<へこみました>

pressココロ上




 先週は「ショックなこと」と「うれしいこと」がありました。「ショックなこと」とは「女性議員がかなぎり声で秘書を怒鳴り散らしている音声を聞いたこと」ではありません。確かに、裏表のある振る舞いには憤りを覚え、「こんな人は議員になる資格がないよな」と思いましたが、ショックを受けたのは僕の身の回りのことです。
 妻と買い物に行く前に、地域の理事長さんの家に寄る用事がありました。理事長さんの家は買い物に行く道から左に曲がった道を通り抜けて行く必要がありました。その道を通るのは実に久しぶりで以前はよく利用していたのですが、ここ1~2年は利用することがなかった道です。今回の「ショックなこと」はその曲がり角で起こりました。
 その道を左折するときに車をぶつけてしまったのです。擦る程度でしたらよくありますのでショックなど受けないのですが、前のバンパーが大きくへこんでしまったのです。そのへこみ具合を見て、僕の気持ちまでへこんでしまいました。
 どうしてぶつけたかといいますと、「久しぶりに通る道」というところがミソです。その曲がり角はとても急な角度でしかも道幅が狭くなっています。車1台がようやく通れるくらいの道幅しかありません。
 現在僕が乗っている車はモビリオスパイクという小さめなサイズですが、その前はワゴン車のセレナに乗っていました。ですから、今の車よりも大きな車だったことになりますが、以前よく通っていたときはそのセレナで曲がっていました。もちろん少し大回りはしていましたが、運転に少し自信がある僕としましては、その大きめの車で細い道に曲がれることが自慢のひとつでした。
「どうだぁ、ワイは運転がうまいんやで~!」と
いった感じです。
 そのような記憶がありましたので今回も当然曲がれるものと思っていました。しかし、細い道に入ろうとしましたところ、どう考えても前部右側か後部左側面がぶつかりそうでした。3回ほど慎重に切り返しをしましたが、今一つ通れそうもない感じがしました。
 ですが、以前僕はもっと大きな車でこの急な曲がり角を曲がっていたのです。「曲がれるはずがない」という意味のない信念がありました。ですから、「無理があるかなぁ」と思いつつも一気に通り抜けようとしました。
 すると、後輪の左側あたりのエアロパーツがきしむ音がしました。左のバックミラーを見ますと障害物(電柱を支えている棒)に触れていると言いますか少しぶつかっているのがわかりました。しかし、以前僕はもっと大きな車できれいに曲がっていたのです。変な自信がありました。ですから、さらに車を前に進めました。もちろん左のバックミラーでぶつかり具合を確認しながら、それでも少し勢いをつけて前に進めました。
 すると、左後輪のエアロパーツが障害物から離れようとしたときに、今度は前方右側のバンパーあたりから「ゴツン!」という音が聞こえてきました。左後輪のエアロパーツは「ギ、ギ、ギー」という音でしたが、前方右側のバンパーあたりからは「ゴツン!」です。嫌な予感がしましたが、そのまま走り続けました。
 さて、いつものスーパーの駐車場に車を停め、前方右側を見ますと、、、「ショーッック!」。大きくへこんでいたのでした。
 人間というのはちょっとしたことで気持ちに変化が起きるものです。あれを修理するのに「10万円くらいはかかるのかなぁ」などといった悲しい思いが頭の中を巡り、妻との会話もなく、後悔の念が頭をもたげてきました。
「どうして、無理に進んだんだろう…」
「あのとき、戻ればよかった…」
 思い起こせば反省の思いが次々に浮かんできました。そのときに妻が言ったのです。
「そういえば、前はあそこを曲がっていなかったよね」
 この言葉は僕にとって青天の霹靂でした。
「えっ?」
 僕が尋ねますと、妻が続けました。
「あの角の家が建て替えてから、曲がりにくくなったからって違う方から入るようにしたじゃない」
 そうでした。妻に言われて僕も思い出しました。角の家は建て替えをしていたのでした。それを境にして僕は細い道への入り方を変更していたのでした。しかし、もうあとの祭りです。車はへこんでいたのですから。
 もちろん「なんで先に言わないんだよ!」と夫婦げんかになったのは言うまでもありません。
 その日の夜から修理対策を練ることにしました。できるだけ安く直すのが目標です。最初にやったのはネットで調べることです。格安修理を謳っている幾つかの業者がいましたので、その中から写真を送るだけで見積もりを出してくれる業者に問い合わせることにしました。
 見積もりは2社に依頼したのですが、約4万円と約5万円でした。ですが、この金額が安いのか高いのか判断がつきません。そこでテレビなどでCMを流していたチェーン店に行くことにしました。
 そのチェーン店は修理だけのお店もありますが、ガソリンスタンドがチェーン名を掲げているケースもありました。そこでネットで調べて近くのガソリンスタンドが加盟しているチェーン店に行きました。
 結論を言いますと、担当者の方は車のへこみ具合をみて、「ここまでひどいと取り替えたほうが安くすみますよ」と答えてきました。ネットで見積もりをお願いした業者は「取り替える」のではなく、修理をする方法で答えていました。担当者の方がメーカーなどにいろいろ問い合わせた結果、見積額は「部品代(バンパー)が6万円くらい+脱着の工賃」ということでした。しかも、部品は色がついていないので色を付ける必要があるのでさらに金額が増えるとのことでした。つまり、8万円以上はかかる計算になります。
 どう考えてもこのチェーン店に修理を依頼するのは得策ではありません。僕はネットで見積もりをした業者に依頼する気持ちに傾きながら家に向かっていました。妻と修理業者について話しながら運転をしていましたら、急に妻が「あ、あそこに板金の看板を出している会社がある」と言うのです。僕は車を道の左端に停めて、その会社の看板を見ました。そこには「お客様のご要望に合わせて修理をいたします」そして「1日で修理します」と大きな文字で書かれていたのです。
 一応話だけ聞いてみようと思い、その業者に行きますと、60代後半くらいの小柄なおじさんが笑顔で出てきてへこんでいる部分を見ていました。そして、こういうのです。
「普通に修理するだけでいいんなら、3万円でいいですよ」
 結局、そのまま翌日の修理予約をして、本当に1日で修理が完了したのでした。驚きです。もちろん代車は無料で貸してくれましたし、従業員の方の接し方も感じがよかったのですが、さらに良心的と思ったことがありました。
 実はぶつけたのは前方のバンパーだけではなく、後輪の左側のエアロパーツもひび割れていたのです。ですが、僕はエアロのネジを外し接着剤でくっつけていました。僕のような素人が簡単にくっつけただけですので見た目もみっともなく、いかにも「くっつけただけ」というのがわかる程度の修理でした。
 修理を終えて自宅に戻ってその割れた箇所を見てみますと、なんとエアロ用と思える接着剤できれいに整えてありました。無料で直してくれたことになります。
 「うれしかったこと」はこのような良心的な業者に出合えたことです。人間はちょっとしたことで悲しくもなり、うれしくもなる単純な生き物です。でも、自分のストレス発散を立場の弱い人にぶつけるのは人間として失格ですよねぇ。
 じゃ、また。




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