<風>

pressココロ上




 いやぁ、驚きました。先週の今頃は微塵も耳にすることがなかった「解散」という言葉が、週を明けてから一気にマスコミに登場しました。そして、あれよあれよという間に現実味を帯びています。この一連の流れを見ていますと、解散は避けて通れない雰囲気になってきているように映ります。
 マスコミの報道によりますと、19日(水)にも安倍首相が「解散を決断する」と予想されていますが、市井で暮らす我々からしますと、「なんのための選挙費用か」となってしまいます。マスコミでは「念のため解散」とか「今のうち解散」などと名づけていますが、我々一般人からしますと解散をする理由が見つかりません。
 マスコミで最初に「解散」という言葉を見たときは「唐突」な感じがしましたが、今の段階ではもう「唐突」という感じはしなくなっています。その理由は最初に解散風を流していたからです。このように、「風」にはものごとを少しずつ慣れさせる効果がああるようです。言い換えるなら、実態に違和感を持たせないようにするために地ならしをするのが「風」の効用です。
 一時期「KY」という言葉が流行りました。「空気が読めない」の略語ですが、「あいつはKYだ」などというふうに、どちらかというと悪い意味で使われていた言葉です。
 「風」は空気が流れることですが、空気とは目に見えるものではありません。それだけにやっかいです。目に見えませんから、頭の中や心の中で感じることしかできません。だからこそやっかいです。
 空気に関しては「空気の研究」という山本七平氏の名著がありますが、元来日本人は周りの空気を読むことに長けている民族のようです。その悪い面が太平洋戦争に突き進んだ要因とも言われていますが、元々は日本人には空気を読める鋭い感性がありました。
 昔から言われることですが、日本人には「曖昧さ」があります。欧米ではこの「曖昧さ」が理解できないようで、黒白を決めないことを批判されることもあります。しかし、僕などは黒白を決めることが争いの根本的原因ではないか、と思ってしまいます。「曖昧さ」と「空気を読むこと」はどこかで通じているように思います。
 それはさておき、今回の安倍首相の感性には疑問を感じざるを得ません。安倍首相になってから、僕は幾度かこのコラムで安倍首相を取り囲むブレーンを賞賛しました。そのときどきにおける世の中の空気を敏感に感じ取っているように映っていたからです。そして、その進言を受け入れていた安倍首相に対しても同じ感想を持っていました。
 しかし、今回は世の中の空気を読み間違っているように感じます。その間違いがブレーンにあるのか安倍首相にあるのかわかりませんが、どちらにしても最終決断をするのは安倍首相です。ここにきて就任以来順調に続けてきた政権運営が躓いています。その躓きが感性を鈍らせているのかもしれません。俗にいう焦りでしょうか。
 でも実は、「間違い」になるかどうかは僕たち有権者の行動にかかっています。それは投票に行くかどうかです。まだ解散が発表されていない今の時点でいうのもどうかと思いますが、僕的にはもう言いたい気分です。
 皆さん、投票に行きましょう。特に、若い皆さん、投票に行きましょう。「誰が政治家になっても世の中は変わらない」という発想は間違っています。ましてや、「自分の一票くらいなんの意味もない」という考え方はもっと過っています。一票が集まって大きな空気をかもし出し、そしてそれが風を起こします。
 権力を持っている安倍首相はその力を利用して解散風を吹かすことができました。しかし、権力を持っていない我々も一票を束ねることで風を起こすことができます。
 選挙結果はそのときの国民の空気で決まりますが、重要なことは空気は国民が作ることが出来ることを忘れないことです。つまり、投票に行く人が多くなればなるほど国民の意思が空気に反映されることになります。
 皆さん、投票に行きましょう。そうでないと、国家という権力者に国民が見くびられることになります。「念のため」や「今のうち」などという魂胆で解散をするのではあまりに国民をなめています。政治家が猛省するような風を吹かせましょう
 ところで…。
 今年の1月にコラムで「気に入った歌を見つけた」と書きました。その歌とは「泣くかもしれない」です。この歌の作詞作曲は下田逸郎さんという方でその方についても書きました。
 あれから10ヶ月、先日ネットを見ていましたら「海を感じる時」という映画が紹介されていました。この原作は僕が青春時代のものでしたので興味を持ち、内容をみたのですが、なんとエンディングに「泣くかもしれない」が流れているそうです。
 なんとした驚きでしょう。今の時代にこの歌のよさを感じていた人がいたなんて…。そんなうれしさを感じた先週でした。でも、やっぱりホームレスハートさんの歌声のほうがいいなぁ…。
 じゃ、また。




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