<再会>

pressココロ上




 かな~り昔のことです。いつの頃か定かではありませんが、とにかく青春時代の頃のことです。当時「明星」というアイドル雑誌がありまして、その付録に「yong song」という小雑誌がありました。題名からわかるように、ヒット曲の歌詞やギターコードが書いてある小雑誌です。僕たちは略して「ヤンソン」と言っていました。
 もちろん僕が買うわけはなく、妹か姉が買っていて、だから「僕たち」なのですが、僕は「ヤンソン」を毎月楽しみにしていました。ギターを覚えたばかりでしたのでコードを弾きながら歌を歌うのを楽しみにしていました。もちろんヘタクソでしたが、どのくらいヘタクソかといいますと、「 F 」を押さえると音がほとんど出なくなるくらいのヘタクソです。因みに、僕の得意なコードは「Em」や「C」や「D」でした。
 そんな僕が、ある日ラジオを聴いていましたら、外人の声で英語の歌詞のとても素敵なメロディーが流れてきました。シンプルで心の中にスーッと入ってくるメロディでした。DJの人が歌手と題名を紹介しましたので、たまたま近くにあったヤンソンで調べてみました。
 すると、ちゃんとその歌手の名前と歌詞と写真が載っているではありませんか、イケメンで笑顔が素敵な男性でした。英語の歌詞で細かな内容はわかりませんが、全体的な内容は「困ったことがあったら僕が助けてあげよう」というボランテイィアの歌だったように記憶しています。そして、不思議と心に残っているのが
♪♪ when you need somebody around ♪♪の部分なのです。
 それから数年後、なにかのきっかけでふとこの歌のことを思い出すことがありました。しかし、悲しいことに思い出せるのは♪♪when you need somebody around ♪♪の部分の歌詞とメロディーだけでした。題名も歌手名も忘れていました。人間とは不思議なもので気になればなるほど余計に知りたくなるものです。僕はなんとかしてもう一度この歌を聴きたいと思うようになりました。しかし、ヒントはわずか3秒ほどの歌詞とメロディーしかありません。
 僕は洋楽に詳しそうな人がいると必ず歌詞つきメロディーを口ずさんで題名を教えてもらおうとしました。しかしいかんせん、わすか数秒の歌詞とメロディーしかありません。また、口ずさんでいる当人も自信があるわけではありませんのでこれまでに答えられる人は誰もいませんでした。
 この歌を聴いたのは高校か大学ですから少なくとも35年以上はこの歌の題名を探していることになります。最初に思い出そうとしたときはまだ気持ち的に余裕がありました。なにしろヤンソンに載るほどのヒット曲ですから、なにかでどこかできっとその歌と出会うことがあると思っていたからです。
 しかし、あれから35年間以上一度も出会うことはありませんでした。この歌を探している間に僕は結婚をし、父親になり、そして商売を2度ほどし、保険を販売し、現在はフリーランスとしていろいろなことに頭を突っ込みながら世の中の片隅でひっそりと生きています。
 その間僕はこの歌がずっと気になっていました。なにしろ歌詞がボランティアでメロディーが素敵なのですから気にならないはずがありません。僕は、死ぬまでにもう一度フルコーラスで聴きたいとずっと思っていました。僕、来年還暦を迎えます。そろそろ焦りを感じ始めていました。…もう、あの歌と出会うことはないのかなぁ…。
 それが、先々週のことです。車を運転しながらラジオを聴いていますと、なんとあの歌が流れてきたではありませんか! 僕は驚きました。すぐに車を端に停め、ラジオのボリュームを大きくしました。あの歌です。僕が35年以上探し求めていたあの歌です。ラジオから♪♪when you need somebody around ♪♪のフレーズが聴こえてきました。MCの人が楽曲名を紹介しました。
 You’re only lonely   J.D.Souther
 
 早速、帰宅してからyoutubeでダウンロードしました。それから毎日暇さえあれば聴いています。やっぱりいいメロディーですねぇ。歌詞も「君が独り心細く感じてるときやそばに誰かいて欲しいときは僕を呼んで」という優しいんですねぇ。35年間待ち続けた甲斐があるというものです。
 あきらめの境地に入りそうになったいただけに本当にうれしいですねぇ。いやぁ、長生きはするものですねぇ。
 ところで…。
 もちろんフルコーラスを聴くことができるようになったのですから、今までのように一部分ではなくフルで歌う条件は整ったことになります。ですが、そうは問屋がおろさないのが世の常というものです。
 そうなのです。僕はなぜだかわからないのですが、英語の歌詞の場合、メロディーに歌詞が収まらないのです。つまり、歌詞が字余りになるのですね。皆さんにお聞かせできないのが残念なのですが、すべての歌詞を丁寧に歌おうとするあまりどうしてもメロディが足りなくなってしまうのです。これが実に悲しい。本人でないとわからないのですがこれほど悔しく情けないことはありません。
 思い返せば、かつてカーペンターズの「Yesterday Once More」を歌おうとしたときもそうでした。歌いはじめの「When I was young listen to the radio」を歌い終わるとき、メロディはすでに次の小節に入っているのでした。カラオケで妻や娘にいつも注意を受けていた思い出があります。僕が歌うとなぜか、最後の「radio」に相当するメロディがなくなるのでした。ホント、世の中って不思議なことが多いですよねぇ。
 じゃ、また。




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