物語を書いていますが、この漫画から拝借しています。それほど僕には印象に残っている漫画でした。
 僕はあれからかれこれ30年が過ぎ、頭が薄くなりシワが増えていますが、チッチとサリーは昔のままでした。うらやましいなぁ…。
 じゃ、また。
 




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