<えばりたがる人々>

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 トランプ氏が大統領に決まってから1週間以上が過ぎましたが、世界各地からいろいろな反応が起きています。先週も書きましたが、世界各国で排他主義や人種差別を唱える政党が躍進しています。本当に世の中は破滅の方向に行ってしまうのでしょうか…。
 排他主義が受け入れられるのはよそ者を受け入れる余裕がなくなってきたからです。やはり誰でもそうですが、一番かわいいのは自分です。その次に妻そして子供といった家族です。そこから先は人により考え方がいろいろです。
 今では中堅俳優として活躍している宇梶 剛士 さんという方がいますが、この方は芸能界に入る前は暴走族のリーダーでした。そしてグレた原因はお母さまが家族よりも社会運動に没頭したからです。宇梶さんの自伝を読んで驚いたのですが、その後NHKの番組でもインタビューに答えていました。家族にとっては災難ですが、家族よりもほかのことに夢中になる人がいるのも事実です。しかも、「ほかのこと」というのが社会運動というのはその是非について考えさせる問題ではあります。
 このように家族が普通の家庭とは異なっていますと、それが不良になる原因になることは多いものです。もしかすると「すべて」と言ってもいいかもしれません。それほど家族という集団は子供に与える影響が大きいものがあります。因みに、宇梶さんのお母様が没頭した運動はアイヌ民族の生活を向上させることでした。
 宇梶さんのお顔を見ればわかりますが、彫りが深く目鼻立ちがはっきりしたかなりのイケメンです。今は中年ですのでイケメンぶりも衰えていますが、20才前後の写真を見ますと、驚くほどイケメンです。身長も190センチ近くあり足も長いので芸能人にぴったりの容貌ということになります。
 そんな宇梶さんですが、若い頃は注目されたことはありませんでした。宇梶さんが注目されるようになったきっかけは渡辺えり子さんという女優のおかげだそうです。これはなにかの番組で宇梶さん自身がお話していましたが、渡辺さんはコミカルな演技や天然キャラが魅力ですが、実は劇団を主宰している実力派です。
 宇梶さんに限ったことではありませんが、芸能界というところはイケメンだけでは成功することができません。モデル出身の阿部寛さんの自伝によりますと、モデルの人は30才を境に方向転換を余儀なくされるそうですが、芸能界にはイケメンは腐るほどいますのでイケメンが「ウリ」になることはないそうです。それ以外の魅力を磨かないと芸能界で生き残っていくことは難しいようです。
 しかし、「若さ」というのは人を勘違いさせるものです。相方が芥川賞を受賞した漫才コンビの片方の人が米国に進出するそうです。この方の場合は最初から売れないことを覚悟して米国に渡るわけですが、そうでない人もいます。日本である程度成功し、その勢いで米国進出を考える人もいます。特に日本で若くして成功した人が米国に挑戦するケースが多いのですが、現在まで成功した人はいません。
 日本人が米国で成功しない理由のひとつに「英語の発音が正しくない」と言われています。XJAPANのYOSHIKIさんは今でも世界的な演奏活動を精力的に行っていますが、デビューしたときからボーカルのTOSHIさんに口うるさく英語の発音についてしつこいくらいに注文をつけていたそうです。
 そういえば、ロックの大御所・矢沢栄吉さんの著書にも同じようなことが書かれていました。矢沢さんのすごいところは「発音が正確でないと通用しない」という思いから、米国に住む決断をしたことです。こういうところが矢沢さんの矢沢さんたる所以です。
 米国進出に関連してあとひとり思い出すのは俳優の加藤雅也さんです。加藤さんもモデル出身だそうですが、勿論ハイレベルなイケメンに加え身長もスタイルも抜群でした。しかし、それでも日本に戻って来ています。同じような足跡の人に吉田栄作さんもいました。
 皆さん、「成功した」とは言い切れない部分がありますが、挑戦する姿には素晴らしいものがあります。日本での成功に安住せず、さらに高みを目指す心意気は見ていて感動を受けます。
 プロ野球界でも似たような経歴の人が多くいますが、成功とはいかなくても挑戦する姿勢は褒められるべきです。メジャーでレギュラーに定着できずそれでもかれこれ5年も米国に挑戦し続けた元ソフトバンクの川崎宗則選手が来年は日本に戻ってくるような報道がありました。メジャー挑戦の経験は決して無駄ではなかったことを見せてほしいものです。
 新しいことに挑戦する人が多くの人から評価・支持されるのはその姿勢が多くの人に感動を与えるからです。しかし、リスクがあるのも事実です。多くの人が評価するのはそこにリスクを恐れない勇気を見るからです。誰でも新天地では新人となります。新人とはそれまで「偉そうにふるまっていた」ことができなくなることを意味します。
 排他主義とはまさに「自分たちが偉そうに振舞えなくなること」を避けることが目的です。今回の米選挙では白人の労働者がトランプ氏を支持したという分析がなされていますが、いつの間にか白人の人種比率が50%を割りこんだ現実が危機感を持たせたのではないでしょうか。大手新聞などマスコミが選挙結果を見誤りましたので安易に断じるのは危険ですが、白人が少しずつ減ってきている状況が不安感を高めさせたのは間違いありません。
 それまで「白人として偉そうに振舞っていた」人たちが少しずつ新人の立場に追いやられそうなのです。誰しも不安になるのは仕方ないかもしれません。白人が主流を占めていたときは寛容に対処できたことが今の状況ではできなくなっているのです。つまり心の余裕がなくなったのです。
 「感情労働」という言葉があるそうです。ウィキペディアから引用しますと「肉体や頭脳だけでなく『感情の抑制や鈍麻、緊張、忍耐などが絶対的に必要』である労働を意味する。一番わかりやすく言いますと、接客業です。日本では「お客様は神様」という発想が根付いていますので理不尽な要請をされることが少なくありません。
 先日も車掌さんが乗客のあまりのクレームに制服をホームに叩きつけて業務放棄をした報道がありました。この車掌さんには擁護するツイッターがたくさんきたそうですが、接客業は典型的な感情労働です。
 近年のお客様には「なにを言っても、おこなっても許される」という発想が染みついている人がたまにいます。これなどは「偉そうに振舞いたい」欲望の最たる例です。例えば、あなたの職場にも「仕切りたがり病」の人がいるのではないでしょうか。上司部下の関係であるなら上司が仕切るのは当然ですが、同じ職位でありながら上から目線で話したがる人がいます。このような人はつまるところ「偉そうに振舞いたい」人です。
 少し古い例になりますが、NTTドコモがi-modeを出したときの顛末を描いた「松永 真理のiモード事件」という本があります。この本はドコモ生え抜きの社員と途中入社の社員、そして経営コンサルタントの三者の軋轢が事細かにつづられています。まさにこの三者で難しいのは実質的には三者が同じ職位だったことです。誰が主導権を握るかがそのあとの展開に大きく影響しますので三者とも主導権を取るのに必死でした。つまり「偉そうに振舞いたい」人の集まりということになります。そのような状況の中でiモード成功させたのですから松永氏の仕事スキルが際立つことになりました。松永氏は全員が納得できるようなやり方を貫き通したのでした。因みに、松永氏はそれまでリクルートで「とらばーゆ」の編集長を務めていた方です。
 「偉そうに振舞いたい人」が主導権を握ってもそのような社会や組織は必ずあとで破たんします。結局は公平で平等な社会なり組織が生き残るのです。ここで僕の結論。
 だーかーらぁ、排他主義とか人種差別が蔓延るような世の中にしてはいけないのです。
 じゃ、また。




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