<忖度計算>

pressココロ上




 僕が学生時代に好きだった歌にハイファイセットの「海を見ていた午後」という曲があります。作詞作曲は松任谷由実になる前の荒井由美さんですが、荒井さんの声よりもハイファイセットの山本潤子さんの声のほうがこの歌の雰囲気を伝えているように思います。元々僕が山本さんの声が好きということもありますが、透き通った山本さんの声なればこその「海を見ていた午後」です。
 ハイファイセットでほかに好きな歌と言いますと、「スカイ・レストラン」「冷たい雨」「卒業写真」ですが、これらは「スカイ・レストラン」の作曲以外はすべて荒井さんが作っています。因みに「スカイ・レストラン」の作曲は村井邦彦さんです。荒井さんの歌はメロディも好きですが、歌詞も秀逸でアーティストの天才とは彼女のような人を言うのでしょう。ただし、歌うほうは天才とは思えませんが…。
 天才・荒井さんの歌詞で好きな一節を紹介しますと
「スカイ・レストラン」からは
♪もしここに彼女が来たって
♪席を立つつもりはないわ
♪誰よりもあなたのことは
♪知っているわたしでいたい
「冷たい雨」から
♪彼女の名前 教えないでね
♪うらむ相手は あなただけでいい
「卒業写真」から
♪人ごみに流されて 変わっていく私を
♪あなたはときどき 遠くでしかって
♪あなたは私の 青春そのもの
「海を見ていた午後」から
♪あのとき目の前で思い切り泣けたなら
♪今頃二人ここで海を見ていたはず
 ねぇ、女ごころの核心を見事に捉えていますよねぇ。
 このように荒井さんの作詞に痛く感動している僕ですが、たまにうっかり八兵衛になることがあります。実は、ず~っと長い間、う~んと30年くらいなんですが、ずっと歌詞を間違えて口ずさんでいました。「覚えていた」のではなく「口ずさんでいた」というところがミソなのですが、間違えていたのは「海を見ていた午後」の一部分です。
 本来の「海を見ていた午後」の歌詞は
♪紙ナプキンには インクがにじむから
♪忘れないでって やっと書いた遠いあの日
です。しかし、なぜか僕は30年以上に渡ってこう口ずさんでいました。
♪旅立つキンには ピンクが似合うから
♪忘れないでって やっと書いた遠いあの日
「旅立つキンには ピンクが似合うから」。これは日本語になっていません。そもそも「旅立つ」のあとに続く「キン」とはなんでしょう。しかも「ピンクが似合う」のです。不気味です。自分で言うのもなんですが、不気味です。しかし、僕は30年以上このように口ずさんでいました。勘違いも甚だしいですが、人間って恐ろしいですねぇ。一度思い込むとそれが続くのですから…。
 森友学園の問題がまだ決着もつかない中、また新たな学園の申請問題が出てきました。家計学園というらしいですが、この学園の理事長は安倍首相の刎頚の友だそうです。森友学園と家計学園の問題の共通点は「首相の後ろ盾」です。どちらも「首相または首相近辺の意向があるから」許可した可能性があることが問題になっています。しかし、この「意向」が微妙で、「意向」は首相または首相近辺の人のほうから働きかけたのではなく、なんとなく「意向」があるように官僚が感じたことによるものです。
 こうしたことを「忖度」というそうです。辞書によりますと、忖度とは「他人の心をおしはかること」とあります。つまり、官僚が勝手に首相の意向を推し量った結果、「許可した」という構図です。
 常識的に考えますと、首相が「そうしてほしい」と思っていると想像するなら、やはり「そうするでしょう」。なぜなら、首相というのは国家の最高権力者だからです。ですから、官僚が忖度して行動に移すのもわからなくもありません。ですが、政治家が自分の知り合いの便宜を図ることはやってはいけないことです。これも常識に照らし合わせますとごく普通の考え方です。安倍さんが「李下に冠を正さず」ということわざを知らないはずはありません。たぶん、安倍さんのお父様や御尊祖父なら絶対に行わなかった行為のように思います。
 また、官僚の側においても、昔の官僚は政治家の意向を酌むなどということはなかったのではないでしょうか。なにしろ「日本の政治を動かしているのは官僚だ」と本気で思っていた人もいたほどです。少し話は逸れますが、中卒の田中首相はそれほど尊大な官僚連を使いこなしていたのです。そう思う時、田中首相の凄さを実感します。
 それはともかく官僚は政策は自分たちのほうが詳しいと思っているのも事実です。今ですと、テロ等準備罪の法務大臣の答弁の様子を見ていますとよくわかります。誰が見ても大臣よりも官僚のほうが内容をきちんと理解しています。
 このように現在でも「自分たちのほうが偉い」と思っている官僚がいる中で、政治家の気持ちを忖度して行動する官僚がいるのも事実のようです。このような状況を見ていますと、官僚にもいろいろなタイプがいて、森友学園や家計学園の管轄である文部科学省は忖度するタイプが多かったということなのかもしれません。文部科学省は天下り問題でもやり玉に上がっていましたが、対応ぶりを見ていますと総体的に立場が弱い官庁なのかもしれません。
 そうであるにしても、官僚が政治家の気持ちを忖度している様は究極のサラリーマンのようであまり感じのいいものではありませんよね。政治家が口利きを要請してきても、跳ね返すくらいの気概がほしいです。
 じゃ、また。




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