<企業の社会的責任(CSR)>

pressココロ上




 「企業の社会的責任」(corporate social responsibility)という言葉がマスコミなどで報じられるようになったのは今から14~15年前くらいでしょうか。この頃に学生時代にバイトで一緒に働いていた人たちと同窓会のようなものをやったのですが、その席で誰かが口にしたのを覚えています。このように紹介しますと、僕の学生時代の仲間が社会に関心を持つ高尚な人の集まりのようなイメージを与えますが、決してそうではありません。僕は会社勤めをしていませんでしたが、ほかの人たちはみんなごく普通の会社員でした。ですから、仕事絡みの話をしているときになにかの弾みで出てきたに過ぎません。僕も含めた全員がノンポリでただただ遊びほうけていた学生でした。
 「ノンポリ」という言葉も「時代遅れ」だと思います。これは「ノン、ポリシー」を短くしたもので「ポリシーがない」ことです。「ポリシー」は「政策。策略。また、事を行う際の方針」と辞書に書いてありますが、つまりは「政治的な意思を持っていない」です。さらに「つまり」で言いますと、「遊びが大好きなただの学生」ということになります。
 そのような学生たちも社会に出て企業の中で中堅どころになりますと、それとなく小難しいことも頭の中に浮かぶようになっているようでした。僕は自営業でしたので会社勤めの人ように同年代の人と話をする機会がありませんでした。ですから、昔の友達からそのような言葉が出てきたことに驚いた記憶があります。
 ひとりぼっちの僕ですので「企業の社会的責任」について誰かと話し合うことはありませんでしたが、「社会的責任」という言葉には興味を感じていました。自営業者として社会に参加していたこともありますし、学生時代からノンポリではありましたが、漠然と「世の中の不公平なことや不公正なこと」に敏感だったことも関係していると思います。
 そのような僕が憤りを感じるニュースが先週はありました。コンビニ大手のセブンイレブンでアルバイトの学生のお給料から罰金として9千円あまりを天引きしていたニュースです。罰金の理由は、「代わりに出勤する人を見つけずに、欠勤したから」です。僕からしますと、雇用する側がこのような発想をすること自体が、社会的責任の欠如です。
 「なんで、欠勤するだけで罰金を取られなければいけないのか」
 
 大人の従業員に対してこのような対応をするのも不快ですが、高校生というまだ社会のことをなにも知らない大人になっていない高校生に対して行ったことに最も憤りを感じます。今回は親御さんが知ることで行動を起こしたから公になりましたが、もし親に相談しない高校生だったならそのままやり過ごされた可能性が大です。
 「そもそも論」になりますが、このお店の「仕事を休む際のやり方」に問題があります。基本的に「従業員がお休みを取る際に代わりの人を自分で探すことが義務になっていること」は企業の正しい姿勢ではありません。人員の調整をするのは経営者もしくは管理者が責任を負う業務です。ヒラ社員、間違ってもアルバイトがやるべき仕事ではありません。もちろん従業員の側が自らの意思で自主的に代わりの人を見つけようとする行為は、純粋に仕事をするうえで理想的な対応ではありますが、それを義務にするのは間違いです。
 しかし、管理をする側からしますと、従業員に責任を押し付けるほうが楽です。ですが、それは経営者もしくは管理者としての責任放棄です。経営者・管理者として失格です。
 このコラムで何回か書いていますが、「名ばかり店長」とか「名ばかり管理職」の問題の核心はまさにここにあります。つまり「名ばかり」の問題点は従業員に過大な責任を押し付けることによって経営者や企業が利益を上げようとする姿勢や考え方であることです。これでは従業員ばかりが損失を被ることになります。このような企業が健全であるはずがありません。
 以前、飲食系のあるフランチャイズ方式のチェーン加盟店が学生に業務のすべてを押し付けて大学にさえ通えなくなるように働かせていた事件がありました。このフランチャイズチェーンはそれ以前にも加盟店がニュースになるような事件を起こしていますので、フランチャイズで脱サラを考えている人は慎重に情報を集めることが必要です。
 今回の事件に関してセブンイレブンの本部が「加盟店に対して指導をした」との報道がありましたが、僕には違和感がありました。本部の指摘では「加盟店の対応は労働基準法に違反する」とのことでしたが、同じようなことを本部は加盟店に対して行っていると僕は思うからです。
 僕はフランチャイズの問題点を「テキスト(フランチャイズ考察)」や「NAVERまとめ」で情報を発しています。僕が一番問題だと思っているのはまさに「最も大変な部分を加盟店主に押し付けていること」です。「大変な部分」とは人員調整です。そして、それができずに休業したときは違約金まで徴収する契約になっています。もしこのような契約のやり方が直営店で行われていたなら、これはまさしく先にセブンの本部が指摘していた「労働基準法」に触れる行為です。僕が違和感を持つのを理解していただけるでしょうか。
 大手マスコミなどではあまり報じられませんが、今でも本部と加盟店の関係がすべて円滑に行われているわけではありません。トラブルになり裁判にまで発展している例もあります。僕は自分がフランチャイズで開業した経験からフランチャイズシステムに懐疑的です。
 コンビニ業界はフランチャイズチェーンの最も成功した事例ですが、もしフランチャイズ方式でなかったなら業界のこのような発展成長はなかったはずです。おそらく深夜の時間帯の人員不足や年中無休による人件費負担などが経営の足を引っ張っていたはずです。そうした大変な部分を加盟店に押し付ける方式だったからこその発展であり成長です。
 24時間年中無休を直営店で運営するのは大変です。すべての人員を自ら調達しなければいけないのです。記憶に新しいところでは、牛丼のすき家は深夜帯の人員不足で多数の店が閉店に追い込まれました。人の確保がどれだけ大変かがわかる事例です。
 昨年はコンビニ業界に最も貢献したと言われている鈴木敏文氏が退任しました。鈴木氏はコンビニのカリスマとまで言われ経営者として崇められていますが、真の意味で優れた経営者であったならセブンイレブンだけではなくイトーヨーカドーも成功させていたはずです。鈴木氏が成功させたのはフランチャイズ方式のコンビニだけです。そのことを指摘するマスコミやャーナリストがいないことも不思議な気がします。
 今の時代は格差社会と言われており、貧しい人とお金持ちの差があまりに激しくなっています。先日は「世界の最富裕層1%の資産が残る99%の総資産額を上回る」という記事が発表されました。これはどう考えても不公平です。資本主義が万能ではない証になるものです。このような万能ではない資本主義を正しい方向に導くのも企業の社会的責任のように思うのは、、、僕だけなのかな…。
 じゃ、また。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする