<団結>

pressココロ上




 現在、東芝が揺れています。理由は会計処理に関することですが、実際よりも利益を多く記載していたからです。これを単純にいいますと粉飾会計ということになりますが、どうやらそう簡単に決めつけることもできない事情があるようです。Yafooトピックスなどを読みますと、そうしたことの背景が詳しく解説されています。
 僕の年代で東芝といいますと、やはりCMソングのメロディーがすぐに口から出てきます。
「♪ひ~かるひかる東芝~♪まわ~るまわる東芝~♪はし~るはし~る東芝♪
うた~ううた~う東芝♪……みん~なみん~な東芝、東芝のマーク♪♪」
という歌詞ですが、これを見てメロディーが頭に浮かぶのはやはり昭和の人しかいないかもしれません。
 この歌詞は一見するとなんの変哲もない普通の歌詞のように思えますが、実は東芝という企業をわかりやすく説明しています。それぞれの歌詞がそれぞの事業を表しているからです。例えば「ひかる」は照明器具ですし、「うたう」は音楽関連事業です。このように東芝は昔から幅広い事業を展開しており、近年では原子力関連事業も行っています。日本における名門企業のひとつにかぞえられています。
 東芝出身の財界人といいますと、石坂泰三氏とや光敏夫氏などが有名ですが、そうした名経営者を輩出するのもやはり名門企業といわれる由縁です。
 その東芝が揺れているのですが、揺れている原因を突き詰めていきますと、最終的には人事に行き着くように思います。メディアにより「不適切会計」とか「不正会計」とか「粉飾会計」と表現は異なりますが、要は数字をごまかしていたことに変わりはありません。そのごまかし方によって責任の重さが変わるような指摘もありますが、そこは仮にも日本の名門企業のひとつにかぞえられている企業です。しかも上場企業です。常識的に考えて不注意による軽微な「ごまかし方」とは考えられません。
 たぶん「不注意」や「軽微」でなかったからこそすぐに現社長から遡って歴代3人の社長が辞任をしたのでしょうし、役員の辞任も発表されました。報道によりますと、歴代の社長連は部下に対して「チャレンジ」と称して「実際よりも多い利益を報告するように」迫っていたそうです。仮にこれが事実であるなら立派な粉飾です。粉飾を迫るのですから立派な犯罪です。その自覚はなかったのでしょうか。それが不思議です。
 僕はこのような事件が起きるたびに思うのですが、上司から犯罪に等しい業務命令を受けたとき部下の人たちは抗わないのでしょうか。たぶん「人殺し」を命令されたなら誰でも拒否するでしょう。しかし、数字をごまかすことにおいては罪悪感がそれほど生じないようです。今回の事件はまさしくそれを証明しています。
 今回の件が表面化したのは人事抗争が発端だったと報じられています。それを証明するかのように、現社長の就任会見時に前社長と前々社長がお互いを婉曲的ではありましたが批判し合っているようすが映像で流されていました。外野からしますと、誠に滑稽な光景に見えます。
 この光景を見ていて僕はNECの関本忠弘氏と小林宏治氏の対立を思い出しました。後年の評価では先輩社長である小林氏が後輩社長の関本氏に嫉妬したというのが定説になっています。嫉妬の理由は関根氏が名経営者として名を馳せたことです。あまりにも世俗的で名経営者といえども人間なんだなぁと思った記憶があります。
 人間がたくさん集まりますと派閥が生まれるのは仕方のないことです。やはり考え方が合うとか性格が合うとか、俗にいう馬が合う人間というのはいます。反対に、どうしても相性が合わない人というのがいるのも事実です。ですから派閥ができるのも当然です。
 派閥ができますと、やはり自分たちの派閥が有利な立場にいたいと思うのは人の情というものです。多数派になることは即ち自分たちの考えを実行に移しやすくなることです。そうしますと、そこに対立といいますと大げさですが軋轢が生じます。こうなりますと戦いです。半沢直樹も戦っていました。
 話は少し逸れますが、先日日本テレビのドラマ「花咲舞が黙っていない」を初めて観ました。簡潔に言いますと「とても面白かった」です。以前、新聞の記事で新しいドラマの評価が出ていましたが、日本テレビの一人勝ちと書いてあったのを思い出しました。僕がこのドラマを観たきっかけはいつもと同じパターンですが、妻が観ていたのをたまたまうしろを通りがかったことでした。
 観終わったあとに僕が思い出したのは、何年か前に同局で放映していた篠原涼子さん主演の「ハケンの品格」でした。日本テレビにはかつてのTBSのようにいいドラマを作る土壌がテレビ局全体に脈々と流れているのかもしれません。そんな気持ちにさせるドラマでした。でも、題名はもうちょっと改善の余地があるんじゃないかなぁ…。
 派閥といいますと、悪いイメージばかりが思い浮かびますが、メリットもあります。それは派閥同士の戦いが起きることで派閥が所属する集団が中庸になることです。片方が監視役になることで行き過ぎた偏りにならないシステムになります。今回の東芝の件も対立する派閥からの内部告発があったようです。理由はどうであれ、真実を表に出すようなエネルギーが生まれることは悪いことではありません。
 政治体制の理想もアメリカのように2大政党が切磋琢磨することといわれています。日本もそれを見習って選挙制度を変更しましたが、現在は理想とはほど遠い結果となっています。また、かつての自民党には派閥という政党を中庸の状態にするメカニズムがありましたが、その派閥もなくなってしまいました。今の安倍政権はまさしく独裁状況となっています。
 本来なら、反主流派の先鋒になるはずの石橋氏などはすでに9月の総裁選の立候補をしないことを表明しました。連立与党である公明党も平和の党の看板を下ろしたかのような状態です。
 そうした中、安保関連法案に対する反対運動がまだ消えることなく続いていることがせめてもの救いです。最後に与党の政治家の皆さんには先週お亡くなりになりました鶴見俊輔氏の言葉を贈りたいと思います。
『「鉄の団結」は考える力を弱めていく』
 
 じゃ、また。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする